昨今、コロナ禍を契機としたリモートワークの浸透によって、本社のオフィス機能ごと地方に移転するなど都市一極集中型から自立分散型に移る動きも見られます。そういった背景から“地方で働くこと”に対して関心がある就活生も多いのではないでしょうか。

記録的な物価高を受けて業界を問わず賃上げの動きが広がるなか、20社以上が初任給を引き上げるなど、特に注目を集めつつある業界のひとつが地方銀行です。かねてより地方銀行はUターン・Iターンの就職先として根強い人気がありますが、初任給の上げ幅が大きいところでは前年実績より5万円増をしている銀行もあり、話題には事欠きません。 また、金融業界全体として、キャッシュレス支払いや仮想通貨の台頭、AIによる業務代行や窓口業務の縮小などのフィンテックの普及やDX化といった大きな変革期を迎えていることもあり、魅力的な人材を確保する動きが顕著になっています。

今回は、社員・元社員の「生の声」で企業が探せるクチコミ情報プラットフォーム「OpenWork」上で、社員評価の高い地方銀行をランキング形式で紹介します。また、ランキングデータと実際に投稿されたクチコミから、特に高い評価を得ている地方銀行の特徴を探っていきましょう。

働きがいのある地方銀行ランキング

  • OpenWork「銀行(都市・信託・政府系)、信金業界」の総合評価ランキング

上図はOpenWork内で閲覧できる「銀行(都市・信託・政府系)、信金業界」の総合評価ランキングのなかから地方銀行に限定して抽出した結果です。

一位は琉球銀行、二位は北國銀行、三位は沖縄銀行で、TOP5社のうち九州地方に本社を置く銀行が4社もランクインしました。

地方銀行ランキングTOP10の半分は「社員の相互尊重」が高い傾向に

これらの地方銀行の傾向を探るべくOpenWork上の各指標のスコアを見てみましょう。「社員の相互尊重」の項目は、ランキング上位10社のうち5社が5点満点中3.5を上回り、他の指標よりも高い傾向となりました。

アフターコロナと言われつつありますが、リモートワークの浸透で非対面コミュニケーションが増えた状況において、チームワーク感の醸成や社員同士の円滑なコミュニケーションの機会に課題感を持つ企業経営者・人事担当者は多いのが実情です。今回のランキングで紹介した地方銀行10社のうち、社員の相互尊重スコアが3.5以上の企業もリモートワークを実施していますが、高いスコアが出ていることから、そのロールモデルとなり得る企業であるともいえます。

では、実際にどのようなクチコミが寄せられているのでしょうか。いくつか代表的なクチコミをご紹介します。

働きがいのある地方銀行ランキング1位:琉球銀行

・社内の風通しは良く、上司部下との関係性は良好な部署が多い。地元のリーディングバンクという事で、地元への貢献意識は強い職員が多い。働き方改革にも力を入れており、残業時間の削減、企業内保育所を設ける等、従業員に対する福利厚生も比較的充実。いわゆる、「人柄の良い人」が多い職場。(審査関連、男性)

・金融業界特有の古い慣行はあるが、だんだんと良くなっていると思う。個人表彰よりも営業店全体の表彰(目標達成)がメインゴールなので自然とチームワークが育まれる。(営業、女性)

・Teams(マイクロソフトのアプリケーション、コミュニケーションツール)を活用しており社内のコミュニケーションは非常に開かれている。トップメッセージの配信では社長が日々感じていることや考えていることを知ることができ、社員が同じ方向を向いて働くことに対してとても良い影響を及ぼしていると感じる。(法人営業、女性)

働きがいのある地方銀行ランキング2位:北國銀行

・社員の個々人が描くキャリアプランを重要視する会社。行きたい部署への希望を聞いたり、キャリアプラン形成に対するキャリアコンサルタントによる助言制度があったりと、キャリア開発や人材の成長に対する取り組みも熱心ですね。(営業、男性)

働きがいのある地方銀行ランキング10位:八十二銀行

・人材育成には熱心な会社だと感じています。意欲があり、努力している社員には、希望するポストや研修派遣などのチャンスが与えられるケースが多いと感じています。(マネジメント、男性)

