日本は島国であり、火山国で、地震の多い国です。地震や津波や火災等の災害に常にさらされているのです。2011年には東日本大震災を経験し、2014年に「住まいと安全とお金」をテーマに連載しました。以来、年数がたち、「災害は忘れたころにやってくる」のことわざもありますので、再度災害について考えてみたいと思います。

本当に発生した新たなリスク

下記の表は2014年に掲載したものです。想定外のことが起きるのが災害であり、「災害(リスク)は、常に新たな災害が誕生する」点について説明しました。

  • 災害の種類

振り返ってみると、伝染病の項目も一応入れてはありますが、当時はそれほど意識していたわけではありません。しかし2019年以降想定外のコロナ禍を経験し、我々は今「災害(リスク)は、常に新たな災害が誕生する」を、身をもって体験しているところです。当然、今後も新たな災害が発生することは想定しなければならないでしょう。

改めて見てみると災害には実にいろいろなものがあるのが分かります。ほかにもあるかもしれませんし、地域や個人に特有なものもあるでしょう。災害は命と財産に大きく関与します。家族の命と財産を守るために、人生設計は常に災害を意識して対処を考えておくことが大切です。

まずは自分で守る! 制度や防災設備に全面的にゆだねない

社会にはいろいろ災害を防ぐ仕組みや施設はあります。しかし、どのような災害でも、まずは自分で守るのが原則です。

例えば、避難勧告や命令は、仕組みや基準があっても最終的にその時の担当者である個人が判断するはずです。津波や高潮等の際の水門を閉めたり開けたりするのもその時々の担当者です。自分や子どもの安全を一担当者にゆだねる危険を考えてみてください。社会の仕組みは制度や基準があっても最終的に判断し動くのは個人なのです。

災害は常に想定外のものですので、制度や基準を超えた判断がその都度必要なはずですが、家族の命と財産を関係各所の「個人」だけにゆだねてよいはずがありません。

以前のシリーズでも紹介しましたが「釜石の奇跡」(※参照)は、災害に対する主体がどこにあるかを的確に示しています。コロナ禍において、我々は果たしてその災害の性質をしっかり判断し、自分の問題としてとらえきれているでしょうか。

※「釜石の奇跡」とは、子どもたちへの徹底した防災教育により、東日本大震災の際に約3,000人の釜石市の小中学校児童の99.8%の命が助かったというものです。災害に対して地域を知り、準備し、自分自身の判断で行動する主体者(=そのときに考えられる最善を尽くして率先して避難する)であれと、徹底して叩き込まれました。そして災害が起きたときに子どもたちは自分自身の判断で、率先して避難したのです。どうすればよいのか、どこに逃げればよいかも熟知していたのです。

災害とはそもそも想定外だからこそ災害なのです。それでは想定外の災害をどう察知すればよいのでしょうか。コロナ禍でのネットなどで交わされるさまざまな意見などを見るに、どうも日本人は想像力が低下してきていると思わざるを得ません。特に、日常的に既成のサービスや設備に依存している都会人にその傾向が強いようです。

想像力の欠如は単に当面の災害を広げるだけでなく、いつか来るかもしれない災害に対する準備不足を招き、長期的に国力(あらゆる分野の国際競争力)の低下につながります。

災害(リスク)はゼロにはできない

上記の表にある様々なリスクは完全に防ぐことはできません。地震や津波を完全に避けるには、地震のない国、海から遠い地域に移住するしかありません。そこにはまた別のリスクがあるかもしれません。

多くの場合、我々はさまざまなリスクと上手に付き合いながら、リスクを完全にゼロにはできなくても、そのリスクをできるだけ小さなものにする工夫をしながら生活せざるを得ません。現在、我々は身をもってコロナでそのことを実感しています。

以前にも掲載しましたが、ファイナンシャルプランニングでは、リスク対策を5つに分類しています。次回にコロナに対応するリスク対策を作成する予定ではいますが、気になる災害への対策をまずは自ら考えて、準備しておく習慣が不足しているように思われます。

  • リスク対策の分類と地震に対応する事例

住まいと防災

冒頭にある災害の種類の中で、住まいに関するものは少なくありません。自然災害を見て安全な場所に住まいを定めることがなによりも大切です。しかし災害の多い日本において完全な場所は多くはありません。何かしらの問題点を含んでいるのが一般的でしょう。

その地域や敷地の防災面での弱点を把握し、建物の性能や暮らし方等で、リスクをより少なくする方法を考える必要があります。

自然災害について

堤防や砂防ダム等の防災のための人造物はリスクを少なくはできますが万全ではありません。

住む場所を定める時には最低限ハザードマップや過去の災害を検索し、河川の氾濫が想定される地域、海抜の低い地域などの地域には、堅牢な建物にする、基礎を高くする、洪水水位より上にも居室があるなど、工夫が必要です。

千葉県の浦安市にある江戸時代や明治初頭に建てられた商家や漁師の家には、屋根裏に洪水の際の退避場所が作られています。

造成による住まいのリスク

土は一旦掘り起こしたら、元の硬さには戻りません。また盛り土はいつまでも軟弱地盤のままです。

一面の麦畑の中で、一部の麦だけが円状に高く生育することがあるそうで、その部分には昔竪穴式住居があり、掘られた部分の土は周囲よりも柔らかく、麦の生育が促進されるようです。またひな壇造成地の擁壁の中には、中の鉄筋がさびて膨張し、コンクリートが膨らんでいるものも珍しくありません。そのままにしておくといずれ崩壊します。

軟弱地盤に家を建てるリスク、補強のための費用負担、いずれ作り替えなければならない擁壁等の費用負担があるリスクは承知しておく必要があります。

建物自体の性能のリスク

耐震性のない建物、火災に弱い建物、水害で流されやすい建物は当然リスクが高くなります。また部屋にモノがあふれていれば危険ですし、暮らし方によってもリスクが高まります。

最近ではコロナ禍により、在宅生活を楽しくできる、ウィルスを室内に持ち込まない設備、在宅ワークを快適にすることができる住まいにも目が向けられるようになりました。