相場では、結構、「理由」に先行して相場が動いてしまい、「理由」は後になってわかり、納得がいくことがあります。不思議に思われるかもしれませんが、そうしたことが実際トレーディングでは起きています。
「理由」が後からわかるのはなぜ?
なぜ、「理由が後からついてくるのか」ですが、それは多分、近い将来なにが起きるかもしれないという前提を日頃から、無意識のうちに繰り返し頭に刷り込んでいるためだと思われます。
そのことを、相場的に申し上げますと、「相場のストーリー(筋書き)を繰り返し読んでいるから」ということになり、これが分かってくると、油断がなくなります。つまり、突発的なことにも、事前に予感していて、的確に判断し行動しリスクを回避することができます。
具体的な例ですが、現在、ユーロ/ドルが、今後上昇するかもしれないと読んでいます。
あの問題が多い地域の通貨、ユーロ/ドルがなぜ上がるのかとお思いになるかもしれません。
しかし、2014年5月から2015年2月までの間、売り続けられた通貨ペアが2015年2月から横ばいとなり、既に1年半もレンジ相場になっています。その一方でドル/円な2015年はおおむね横ばい、2016年年初から反落し、2016年6月には99円をつけるまでになりました。
ただし、今年の7月からは横ばいとなり、しかも。2014年に現在と同水準に近いレベルで9日間に及ぶレンジ相場となっており、このことは注意しておく必要があります。
つまり、ドル/円は2014年からの形状が、ヘッドアンドショルダーになる可能性があり、当面横ばいを続けることを示唆していると可能性があると思われます。
今後の動きはどうなる?
このようにユーロ/ドルとドル/円は全く異なる歩みをしていますが、今の段階で、私が思うことは、理由以前に、ユーロ/ドルはまだ方向感がないですが、近い将来上昇するものと思えるのに対して、ドル/円は、既に売られ過ぎて休息を取りたがっていることです。
その理由は、値動きにポテンシャル(潜在性)があるかどうかだと思います。ドル/円のように、年間で既に25円ぐらい下げている通貨ペアと、今年に入ってレンジ相場を続けているユーロ/ドルのような通貨ペアでは、ドル/円に関しては新たに動き出すためのエネルギーを補充する期間が必要なのに対して、今年レンジ相場が続いたことで、動くために必要なエネルギーはすでに補充されています。
つまり、相場を先導する通貨ペアの交代が必要な時期がやってきているものと見ています。こうした、エネルギーの補充、放出の相場とは、「なぜ、売られるのか」「なぜ買われるのか」という理由が、分かりにくいままに相場が動き出してしまうことが多く、「何だ、何だ」と言っているうちに動いてしまいます。
これが、「相場が、理由より先に動く」ということです。
これからのステージは、ドル/円の動きは限られ、ユーロ/ドルの上げが結構大きいものと見ています。
これは後付けの理由ではありますが、ユーロ圏景気に対して悲観的であったことや、あるいは、6月のブレグジットの折はポンドも売られましたが、ユーロも売られており、もともとのユーロのショートに更にショートを上塗りしたような状況と思われます。
したがって、自律的に反転する可能性は高いものと見ています。この自律的反転こそが、「理由が後からついてくる」という相場のことを言います。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。