免許書き換えの講習で、教官が「パンクをしたときにスペアタイヤに交換できない人が多すぎる。それ以前にタイヤの場所すら知らない人もいる。JAFを呼ぶにしてもせめてスペアタイヤの場所くらいは知っておくこと」と言っていた。"それは私のことだ……"と思ってしまった。バイクは毎日運転しているけど、クルマはペーパードライバー。会社の同僚に話したら「うちのクルマがそろそろローテーションだから挑戦してみたら」という話に。今回はタイヤ交換に挑戦することになってしまいました。

タイヤの摩耗は前後違う

教習所の講義でタイヤ交換は習った気がする。うろ覚えの記憶は「クルマのどこかにスペアタイヤが装備されている」、「ジャッキを使って車体を持ち上げてタイヤを外す」という2点。だけど、スペアタイヤとジャッキの場所もわからない。タイヤを外す道具はなにを使えばいいのかもわからない。などなど、なからないことだらけで不安が募る。

今回は「スペアタイヤの位置を確認して、自分でタイヤ交換できるようにする」というのが目的。タイヤ交換の練習のために、ローテーションを行うわけだけど、ローテーションの意味がわからない。なぜ、タイヤの位置を変えるのだろう? 調べてみると、タイヤは、前後で摩耗の程度は違うらしい。バイクのタイヤも減るのは知っていたけど、タイヤの端を使うのを元から諦めているので、減り方なんて気にしたこともなかったなぁ。

バイクは前後のタイヤサイズが違うことが多いので、ローテーションは行わず、交換は前後同時にするのが当たり前。しかし、クルマの場合は駆動方式のFF、FR、四駆(4WD)によって、摩耗する位置と早さが変わるらしい。均等にタイヤを使って長持ちさせるためにタイヤの位置を変えるローテーションを行うというのだ。

ローテーションはガソリンスタンドやディーラー、カー用品店などでも2000~3000円程度でやってくれる。ローテーションは約5000kmごとで行うのが良いとのことなので、スタットレスタイヤを履き替えるときに一緒に頼む人も多いらしい。ショップなら大型ジャッキで車体をもち上げて一気に交換するが、今回は車載のジャッキとスペアタイヤを使って、ひとつずつ交換していくらしい。

駆動方式とローテーションの方法

スペアタイヤの位置を取扱説明書で確認

今回、タイヤ交換の練習に使ったクルマはプジョー206。まず作業をするためにホイールを洗う。洗車はバイクと同じなので不安はない。ブラシと中性洗剤でゴシゴシ汚れを落としていく。夏の暑い日だったので、水が冷たくて気持ちよい。と、ここまでは大丈夫。まずは取り替えるためのスペアタイヤを探さなくてはいけない。スペアタイヤの位置などは取扱説明書に載っているらしい。助手席のダッシュボードから説明書を引っ張り出してページをめくると、とスペアタイヤの位置やホイールの交換方法が書いてあった。スペアタイヤはトランクの下に固定されているらしい。クルマの下を覗いてみると……あった!! クルマの下なんて猫がいなくちゃ覗かないよ。

車載工具のホイールレンチも探す。取扱説明書の書き方がわかりづらいのかなかなか見つからず、探してばかり。ようやくトランクの内ポケットを見つけホイールレンチを発見。トランクの床シートをめくってスペアタイヤを固定しているボルトを緩め、スペアタイヤを引き出す。スペアタイヤと一緒にジャッキも発見。説明書によるとジャッキの入っているケースはそのままタイヤ止めになるらしく、車体を持ち上げたときにクルマが動かないように固定する。このときギアはパーキングにしておくようにと書いてあった。

タイヤ交換の練習に使わせもらったプジョー206。駆動方式はFF

ブラシと中性洗剤でホイールを洗っていく。足回りはかなり汚れているので作業前には洗った方がいい

取扱説明書でスペアタイヤの位置を確認する。日常メンテナンスも載っている

こんなところに! 地べたにへばり付いてスペアタイヤを探した

プジョー206のスペアタイヤはトランクの下に隠してあった

なかなか見つけられなかったホイールレンチが入っているトランクの収納内ポケット

トランクのシート下にあるスペアタイヤを固定しているボルト

ホコリのたまったスペアタイヤを引き出すと、工具のケースも現れた

ケースを開けてジャッキを発見。こんな小さなもので本当に車体は浮くのだろうか?

