連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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老後破産しないためにすべきことは何でしょうか。それは、老後を迎えるまでに、老後に必要になるお金の準備をしておくことです。当然といえば当然ですよね。
老後生活の柱は公的年金、でも……
老後の生活費の柱になるのは公的年金です。ですから、現役世代のうちに、公的年金の保険料をきちんと払い、年金を受け取る権利を確保することが大切です。
ただ残念ながら、アラサーが受け取る公的年金の水準は今より下がることが予想されます。それを補うものとして"自分年金"がどうしても必要になります。自分年金は若いうちからコツコツと貯めていくことになるわけですが、いま、預金金利はものすごく低いので、預金でお金を貯めることはできても、お金を増やすのは困難です。預金と並行して、預金以外の金融商品に投資してお金を増やすことも考えなければなりません。
「自分年金づくりのために貯蓄が必要」というと、大抵の人は「そうだよね」と納得するはず。でも「自分年金づくりのために投資が必要」というと、「え?」とか「う~ん」とか思う人も多いに違いありません。「ちゃんと貯蓄しておけばいいんじゃないの?」という人もいるでしょう。
そんなふうに投資に拒絶反応を示す人が多いのは、投資を誤解しているからです。"投資"とは大きく儲けることだと思っていませんか? それは違います。
「投資」と「投機」の違いとは?
世の中には「○○で1億円儲ける」とか「○年で資産を×倍にする」といった情報があふれていますが、そういう「一攫千金」とか「○○で大儲け」的なやり方は"投資"ではなく"投機"といいます。いわゆるギャンブルですね。
投機は、大きく儲けるために大きくリスクをとる手法です。例えば、「この株が儲かる」と思ったら、それにお金を集中してつぎ込みます。その予想が当たれば得られる利益は大きい反面、予想が外れたら損失も大きくなります。いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」なやり方です。
自分年金は老後の生活を支えるためのものですから、一気に資産を増やそう思って大きなリスクをとることなんてできません。
自分年金づくりに必要なのは、"投機"ではなく、"投資"です。では"投資"とは何でしょうか。投資には、預金のように元本が保証されていない金融商品を利用することになります。そういうものには値動きがあって、値上がりすることもあれば値下がりすることもあります。でも、値下がりする可能性があるから、値上がりする可能性もあるわけですよね。
投資とは、こうした値動きをできるだけ抑えながら、少しずつ資産を増やしていくことをいいます。特に、自分年金づくりには20~30年の期間があるので、時間を味方につけてコツコツ投資していくことが有効です。
確かに貯蓄は大切ですが、それに投資をプラスすれば、効率的にお金を増やすことができます。実際の数字で見てみましょう。
30歳から1万円ずつ積み立てたとすると?
例えば、30歳から毎月1万円ずつ積み立てたとすると、60歳のときには360万円になります。今の預金金利は0.01%で、これが30年続くとしたら30年後には361万円。わずか1万円しか増えません。今後、金利が上がって30年間の平均が0.5%だとすると、30年後には389万円になります。0.01%のときよりちょっぴり増えますね。
もし預金以外の金融商品に投資して、平均して1%で運用できたら421万円、2%で496万円、3%で587万円、5%なら835万円にもなります。逆に、積立だけで835万円にしようとしたら、毎月の積立額を2万3,000円にしなければなりません。こんなふうに、少しだけ利回りを上げることによってお金の増え方に大きな差が出てくるのです。
自分年金に投資を取り入れる目的は、超低金利の預金より少し高い利回りを得ることですから、資産を何倍にもする必要はないし、大きな儲けもいりません。一攫千金を狙った"肉食系"の投機ではなく、少ない金額でもコツコツと時間をかける"草食系"の投資が、老後破産を回避するために役に立つのです。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。