先週金曜に発表された米雇用統計で、非農業部門雇用者数27.1万人と予想の18.5万人を大きく上回り、まさにサプライズな結果となりました。
これにより、これまで延々と続いた利上げ論争にも一服感がでたものと思われます。
しかし、為替の方では、これをきっかけに、再度ドル高方向を狙っての動きが既に金曜発表前からフライング気味に出て、ドル買いが強まっていました。
そして、ダメ押しの結果に、ドル/円はあの118円~122円のレンジ上限である、122円を大きく上回り122.80近辺まで上昇しました。
ここでいったん上昇も一服したかに見えましたが、このレベルは高いと見た一部マーケット参加者が戻り売りをし始めたため、再びマーケットのポジションがショートになりました。
しかし、いったんほぼスクエアとなったマーケットが、再びショートになったため、下がらず、むしろ売った側も下がらないことに危機感を持ち、買い戻したため、123円を超えてさらに123.27まで上昇しました。
このことで注意しておかなければならいことは、急騰した相場と、ショート筋がほぼスクエアになっていますので、そこで売っても下がりません。
逆に、いったんスクエア(ノーポジション)になった相場が、再びショートになれば、一段の上昇を見ることになります。
ニューヨークが本格的に仕掛けてくる時間帯に注意
さらに、注意しておかなければならないのは、ニューヨークが本格的に仕掛けてくる時間帯があります。
それは、冬時間で言えば、日本時間午前零時から1時、夏時間であれば、午後11時から翌午前零時になります。
この時間帯にニューヨークはよく順張り方向で仕掛けてきます。
実際、先週の金曜のニューヨークでも、午前零時台に攻められています。
そして、123円台に乗せてきました。
そして、ここでまたニューヨークの特性が出ています。
それは、特に金曜に見受けられますが、一回方向づけられるとニューヨーククローズぎりぎりまで、その方向に向けて、攻め続けるということです。
そして、今日のシドニーもまたその流れを踏襲しています。
ドル/円の上昇のエネルギーの素である貿易赤字に変化
さて、118円~122円のレンジを、先週金曜のニューヨーククローズが123.21になった ことで、上にブレイクしています。
こうなると、どこまで上がるのかというのが、関心の的になると思います。
ここで、まず考えておきたいことは、118円~122円のレンジがブレイクしたと言っても、それは狭義の意味のレンジが上抜けたということであり、まだ、6月5日につけた125.86までには、結構道のりがあります。
しかも、ドル/円の上昇のエネルギーの素である貿易赤字に変化が見られます。
2011年の東日本大震災により、国内すべての原発が停止、代替エネルギーとして液化天然ガス(LNG)の大量輸入をきっかけに、45年間続いた日本の貿易黒字は、貿易赤字に転換しました。
貿易赤字とは、輸出より輸入の方が多くなります。
具体的には、海外から製品、原材料の輸入した代金を海外に支払うために、銀行でドルを買い、そして、その入手したドルを海外へ送金することで支払いを決済します。
つまり、貿易赤字になるということは、輸入が増え、そしてドル買いが増えるということになります。
実際、2012年2月頃から今年の6月頃まで約3年半で50円近くの上昇を見ました。
因みに、昨年の貿易赤字は、12兆7千憶円まで達しました、
ところが、昨年の7月から原油価格が105ドルから急落を始め、今年の夏には、40ドル割れまで下がりました。
これにより、貿易赤字は激減しており、あくまでも試算ですが、今年は3兆4千億円近辺に落ち着きそうです。
ですので、昨年までのような20円とか25円といった強烈なドル高になった需給関係が大きく変化していますので、上げたとしても、125円がよいところではないかと見ています。
むしろ、買い過ぎて反落する可能性があると見ています。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。