市場の洗礼とは、市場の要人が、マーケットから挑戦を受けることを言います。中でも、世界の名だたる中欧銀行総裁は、過去市場の洗礼を受けてきました。
つまりは中央銀行総裁になった人間が、中央銀行総裁としてふさわしいか、マーケットが挑み、「お手並み拝見」しようとしてきました。
最も、記憶に残っているのは、1987年に米FRB議長になったグリーンスパン氏で、なんと就任して2カ月目に、市場の洗礼を受けました。それが、ブラックマンデーという株の大暴落でした。
この時、まさに何の前触れもない中で、グリーンスパン議長は、危機管理意識を試されました。
そして、マーケットの期待(?)にそぐわず、同議長はその敏腕ぶりを発揮しました。
グリーンスパン議長の陣頭指揮のもと、FRBは、短期金融市場に膨大な資金を注入しました。
その時、ディーリングルームでその動きを見ていましたが、米長期金利の価格がロケットのように上がっていき(金利急低下)、それにより株の暴落は沈静化しました。
あんなに、株が暴落をすると、債券が急騰するのかを、恥ずかしながら初めて知りました。
この間髪入れぬ対応により、マーケットは、グリーンスパン議長に従順となりました。
しかも、議長は、これからどういう金融政策を取ろうとしているかについては、その度毎にマーケットに事前事前に伝えたことから、マーケットは同議長に全幅の信頼を寄せるようになりました。
また、最近退任したばかりのドラギECB前総裁にも、市場の洗礼はありました。彼は、2011年に就任して、8カ月後には、ユーロ危機という市場の洗礼を受けています。
このとき、「ECBは、ユーロ圏を崩壊から守るためには、何でもやる」という発言したことにより、マーケットが沈静化しました。
そして、今、マーケットが、次の標的と見ているのは、ラガルドECB新総裁と見ています。
彼女は、確かにIMFの専務理事ではありましたが、中央銀行の経験はなく、市場の洗礼を極めて受けやすい体質にあるといえます。
ドラギ氏が10月31日に退任し、ラガルド氏が11月1日に就任しています。日足のチャートで見ますと、就任数日後の11月4日から、ユーロ安が始まっていることは決して偶然ではないものと思われます。
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ユーロ/ドル 日足
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EUR/USD 週足
ユーロ/ドルは、緩やかながら、2018年以来、ジリジリと下げてきています。戻りが弱い、ジリ安となっています。
さらに、超長期で、見てみますと、面白いことがわかります。
以下は、1996年以来の、月足チャートになります。ユーロ/ドルは、2001年9月11日の米同時多発テロ後、ヒステリックになったブッシュ米政権に多くの国が危機感を感じ、翌年、2002年2月から、ドルからユーロへの資金逃避が強まり、この動きは、2008年まで6年間続き、約7000ポイントの上昇となりました、
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ユーロ/ドル 月足
これが、ユーロ高相場でした。
しかし、2008年9月に米リーマンショック、そして、それに続く欧州危機による、ユーロとドルが往ったり来たりする綱引き相場が、2013年頃まで続きました。
そして、2014年以降、欧州と米国とのファンダメンタル格差が鮮明となり、ユーロ安ドル高相場が顕著になっています、
そして、今、2014年以降の下落相場がいったん2017年にリバンドしましたが、再び失速気味となっており、これで重要なサポートラインである、1.0500近辺を割り込むと、0.8500方向に向かうリスクがあります。
その1.0500の重要サポートラインをブレイクするかどうかのタイミングにラガルド氏はECB総裁となり、たぶん相当熾烈な市場の洗礼を受けることになるものと見ています。
マーケットは、勝者には従順であり、是非ともラガルド氏には、勝者であってもらいたいと思います。