世界遺産モン・サン・ミッシェルへ
パリもいいけど、せっかくならば鉄道に乗ってふらりと旅に行きたいもの。まず選んだのは、世界遺産のモン・サン・ミッシェル。よくフランス旅行のパンフレット表紙を飾っているところね。バスツアーで行く人が多いのだが、せっかくなのでTGVで行こう、と。パリ・モンパルナス駅7時5分発のTGVでブルターニュのレンヌまで。そこからバスで行くことにした。TGVとパスの切符は、日本発前日にピックアップ済み。バリデーションも行ったので、あとは乗るだけ。
と、思いながら、ホテルからモンパルナス駅へのシミュレーションを行う。メトロ(地下鉄)で行くと安いんだけど、6時前に出ないと間に合わない。明るくなるのが8時半すぎなので、安全にちょっと懸念が残る。そこでタクシーで行こうと、前日ホテルのレセプションに6時にタクシーを呼んでもらうよう予約する。
ところが翌朝、ロビーに6時に降りていくとタクシーはいない。どうも連絡不行きで呼んでいないようだ。慌てて改めてタクシーを呼んでもらい、15分後にホテルを出発。早朝のパリはまだまだ真っ暗。セーヌ川を渡り、オステル・リッツ駅のそばを通り、路地を何回も曲がって、大きな建物に着く。「ここだよ」と運転手に言われて、「え!? ここが駅なの? 」と声をあげそうになった。よく見ると、入口からホームが見える。どうやら駐車スペースの入口からホームに入るようだ。裏口から入る気分。
ホーム上には誰もいない。ちょっと怖くなって階段を上ってコンコースに出る。モンパルナス駅は駅構内が広く、モンパルナスの1、2、3という3つの駅からなる。私がいるのがモンパルナス2で、モンパルナス1とは通路でつながっているものの、寂しい。朝早いというわけか、コンコースの中ですずめがぴょんぴょん歩いている。
私の乗る車両はどこなんだ?
TGVの発車ホームがわかるのは出発の20分前。案内板に表示されるのを待ってすぐにエスカレータを下ってホームに降りる。でも、TGVの車両って意外に長くて、自分の車両がわからない。とりあえず、写真を収めようと一番前のほうに行く。ホームで駅員がいたので、1等の切符を見せてどこかと聞くと、もっと前だという。訳がわかんない。
発車時刻が間近なので、とりあえず1等車に乗る。発車してから気がついた。自分の席は後ろの方の車両だ。だが、その車両にはたどりつけない。というのは、このTGVは、サンマロ行とブレスト行の2編成が連結されており、編成の間は通り抜けが不可能なのだ。
諦めて、開いている席に座り、バーでワインを手に入れグビグビ飲む。検札が来たが、あれ、さっきホームにいた駅員、間違った車両を教えてくれた男に似ているではないか。もっとも外国人(ただし、ここでは私が外国人)はみんな同じに見えるけど。
無事にレンヌへ9時10分に着いたが、モン・サン・ミッシェル行のバスはどこだ! インフォメーションに尋ねて、なんとかバス停にたどり着く。バスの切符は日本で事前に入手済み。でも、予約は事前にできないので、乗れるかなっとちょっとドキドキする。
バス内は日本人ばっかり
バスに乗ったらびっくりした。どこを向いても日本人。乗客の8割ぐらいは日本人だ。定刻通りの9時半、バスは曇り空の中を出発した。1時間20分の旅。車窓からは石積みの家が見えて、ちょっとした観光気分。1時間ほど経つと、バスの前の窓にモン・サン・ミッシェルが見えてきた。要塞の島。中央にひときわ目立つ修道院の塔。曇り空のせいか、威圧感を感じた。
予定通り10時50分にバスを降り、参道の階段を上っていく。大天使ミカエルのお告げによって建てられた聖堂がその始まりとされる、このモン・サン・ミシェル、様々な中世の建築様式が重なりあって今に至る。一番てっぺんの修道院から下を見ると、砂州の先にこの地があることがわかる。冷たい風にさらされながら、気分はすがすがしい。
お昼すぎ、観光客が増えてきた。だが、個人旅行者にとってバスの便が少ないのがちょっと辛い。レンヌに戻るバスは14時30分発。待ち時間約2時間。バス停では、黄色のセキレイみたいなかわいい鳥がちょこちょこ動いている。
しかし、寒い。ホットワインを飲みながら、ひたすら帰りのバスを待つことになった。さあ、酔いどれ天使。明日はどこに行こうか。大天使ミカエルの地、このモン・サン・ミッシェルでブルブルと震えながら、フランシスコ・ザビエルが大天使ミカエルに守護を祈念した我が"日本"のことを想い、大晦日を1人で過ごす上杉であった。