音楽ストリーミングサービス「Spotify」で配信されている叶姉妹の人生相談番組、「叶姉妹のファビュラスワールド」が人気だそうです。私もちょっと聞いてみましたが、なるほど今の時代に合っているのではないかと思いました。

叶姉妹は一貫して「他人は気にするな」と説き、あえて相談者に対してああしろ、こうしろ言わないというスタンスを取っています。私は理屈っぽいので、対処法を提示しない悩み相談ってどうなんだろうと思わないでもないのですが、傷つきやすい若者が増えていると聞きますし、人生相談の名手としてならした瀬戸内寂聴センセイも「身の上相談は聞いてあげて、一緒に泣いてあげるだけでいい」と言っていましたから、これでいいのでしょう。

叶恭子サマの人生相談の基本スタンス

具体的な回答をあげてみましょう。他人との距離感について教えてほしいと言われれば、恭子サマは「距離感なんてないの。なぜかというと、その方その方のパーソナリティーや環境、取り巻くこともいっぱいあるでしょうから、距離感を取るなんてそんな難しいことできない。『自分と空気』とか「自分と物質」(という考え方)でよいと思うんですよね」と答えています。2020年8月18日の公式ブログでの発言、「すべての人が求めているかのような『恋愛』ですが、本当は誰もしなければならないものではありません。その人にとって、興味がなければ、一生しなくても、まったくかまわないのです」も話題を呼びました。

自意識過剰に陥りつつある社会で、叶姉妹のようにゴージャスな人が「他人の存在や発言を、気にしない」「恋愛をしたくなければ、しなくていい」というような発言が受け入れられることは理解できます。でも、現実的にはどうかなぁと思うのです。たとえば、仕事で距離感のない後輩にぐいぐい来られたらイヤじゃないですか? よっぽど業績をあげているような人ならまた話は別でしょうが、特に私のようなフリーランスがそんな感じだったら、今後の仕事に差し障りがあるかもしれません。

恋愛にしても同じです。私は婚活相談を受けていますが、女性文化人の「恋愛しないでいい」を真に受けてしまったのか、恋愛未経験のまま30代に突入した女性から、「友達がいきなり全員結婚してしまったことをきっかけに、婚活を始めようと思うけれど、どうやって恋愛をしたらいいのかわからない」というお悩みをたくさんいただいています。私は、女性は恋愛や結婚をすべきと思っているわけではありません。しかし、恋愛は友情や職場の人の付き合いと同じように人間関係の一種であり、ある程度経験を重ねることでうまくなる部分もあると思っています。人の縁というのはどこに転がっているかわかりませんから、最初から「自分には必要ない! 関係ない!」と決めつけてしまうのはもったいないと思うのです。

恭子サマの名言「わたくしがどのような時も幸せを感じて生きているのは、わたくしはすべての瞬間のすべてのことに心から感謝して、すべてのことに期待していないから」

  • イラスト:井内愛

叶姉妹と言えば、ゴージャスなファッションやライフスタイルでファンを魅了しています。恭子サマの名言の一つに「わたくしがどのような時も幸せを感じて生きているのは、わたくしはすべての瞬間のすべてのことに心から感謝して、すべてのことに期待していないから」というものがあります。やっぱり生活の心配のない雲上人は心の余裕も違う……と思いっきり斜めに見ていたのですが、ある時の恭子サマの回答を聞いて、いや、これは庶民にも通じる話かもしれないと思ったのでした。

7月12日に配信された「叶姉妹のファビュラスワールド」。この日のお悩みは、30歳の女性会社員が仕事で疲れた時に、誰かと自分を比べて嫉妬してしまったり、褒められても「他の誰かのおかげだった」と素直に受け取れない。どうしたら、他人と比較しないでいられるのかと言うもの。恭子サマは珍しく「そういうモヤモヤがあるのであれば、今回(の私の仕事)は良かった、もしくは良くなかったという(評価)を自分から誰かに聞きに行かないんですか?」と、「上司にレビューをもらえ」という具体的な助言をされたのでした。

恋愛はしなくてもいい、周りの人を空気と思えという恭子サマが、仕事に関する話では「自分の評価は、評価を下す人に聞きに行け」と実用的なアドバイスをしたのはなぜか。それは、恭子サマが仕事や経済力をそれだけ大事なものと考えているからではないでしょうか。自分で自分を食べさせていかせることができれば、恋愛しようとしまいと、他人とどういう距離感で付き合おうと、それは全く「個人の自由」です。会社員の場合で言えば、気にするべきは同僚や周囲ではなく、上司ただ一人です。

恭子サマは「わたくしがどのような時も幸せを感じて生きているのは、わたくしはすべての瞬間のすべてのことに心から感謝して、すべてのことに期待していないから」とおっしゃっていますが、もし自分ではない、他の誰かに経済力やゴージャスな生活を負担してもらっていたのなら、その人の心変わりを恐れたり、反対に「もっとしてほしい」と要求ばかりしてイライラするかもしれません。しかし、己の才覚でやっていくのなら、自分の実力を良くも悪くも思い知らされますから、「ま、こんなもんか」と納得できるのではないでしょうか。自立の先に自由があり、自由を満喫できるからこそ、他者に感謝する余裕が生まれるのは、恭子サマのようなセレブも庶民も変わりはないと思うのです。

叶姉妹と言えば、2019年3月27日のオフィシャルブログで、芸能活動以外にも投資という収入元があることを明かしています。テレビで見る叶姉妹が大物芸能人にも媚びないように見えるのは、投資という“本業”があるからかもしれません。お二人のファビュラスなルックスの下には、超ロジカルな内面が潜んでいるのやもしれぬと思ったりしたのでした。