ジャッキアップをする時は車輪止めが必要らしい。この工具箱は車止めにも使える

初めてジャッキで車体を持ち上げる

道具がそろったところでジャッキアップ、と思ったら、先にホイールナットを緩めるらしい。クルマを持ち上げるとホイールが空回りするからだ。ではホイールのナットを緩めましょう……、って、ナットないジャン! このプジョー206でナットに見えたのはホイールかバーのデザインだった(笑)。傷が付かないかとビビリながらホイールレンチを使ってホイールカバーを外していく。ホイールカバーはバイクのサイドカバーに似ていると思った。

タイヤを止めていたナットは腕力だけでは緩まず、タイヤレンチに乗って体重をかけた。全体重をかけてもなかなか外れないナットに、締めるときはどうすればいいのだろう……と思ってしまった。ふと気づくと、ホイールを止めているのはナットではなく、ボルトだった。聞くと、国産車はほとんどがナットだけど、欧州車はボルトになっていることが多いそうだ。とりあえずここではナットということにしておきます。全てのナットを軽く緩めて、いよいよジャッキアップだ。

ジャッキを使うことも初めて。ジャッキを置いてハンドルを回そうとしたらうまく回らない?? 後ろから「ジャッキの置き方が違うぞ~」と声が聞こえてくる。ジャッキを立てて正しい位置にするとちゃんとハンドルが回った。ジャッキは、クルマのジャッキアップポイント正しく当てるようにと、説明書にもちゃんと書いてあった。

ハンドルを回してみると少しずつ車体が持ち上がっていく。片手で重たい車体が上がっていくのはちょっと感動する。タイヤが床から少し浮いたら緩めておいたナットを全て外す。車載工具のナットレンチは作業がしづらかったので、十字レンチを貸してもらった。クルクルクルクル回っていく。やはり車載工具より市販されている工具の方が使いやすい。

テコの原理を使って(?)、ホイールカバーを外していく

ホイールレンチの上に乗ってナットを緩める。体重を乗せてもなかなか緩んでくれない

最初に置いた位置。これではハンドルが回りません

正しいジャッキの置き方

ボディのジャッキアップポイントの溝にジャッキが当るようにする

タイヤが少し浮いたら全てのナットを外す

車載工具より市販の工具の方が使いやすい。作業効率のスピードが一気に上がった

車載工具のホイールレンチ(右)と十字レンチ(左)、中央は外したホイールナット

4本のタイヤ交換するのはかなりの重労働

全てのホイールナットを外したら、タイヤをスペアタイヤに交換。タイヤはかなり重いので転がしながら移動。穴の位置を合わせるのが難しく、地べたに座って両足でタイヤを支えながらナットを差し込んでいく。このとき固着を防ぐためということでモリブデングリスを塗った。塗るのは少量でいいらしい。全てのナットを締めたら、ジャッキを下ろして本締め。対角線の順に2、3回に分けて締める。

最後はちゃんと締めないといけないのだけど、私は本締めがどうもうまくいかない。自分ではきつく締め付けたつもりでも、男の人が締めるとナットが半分ぐらい回ってしまう。本来はトルクレンチを使用して規定値で締めるが、今回は使用しなかった。最終的な締め付けは信頼できるできる人に頼んだ方がいい気がした。パンクした場合などのタイヤ交換ならこれで完了だ。

ローテーションは、以上の作業を全部のホイールで順番に繰り返し、全てのタイヤの位置を入れ替える。タイヤを取り外し、取り付けを4回も繰り返すと、かなり疲れる。夏の暑い日だったので汗ビッショリだ。水分を補給しながら作業した。夏の暑い日はお薦めできないと思った。全てのタイヤ交換が終わったら、近所を軽く一周してナットが緩んでいないか確認。大丈夫なようなのでホイールカバーをつけて作業は終了した。

「パンクしても自分でタイヤ交換できるようにする」ということで挑戦したタイヤ交換だけど、作業した後でこっそり思ったのは、「パンクしたらJAFを呼ぼう」だった。でも携帯電話が通じないような場所だったら仕方がないので、タイヤひとつぐらいなら自分で交換できるかもしれない。ローテーションはもちろん業者に頼みます。

それにしても、パンクなど万が一のために取扱説明書、スペアタイヤ、ジャッキ、それと非常停止を知らせる停止表示器材は、どこにあるかは確認する必要はあると感じた。メンテナンスができないからこそ最低限の知識は必要だと思う。私と同じように、自分のクルマのスペアタイヤの位置を知らない人は一度確認してください。

タイヤを外した状態。ここまで自力でやったことにちょっと感動!

外れているタイヤはかなり重い。転がして移動させる

ナットの固着を防ぐためモリブデングリスを塗る。塗りすぎに注意

すべてタイヤを交換して、ナットが緩んでないか確認したらホイールカバーを付けて完了

猫が作業を不安そうに見つめていた

レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)