新型コロナの影響でアメリカのメジャーリーグも開幕が遅れています。エンゼルスの二刀流、大谷翔平選手の活躍が待ち遠しい人も大勢いらっしゃるでしょう。彼の母校、岩手県の花巻東高校はマリナーズの菊池雄星投手の出身校でもあります。同じ高校から現役メジャーリーガーが2人いるだけでも驚きですが、先日、同校出身の小原大樹さんもメジャーに挑戦している、との記事(※1)を目にしました。もはやこれは偶然とは思えません。花巻東には何か必然の理由があるはずです。
そんな風に思って調べてみると、「目標設定シート」なるものに行き着きました。これは同校野球部の佐々木監督の指導の下、選手全員が書いているものです。9×9のマスを使って真ん中に達成したい目標を置き、その周囲にある8マスに目標を達成するための要素を書き込みます(1)。さらにその8個の要素を得るために必要な行動目標をそれぞれ8個ずつ設定し、一つひとつを実現していくのです(2)。
菊池投手の球速は目標の155㎞を超え、メジャーリーガーという夢を実現しました。補欠やベンチ入りできない選手もいるので、花巻東の選手全員が目標を達成している訳ではないかも知れません。でも、このシートが優れていると私が思うのは、目標を設定するだけでなく、それを達成するための具体的な行動にまで落とし込まれているところです。
佐々木監督はこんな風にも言っています。「それは要するに人生の大きなライフプランのようなものです。将来的には何をやりたいのか。そのために何をしなければいけないのか。3年間の目標だったり、人生の目標だったり、(中略)ウチでは選手全員に書かせています」(※3)。そうなんです、花巻東の「目標設定シート」とはライフプランなのです。ライフプランを作ることで行動が促され、行動を起こすことによってライフプランを達成する思いがさらに強くなっていく。そんな好循環が生まれているのだと思います。
逆に言えば、完璧なライフプランは必要ありませんね。そんなにハードルを上げると、いつまで経っても走り出せなくなります。そもそも老後は人生の別ステージではなく、現役時代から地続きの人生の一部ですから、ライフプランは「立ち止まってゆっくり考える」ものではなく、「走りながら考える」ものなのでしょう。花巻東の3人の姿は、そんなことを改めて気付かせてくれるように思います。彼らに負けじと、われわれ現役世代も人生100年の夢や目標に向かって走り続けたいですね。
※1 出所:2020/1/19 日本経済新聞 夕刊
※2 出所:菊池雄星「メジャーをかなえた雄星ノート」(文藝春秋)p.12-13
※3 出所:佐々木亨「道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔」(扶桑社文庫)p.130