ユーロ/ドルが、昨年暮れから、改めて上昇してきています。今回のきっかけは、トランプ米大統領によるイスラエルのエルサレムの首都認定でした。これで中東の緊張は一気に高まり、投資家たちは資金をドルからユーロに逃避させています。
昨年4月にアメリカというよりトランプ大統領と北朝鮮の緊張が高まったときも、ドルからユーロへ資金は逃避し、ユーロ/ドルは1000ポイントの上昇を見ました。
こうした一連の流れを見ていますと、「Déjà-vu(デジャヴュ、既視感、何か前に見たことがある)」を覚えます。
一連の流れの既視感
2001年1月、ジョージ・ブッシュ氏は大統領に就任しました。就任後、中東諸国に圧力を加えたのに対して、ウサマ・ビンラディン率いるテロ組織アルカイダは、ブッシュ大統領就任8カ月後の9月11日に、アメリカの旅客機をハイジャック。ニューヨークのワールドトレードセンター、ワシントンDCのペンタゴン(国防総省)などに突っ込み、特にワールドセンターはツインタワーが崩壊する大惨事となりました。
これによって、ブッシュ政権は完全にヒステリックな状況に陥りました。そのヒステリックぶりは後年明らかなりましたが、ドイツのメルケル首相の携帯電話に盗聴器を仕掛けるなど、世界の要人の多くが同様の被害を受けました。
こうした状況に、他国はアメリカに対して危機感を覚え、資金をドルからユーロに移すことを決定しました。慎重な投資家たちの行動でしたので、検討の末、実際に実施されたのは翌2002年の2月からでした。しかし、いったん始まると、怒涛の勢いで何と6年間で7000ポイントものユーロの上昇となりました。
このとき主役となったのが、中東、ロシア、中国です。中東とロシアは石油代金をドルで受け取っていたため、これをユーロへ移し替え、中国はその膨大な貿易黒字をドルで受け取っているため、それをユーロに換えました。
特に、中東は過去にアメリカによって資産凍結を受けていたため、神経をとがらせていました。これら3者は下がっても上がってもユーロを買ってくるため、External Buyer(エクスターナル・バイヤー、永遠の買い手)とマーケットでは呼ばれていました。
また、面白い事実があります。ジョージ・ブッシュ大統領は2001年に就任し2009年に退任しました。端と端はややユーロ安ですが、任期中ほとんどがユーロ高ドル安だったということです。
トランプ大統領も、今のところ着実にユーロ高になっています。それは言い換えれば、投資家がドルに資金を置くことを嫌い、ユーロへ資金を移しているという事実があるからです。
ここでいう「投資家」とは、政府系ファンドや年金運用のペンションファンド、あるいは中央銀行といった、要はかなりお堅い人たちです。例えば、日本でも4月に新年度を迎えますが、機関投資家が実際に投資方針を決めるのは早くても4月後半です。
ですから、米雇用統計を見て、売った買ったをやるのは投機筋であって、投資家は違う世界の人たちですので、彼らの歩みに合わせることが大事です。
昔、ニューヨークでインベストメントバンク(投資銀行)のファンドマネージャー(運用担当者)と仲良くなりました。
色々な情報を教えてもらいましたが、何しろ投資資金が大西洋を挟んで、どこからどこへどれぐらい動いているというのを手に取るようにわかっていて、驚きました。
これじゃあ、彼らは儲かるはずだと思いました。しかし、現在はコンプライアンス(法令順守)が厳しくなっており、こんな情報はもはや入ってくることはないでしょう。
古き良き時代でした。
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