前回の記事では、2024年現在のマンション市場と今後の推移予測についてお話しました。新築価格の高騰もあり、近年人気が増しているのが「中古マンション+リノベーション」です。その中でも複数の選択肢がありますので、今回はこの「中古マンション+リノベーション」をテーマにお話します。
高まる中古マンション需要
「新築信仰が強い」と言われる日本。実際にアメリカやイギリスなど、住宅取引全体に占める中古住宅の比率が8割を超える諸外国に比べ、日本の中古住宅取引比率は2018年時点で15%を下回っていました。しかし昨今では、新築価格の高騰やリユースに対する意識の変化もあり、首都圏においては中古マンションの成約戸数が新築分譲マンションの供給戸数を上回っています。
建築から一定の年数が経過した中古マンションでは、設備や内装の劣化があり、リフォーム・リノベーションを必要とするケースが多くなります。 「中古マンション+リノベーション」の中には、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれに特徴がありますので、ご自身やご家族にマッチするものはどれか、ぜひ考えてみてください。
(1)中古マンションを購入し、専門業者へリノベーションを依頼する
「リノベーション」と聞くとこのパターンを想起される方が多いのではないでしょうか。 メリットはプランニングの自由度です。水回りや梁・柱等、構造上の制約は多少受けるものの、注文住宅のように自身の好み・希望を最大限反映することができます。「叶えたい理想があり、既製品では実現が難しい」という方におすすめの選択肢です。
デメリットは他の選択肢に比べ費用がかかること、決めることが多く手間と時間がかかることが挙げられます。掛けられる予算や期間を踏まえ、取捨選択をする必要があります。 また、住宅ローンを利用する場合、リノベーション工事中も支払いが発生するため、現在の住まいと二重で支払う必要があります。加えて、一部の金融機関では住宅ローンにリフォーム費用を組み込めないケースもありますので、借入先の選択も注意が必要です。
設計の自由度が魅力である一方、個性の強い部屋は売却時、ニーズが合わず難航する可能性があります。将来的な住み替えを検討している場合は、その点も考慮することをおすすめします。 築年数が浅い場合や状態が良い場合は、ハウスクリーニングや鍵交換、クロス交換など簡易なリフォームのみ行う選択肢もあります。当社のお客様でも、既存の設備や内装を賢く活用しながら、部分的なリフォームを加えてお住みになられる方も多くいらっしゃいます。
(2)中古マンションを購入し、自身で手を加える
いわゆるDIY (Do It Yourself) で、専門業者に依頼せず自身で作業を行う方法です。 メリットは費用を抑えられること。大規模な施工は難しいかもしれませんが、元々自身でものづくりをすることが好きで、作業が苦にならない方にとっては有力な選択肢になるでしょう。
デメリットは時間が相応にかかること。加えて、十分な知識がない場合、建築基準法やマンション管理規約等に反した施工になってしまうリスクがあります。こうしたルール違反の施工を行ってしまうと、違反自体が問題であることに加え、将来売却できない可能性があります。DIYを検討されている場合も、一度専門家や専門業者に相談し、問題がないか確認することをおすすめします。
(3)リノベーション済みの中古マンションを購入する
専門の事業者によるリノベーションが完了したマンションを購入する、という選択肢です。 メリットは再生専門の事業者(一般的に買取再販企業と呼ばれます)が作った新築並の品質のマンションを新築に比べかなり割安に購入できること、既に工事が完了しており購入後すぐに住めることです。
デメリットはやはり、フルオーダーに比べ自由度が低いこと。ただし、追加施工など一定の相談が可能なケースもあります。リノベーション済マンションを販売する当社でも、お客様からご要望をいただき、クロス交換で壁の色を変える、カップボードを設置するといった追加施工を行ったケースがあります。エコカラットの貼付など、大きな工事をせず内装をアレンジできる商品もあります。
細部まで希望通りにしたい方にとっては物足りないかもしれませんが、プロの事業者にとって「販売しやすい」、つまり多くの方にとって生活しやすい「万人受けする」間取りや内装で企画されていることが多いので、将来の売却を視野に入れている場合は特に有力な選択肢になるかと思います。
「綺麗で暮らしやすい状態にする」ことがリノベの主目的である方や、将来的な買い替え・住み替えを検討しており希望のエリアでコスパ・タイパよく購入したい方におすすめの選択肢です。
最近では(1)と(3)の間の選択肢として、パッケージ型のリノベーションを提案する企業も増えています。ドアや床材を一つ一つ決めていくのではなく、組み合わせが決まったいくつかの選択肢から選ぶスタイルです。 フルオーダーに比べると自由度は下がりますが、提供パッケージの中で自身の希望を叶えられそうな場合には、打ち合わせ時間や費用の節約につながります。
3つの選択肢それぞれにメリット・デメリットがあり、注意点もあります。自身やご家族の志向、かけられる予算や期間、将来の住み替え希望等を踏まえ、最適な選択を検討してみてください。