連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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「老後破産」というのは生きている間に持っているお金が尽きること。だから、お金が尽きないように管理して、貯めて、使っていけば老後破産は避けられます。とはいうものの、日本ではお金のことを学校であまり教えてくれないし、社会人になっても学ぶ機会がないのが実情。そのため、身近な存在である"親"をお手本にする人もいるかもしれません。
親を手本にすることの危険性とは
親のお金とのつきあい方が、知らず知らずのうちに子供に引き継がれていることはあるでしょう。もちろん、親が計画的にお金使っていて、堅実に貯蓄しているなら大いに見習うべきです。
でも、親と同じお金の使い方をしていると、老後破産につながるケースもないとはいえません。なぜなら、アラサー世代とアラサーの親の世代とでは、経済の環境が全く違うからです。
親世代が子供のころ、日本は高度成長時代でした。経済が右肩上がりに成長し、去年より今年、今年より来年というふうに、日本の世帯はどんどん豊かになっていきました。社会人になってからはバブル経済を経験。買い物や食事などに大いにお金を使った人も多いはず。バブル崩壊後、日本経済は低迷したとはいえ、サラリーマンにはまだまゆとりがあり、たいていの人はマイホームを買い、子供の教育にお金をかけ、何年かごとに車を買い替え、たまには家族で海外旅行にも行ったりできました。
バブル時代が上り坂の頂点だとすると、親世代はその頂点の前後を生きていることになります。
一方、アラサー世代はバブルのころは子供で、その恩恵をほとんど受けていません。その後、日本は低成長時代に入りました。サラリーマンの平均年収は2000年ごろがピークで、それから下がってきています。これから先、日本の人口が減って経済の規模がだんだんに縮小していくとすれば、アラサー世代はずっと下り坂を生きていくことになるわけです。
そんな中、親と同じように、マイホームにも子供の教育にも旅行などのイベントにもお金をかけ、次々に新しいモノを買っていくというライフスタイルでは、もうやっていけません。あれもこれもと欲しいものを全部手に入れようとしても、それは難しいのが現実です。自分や家族にとって本当に必要なものだけにお金を使う、お金をかけるところとかけないところをきちんと分ける、ということが必要になっているのです。
アラサーが親がしていたのと同じように消費を続けていくことは、老後破産につながりかねません。
アラサーの中には既に、消費することに積極的でない人もいるし、地球の環境のことを考えて、新しいモノを買っては捨てていくというのはやめようと考える人もいますよね。そんなふうに、日本人全体が消費に対する価値観を転換させていくこと、そして消費すること以外に心の豊かさを見つけていくことが必要になってきているといえるでしょう。
下り坂とはいっても日本はまだまだ豊かなので、きちんと収入を確保して支出をコントロールしていけば、老後破産は回避できます。"消費"と同じように、アラサー世代が親世代と全く違う考え方をしなければいけないのが"運用"です。これについては次回以降に説明していきます。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。