・男女平等はもちろんのこと育児休暇に対しても理解がある雰囲気が全体にあります。2回3回と育児休暇を取得している方も大勢おります。女性だけでなく男性の育児休暇も推奨しています。(営業、女性)

地方銀行はワークライフバランスがとりやすい傾向も

また地方銀行の特徴として、ワークライフバランスがとりやすい点もあるようです。具体的には、メガバンクを含む地方銀行以外の銀行と比較すると、月の平均残業時間が約2分の1ということがデータからわかります。

<残業時間 平均>
地方銀行以外の銀行:24.1h
地方銀行:12.7h

<有給休暇消化率 平均>
地方銀行以外の銀行:59.5%
地方銀行:67.5%

OpenWorkにおいて、学生がよく読むクチコミ項目として「年収・給与」項目に次いで、「ワークライフバランス」や「企業分析(強み・弱み・展望)」があります。このことから、ワークライフバランスが取れる職場にメリットを感じる就活生も多いのではないでしょうか。実際に下記のようなクチコミが寄せられていました。

働きがいのある地方銀行ランキング3位:沖縄銀行

・年に1度5連休を取れるため、土日を含め9日連続で休日をとり、旅行など充実した時間を過ごすことができた。また、毎週水曜日はノー残業デーということで定時に帰れるようになっているところはよかった。(総合職、男性)

働きがいのある地方銀行ランキング5位:鹿児島銀行

・ワークライフバランスは整っていると思う。有給休暇についても1年目で16日付与され、シーズン休暇や、1年に2回9連休になる制度がある。しっかりとプライベートと仕事を分けて頑張れる環境。残業についてもほとんどないため、一昔前の銀行のイメージとは全く違うと思う。(金融、男性)

・完全週休二日制で有給取得も支店によるかもしれないが、比較的取れやすく感じる。女性職員が多く、主婦など幼い子供がいる職員の急な休みにも柔軟に対応してくれる。残業も支店ごとに目標があり、できるだけ取らせないように上司からも声がかかり、定時退行日も毎週あるため、ライフワークバランスは良い。(営業、女性)

働きがいのある地方銀行ランキング10位:八十二銀行

・基本的に残業はなるべくしない方向にあり、定時で退社しても嫌な顔をされることはない、むしろ上司からは早帰りを推奨されている。残業がある際でも遅くて20時には終えている様子。終電で帰るなどは聞いたことがない。そのため自己研鑽や自信の趣味に時間が充分充てることができる。また有給休暇も計画的に取ることが推奨されているため、しっかり計画的にとっていれば100パーセント取ることができる。現在男性社員の育児休暇も推奨されており、上司から取るよう促すことがあるほどである。(営業、男性)

・土日祝日はお休みで、カレンダー通りの休暇になっています。また、それ以外にも15日程休暇取得の義務があり、消化しなければいけません。休みは多かったので、特に不満はありませんでした。また、繁忙日(月末など)以外の毎週水曜日はリフレッシュデーといって、17時には終わります。(営業事務、女性)

おわりに

OpenWorkの社員・元社員によるデータから、地方銀行は地銀以外の銀行と比べて比較的社員の相互尊重に対する評価が高く、ワークライフバランスがとりやすい特徴が読み取れます。

紹介した地方銀行は「社員の相互尊重」に強みのある傾向がうかがえますが、会社や業界によって強みは様々です。また、人気企業だからと言って自分に合う企業とは限りません。 Uターン・Iターンを考えている就活生に限らず、企業選びにおいては、自分にとってどのような雰囲気の企業が合うか・働きやすいか、漠然とではなく具体的な視点をもって企業の特徴を捉えることも大切なポイントです。

OpenWorkでは、「社員の相互尊重」のほか、「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」といった指標があります。これらのスコアが高い企業×気になる業界や都道府県別のランキングも見ることができます。ぜひ、大事にしたい観点や希望する条件をもとに、企業を探してみてくださいね。