何事も、義務感でやるのではなく、好きでやっていれば苦になりません。FXもまた、好きになることが大事です。
相場の変化に気づく
ある程度、相場が継続すると、今の相場は永遠に続くのではないかと思ってしまいがちです。
ただ、そういう錯覚を起こしている時の実際のマーケットでは、既に静かに相場の変化が起きていることが、よくあります。
この変化に気づくか、気づかないかで、その後の相場に乗れるか乗れないか、明暗が分かれます。
変化に気づくためには、常に五感を働かせていることが大事です。 つまり、あれっ? と思ったことを、気のせいで済ませず、なぜ、あれっ? と感じたかを追求することです。
日々のルーティーンワークの中で、いつもと何か違う気配を感じることが、実は、自分を守ります。
相場は、多くのマーケット参加者のいろいろな思惑の集合体であり、決して、自分に都合良くは出来ていません。
したがって、こちらから、マーケットは今何に注目しているのか、望んでいる相場展開は何かなど、常日頃から探ることを習慣づけることが必要です。
一番肝心なことは、こうした推理することを楽しむことです。楽しければ、推理することなど決して苦痛にはなりません。
私の鬼軍曹
36年前、私は銀行の銀座支店からロンドン支店に転勤と同時に、ロンドン支店長からディーラーになるように命ぜられました。
確かに、ディーラーは、ある意味、カッコよさもあり憧れていましたので、そう言われて、「やった!」と正直思いました。
しかし、それが地獄の入り口だとは、その時は思ってもみませんでした。
ディーリングルームに、早速連れて行かれ、ディーリングルームのトップと挨拶をした後、担当上司を紹介されました。
その人が、私の鬼軍曹でした。
見るからに、こわもての人でしたが、挨拶早々、「やりながら覚えていけばいいなどと考えていないだろうな」と、人の心を見透かしたような一撃をまず受け、そして、「自分から勉強していくつもりでなければ、うちはオマエはいらん」と、もう一撃が浴びせられ、出だし早々にして、クラッときました。
それからの毎日は、罵声罵倒の連続で、英語は出来ないし、相当心身ともに消耗しました。
そんなある日、なんのことが原因かはもう忘れましたが、鬼軍曹の逆鱗に触れ、「そんなことまで、俺に話させるのか。フフフフ」と、最上級で怒っている時のかすれた笑いを浮かべ、そのあとは全人格を徹底的に否定されるようなお叱りを受け、さすがに、自分が情けなく、ディーリングデスクで悔し涙にくれ、早く日本に帰りたいとさえ、本気で思ったこともありました。
しかし、鬼軍曹の厳しい教育が功を奏し、私は短期間にいろいろなことを身につけていき、そして、ディーリングというものの魅力に取りつかれ、仕事がおもしろくておもしろくて仕方がなくなりました。
後日、ある人から聞いたのですが、「あの人は、ディーリングルームの人手が足らず、少しでも早く戦力になってほしいと君には厳しくしていたけれど、ディーリングルームの外の人達には、君はよくできると褒めていたよ」と聞かされ、胸にグッと熱いものを感じました。
それから、36年、FXが好きで、ずっとこの仕事を続けてきましたが、それもこれも、最初の鬼軍曹の「自分で学べ」という厳しい教育があったからこそだと思っています。
そして、思うことは、もしもあの時、FXに興味を持っていなかったら、たぶん続かなかっただろうと思います。好きだからこそ続けてこれたのだと思っています。
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水上紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら。