各社で外貨決済サービス充実。楽天証券もスタート

アメリカ発の金融危機の影響から、ここ数カ月で大幅な円高が進んでいます。米ドルだけでなくユーロや豪ドルなど他の通貨に対しても円は全面高の様相です。

外債などに投資していて近々償還を迎える人は、この円高で償還金を円に戻すと多額の含み損になってしまう人も少なくないはずです。

そうしたリスクを避け、為替差損を被らないまま引き続き外貨建てで投資が行えるようにするために、償還を迎えても、外貨のまま保有できる「外貨決済」サービスをする証券会社が少しずつ増えている状況です。この夏からマネックス証券やSBI証券が外貨決済サービスを開始していますが、11月29日より楽天証券も外貨決済サービスを開始。また、それにあわせて外貨建てMMFのラインアップも強化しているので今回は詳しいサービス内容について解説します。

楽天証券の外貨決済サービスの取り扱い通貨は合計7通貨。これまでも取り扱っていた米ドルにユーロ、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、カナダドル、南アフリカランド、トルコリラが加わりました。このうち米ドル、ユーロ、豪ドル、NZドル、カナダドルの5通貨は外貨建てMMFで決済が可能です。外貨建てMMFで決済できることのメリットは、償還金や利金を外貨のまま受け取り、さらに保有している間に実績に応じた分配金が受け取れるということです。世界的に金利は低下しているものの、現在でもNZドルで約5.5%、豪ドルでも4%強の実績分配率となっています。

この5通貨はさらに外貨のまま入出金も可能。すでに外貨預金を行っていてその資金をそのまま外債や米国株、米国ETFなどの購入資金に充てたいと思っている人には嬉しいサービスです。ただし、送金の際には手数料がかかるので要注意。少額の送金では手数料が割高になる可能性もあります。

また、出金に際しても出金手数料がかかります。手数料は1件あたり約2,500円(円貨概算額)。以前の米ドル出金手数料が4,000円だったのに比べてかなり安くなりました。しかし、指定の外貨普通預金口座への送金という形で出金することになりますが、受け取る銀行側で手数料がかかるケースもあります。実際に外貨のまま出金する場合には送金先に指定する銀行に受け取り時の手数料を必ず問い合わせましょう。

このように外貨での入出金に関しては、コストが高いこともあり活用度はあまり高くありませんが、いざというときに使えるサービスとして覚えておくといいでしょう。

外貨投資は相場が急変。換金性のよい外貨MMFでの運用も一考

為替相場はこの半年足らずの間に急変しています。高金利の外債などで人気の高いトルコリラは8月からの4カ月の間に3割以上の下落、南アランドは昨年に比べて約4割下落となっています。それ以前に投資したケースでも円高のおかげで高金利が台無しになっているケースも少なくありません。このように為替の急変動で円高のタイミングと償還が重なってしまった場合のリスクヘッジの意味からも外貨のまま決済できるサービスがあるのとないのでは大違いです。また、外貨資金は外貨のまま長期で運用したい人にとっても、円に戻さずに新たな投資ができるという点では大きなメリットです。

■外貨MMFを豊富に取り扱う金融機関例

また外貨建てMMFは決済での利用だけではなく、少額からできる外貨投資商品としても大きな魅力があります。楽天では各通貨とも10通貨単位から投資が可能。米ドルで1,000円程度から投資でき豪ドルなど他通貨の中には数百円から投資できるものもあります。外債や外国株に投資するのは敷居が高いと考えている人でも、手を出しやすいのが外貨MMFです。また、相場の変動があった場合、即場に解約ができる点も逃げ足が速いという点で評価できます。

米ドルやユーロ建てのMMFは多くのネット証券でも取り扱っていますが、今回取り扱い通貨数を増やしたことで楽天証券が一歩リードの感があります。

コストとリスクを避けながら外貨投資をおこないたいと考えているなら、外貨建て商品の充実度はもちろんそれに付随する外貨決済サービスの充実度も証券会社選びのポイントの一つとして考えるといいでしょう。

執筆者紹介 : 堀内玲子氏

主な略歴 : ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。
FPとして、金融・マネー記事などの執筆・監修、セミナー講師、家計相談などを行う。
著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)などがある。