サーキットやガレージを飛び出し、街の施設やイベントへやって来たマシンに会いに行く、シリーズ「街なかの競技車」。今回は、東京・青山一丁目交差点で出会えたF1マシン「マクラーレン・ホンダMP4-29H/1X1」のお話です。
王者アロンソ、ホンダやトヨタと世界3大レースへ
世界3大レースのひとつ「WEC ル・マン24時間レース」の決勝が、6月16~17日に行われます。今年の注目ポイントは、初優勝が期待されるトヨタと、そのマシン「TS050 ハイブリッド」をドライブするF1チャンピオン、フェルナンド・アロンソの戦いぶりでしょう。
アロンソは2015年から2017年まで、マクラーレン・ホンダでF1を戦いました。加えて、2017年にはやはり世界3大レースに数えられる「インディ500」に、マクラーレン・ホンダ・アンドレッティから参戦。そして、今年の世界耐久選手権(WEC)には、トヨタ ガズーレーシングから出場しています。つまり、日本勢とともに、世界最高峰のレースに挑み続けているのがアロンソなんです!
マクラーレン・ホンダ復活とアロンソ移籍が宣言された日
アロンソと言えば、思い出すのが2015年2月に本田技研工業本社(東京)にて開催された、ホンダ7年ぶりのF1復帰についての記者発表会とファンミーティング。フェラーリから新生マクラーレン・ホンダへと移籍したアロンソが、日本のメディアとファンの前に姿を見せてくれたんです。その日、青山一丁目交差点に面するHondaウェルカムプラザ(本社1階にあるショールーム)前にはホンダの歴代F1マシンが展示され、誰でも自由に見学することができました。
そこには、アロンソの名前が記されたシルバーのマシン「マクラーレン・ホンダMP4-29H/1X1」も並んでいて、人々の関心を集めていました。「MP4-29」とは、マクラーレンが2014年シーズンを戦ったマシン。2014年の大幅なレギュレーション変更により新開発された、メルセデス製の1.6L V6ターボエンジンを搭載していましたが、これをホンダ製に積み替え、テスト走行を行うために改造されたのが「MP4-29H/1X1」でした。“H”はホンダのHというワケです。
「MP4-29H/1X1」は、2014年11月14日にマクラーレンの地元イギリスにてシェイクダウンされ、およそ10日後にアブダビで行われた公式テストで表舞台に登場しました。この時点では2015年シーズンの正ドライバーがまだ決まっておらず、当時開発ドライバーだったストフェル・ヴァンドーンが走行を担当。アロンソが公の場で搭乗することはなかったはずですが、青山へやって来た車両にはアロンソの名と出身国のスペイン国旗があり、マクラーレン・ホンダの復活とアロンソの移籍を強く印象付ける展示となっていました。
新生マクラーレン・ホンダで戦い抜いたアロンソ
さて、アブダビテストでの「MP4-29H/1X1」は、電気系統などのトラブルに見舞われ、2日間でたった5周しか走れませんでした。その後、2015年2月にスペイン・ヘレスで行われた公式テストには新型車「MP4-30」が持ち込まれ、アロンソがドライブしましたが、やはりパワーユニット周辺に問題が発生。続くスペイン・バルセロナテストでは、アロンソがクラッシュする不運にも見舞われ、不安を抱えたままシーズンに突入することに。優勝どころか入賞、完走さえ難しい状況が続きましたが、アロンソは忍耐強く戦い抜きました。
ホンダとマクラーレンが22年ぶりにタッグを組んで生まれたテストマシン「MP4-29H/1X1」と新型車「MP4-30」は、残念ながらかつての黄金時代を彷彿させるようなパフォーマンスを見せることはありませんでした。しかし、F1世界王者という地位にありながら、投げ出すことなく、泥をかぶって挑戦を続けたアロンソの勇姿とともに、そのシルエットは記憶に残っています。
【Hondaウェルカムプラザ青山について】
東京・青山にある本田技研工業本社の1階は、ショールームとして一般に公開されています。ホンダ車の展示のほか、レースのパブリックビューイングなどのイベントも行われ、競技車と会えるチャンスも多め。青山一丁目交差点に面した屋外スペースに、クルマが並べられることも。