嚴島神社で有名な広島県の宮島を初めて訪れたのは、2021年のこと。神秘的で活気がある、相反する二つの魅力が共存する独特な雰囲気と、そこで暮らす人々の温かさに心惹かれた私は、それから幾度となく宮島を訪れていました。
宮島は頑張れば1日で回れてしまうほどのコンパクトな街。島内の宿に宿泊して長期滞在する必要性は一見感じられないかもしれませんが、今回島内にある5つの宿でワーケーションをしてみたら、"仕事と観光"に適したスポットとしての新たな魅力を知ることができました。
今回はそんな宮島の宿の魅力をご紹介します。
自分のペースでのんびりと過ごせる「北之町 厳妹屋」
最初にご紹介する宿は、「厳妹屋」。一棟貸しの宿で、暮らすように滞在することができます。
神様の間と呼ばれる"おうえの間"が存在するなど、宮島ならではの伝統的な家屋がこの宿の魅力。古き日の宮島の暮らしを体感することができます。
客室でも仕事をすることができますが、何と、こちらの施設にはワーキングルームも存在します。
照明や電源などの設備もしっかりと整えられていたので、仕事も捗りました。
仕事を終えた後は、のんびりとお風呂タイム。
中庭を眺めながら、ゆったりとお風呂に浸かるという、何とも贅沢な時間。1日の疲れを癒やすことができました。
こちらの施設は、現在は素泊まりのみの対応となっていますが、今後は朝食付となる予定です。
施設の1階にはギャラリーも併設されており、テストマーケティングやチャレンジショップとして活用することもできるのだそう。いつもと異なる場所に身を置きながらも、様々なことに挑戦できるっていいですよね。自分自身の可能性も広がる、素敵な環境だと感じました。
便利な立地で、ドロップイン利用も可能「お宿 月うさぎ」
次にご紹介する宿は、「月うさぎ」。
2014年にオープンして以来、たくさんの方々に愛されている宿です。「家に帰ってきたように、ゆったりと過ごしてほしい」という想いから、施設の至るところに、オーナーの心配りが感じられます。
3つの客室のうち、1つはワーケーションに特化した部屋となっていて、ワーキングチェアとデスクが設置されています。
こちらの部屋とは別に、ドロップインも可能な4畳半のおこもり部屋も存在します。
一人で集中したい時や、気分転換をしたい時などにも最適です。
優しい女性オーナーなので、とにかく居心地が抜群(私自身も、もっとここに滞在したいと思いました!)。連泊割引なども適用されますので、長期滞在にもおすすめです。一人もしくは少人数での利用に、最適な宿だと思いました。
和と洋の融合! アンティークな空間で過ごす「厳島東門前 菊がわ」
その次にご紹介する宿は、「厳島東門前 菊がわ」。
宿を始められたのは1988年で、当初はペンションという形での営業でした。その後、ウェディングがメインのゲストハウスに変化し、リニューアルされたのは2019年11月。現在は旅館として、お客様を迎えています。
客室は全8室で、それぞれ仕様が異なります。人数や旅の目的に合わせて選択することが可能です。
シンプルな中にも、必要なものは全て揃っている。そんな心遣いが感じられるような空間となっていました。
客室でも仕事をすることができますが、こちらの施設にはサロンと呼ばれる共有スペースも存在します。
西洋のインテリアやアンティークを取り入れた和風モダンな空間の先に見えるのは、数寄屋建築によって構成された美しい和風庭園……事前に写真で拝見していたことはあったのですが、その想像を超える洗練された空間に思わずため息。すっかりお気に入りの場所となってしまい、仕事にも集中して取り組むことができました。
この施設では食事の提供も行われているほか(時期によって夕食の提供がない場合もあります)、ワークスペース(サロンまたはダイニング)をチェックイン前後の時間に利用することも可能です。
オーナーの菊川照正さんは、地域の仕掛け人のような立場の方で、滞在中には地域の魅力や取り組みなど、興味深いお話もたくさん伺うことができました。これから新しいことにチャレンジしたいという夢をお持ちの方は、何かしらのヒントがもらえると思います。気になる方は、宿を訪れてみてください。
今回は、宮島内にある3つの宿泊施設についてご紹介しました。1つの島の中に、これだけ魅力の異なる宿が存在していることも宮島の魅力。"おこもり"が推奨されている自粛生活の中でも楽しい日々を過ごすことができると思います。
次回は、少しリッチな旅のご提案。老舗旅館やホテルでの滞在記をご紹介していきます。どうぞ、お楽しみに。
南谷有美(なんや・ゆみ)
カメラマン/ライター
2018年4月に認可外保育園の園長を退いてから、各地を巡る旅人に。リモートで仕事をしながら、好きな場所で好きなことをして生活しています。