基本的に、1月相場とは、投機筋の相場です。

投機筋の相場とは、一般的に言えば、一方向へのフロー(資金の流れ)を作る投資家が不在で、売ったり買ったりの投機筋しかマーケットにいないということです。

投機筋とは、瞬発力はありますが、買っても売っても利食いか損切りのために、結局は反対売買をするため、相場は往ったり来たりで、方向感が出ないものです。

その上、欧米勢にとっては新年度、本邦勢にとって新年にあたりますので、「(気持ちも新たに)さあ、やるぞ!」という機運が高まりやすく、皆が同じ方向に殺到し、その反動で大きくやられやすいのが1月相場です。

そして、今年に入ってからのドル/円相場は、フラッシュクラッシュ1周年にあたる1月3日に、トランプ大統領の命を帯びて、米軍部隊が、ふたりのイラン要人を殺害したことから、中東の地政学的リスクが一気に高まり、リスク回避の円買いに、投機筋が殺到しました。

  • ドル/円 4時間足

しかし、今のドル/円相場には、特殊な存在がいます。それが、今までも折に触れて申し上げていますように、本邦の機関投資家の存在です。

彼らの方針は、今までと変わらず。「(ドルが)下がったら買い、上がったら売り」のままです。

ですから、6日月曜、週初早々で107.76近辺まで売りで突っ込んだ時も、さらに8日水曜に。イランが報復的にイラクの米軍基地をミサイル攻撃して、107.65まで突っ込んだ時も、いずれもしっかり日本の機関投資家は買ってきました。

そのため、投機筋のポジションは大きくショートに傾き、結局買い戻しとなり、108円台に戻しました。

さらに、トランプ大統領が、イランに対する武力行使を否定したことから、10日金曜には109.69近辺まで戻す結果となりましたが、今度は機関投資家が売りで待っていたもようで、上値が重い状態です。

つまり、今のドル/円相場に、1月が本来投機筋の往って来い相場になりやすいところに持ってきて、機関投資家の「下がったら買い、上がったら売り」方針が重なり、大きく一方向に進む相場は、まだ期待できないと言えます。

したがって、ドル/円相場は、動きそうに見えても、結局は、ざっくりと言って、107円~110円レンジに収まるものと見ています。

ただし、より長期的に見ますと、無視できないことがあります。

  • ドル/円 月足

このチャートは、2015年からの月足チャートですが、青色のラインからもお分かりのように、三角保ち合い(もちあい)が収束してきています。

しかも、赤丸で示していますように、直近のロウソク足は、短線(短いロウソク足)が横並びになっています。

これが意味していることは、相場自体が、収束期の最終段階に近づいていて、それほど遠くない将来、上下いずれかにレンジをブレイクする可能性が高いことを示唆しています。

ただし、これだけでは、上下いずれにブレイクするかは定かではありません。

  • ドル/円 月足(2010年来)

しかし、2015年以来のチャートを見る限り、かなりの回数の上値トライがなされているにも関わらず、上値が着実に切り下がってきていること、さらに長期に見れば、変形ながら、ダブルトップを形成途中であることから、下げ余地のほうが高いと、個人的には見ています。

チャート左下が2011年~2012年の膠着期間の後、2015年に向けて約50円の大幅上昇を見ていますが、2017年以来の膠着期もそれに匹敵するようなその後の大相場になる可能性を秘めており、今が膠着しているだけに、むしろ緊張感を持って、次の大変動に備える必要があると思います。

私自身は、それが下落と見ていますが、それに固執せず、フットワークをよくして、その時を待つことが重要だと思います。

  • 水上紀行(みずかみ のりゆき)

    バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら