日経BPは、このほど『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)を発売した。本書は、優秀なリーダーが持つ力についてひも解き、リーダーシップの質を高める「1人の時間」の重要性や過ごし方のヒントについて解説した一冊である。
■本質を見失わないための戦略思考
問題を心理的な領域から戦略的な領域へシフトすることで、感情に振り回されず、建設的な解決策を模索することができます。
たとえば、「この提案をすると自分の立場が危うくなるかもしれないが、顧客のためには解決すべきだ」と悩むのは、心理的問題として処理しているからです。
しかし、「提案する」ことを前提に、次のように戦略的に思考することで、解決策が見えてきます。
「どのようにすれば、お互いが満足する形で提案できるか?」
「まず、誰を味方につけるべきか?」
「誰に相談すれば突破口が開けるか?」
問題を戦略的に捉えることで、具体的な行動計画を立てやすくなります。「言っても無駄だろう」「どうせやっても無理だ」と考えるのは心理的な問題として捉えているからです。問題を解決するには、一見無理だと思うことを「どう攻略するか」「どのようにすればできるか」と戦略的な領域で考えることが重要です。
心理的問題を戦略的問題に置き換えた例
例① プレゼンテーションへの不安
● 心理的問題としての捉え方
「プレゼンテーションがうまくいかなかったらどうしよう。失敗したら恥ずかしいし、評価が下がるかもしれない」
● 戦略的問題としての捉え方
「プレゼンテーションを成功させるために、どのような準備をすればよいか? 効果的な資料作成やリハーサルの方法は何か?」
例② 部下への提案に対する不安
● 心理的問題としての捉え方
「この提案をすると、部下との関係が悪化し、自分の評価や立場に悪影響を及ぼすかもしれない」
● 戦略的問題としての捉え方
「提案を受け入れてもらうために、どのような根拠やデータを用意すればよいか? どのように提案すれば、部下が受け入れやすくなるか? 提案を行う最適な時期や状況はいつか?」
例③ チームメンバーとの意見の対立
● 心理的問題としての捉え方
「チームメンバーと意見が合わない。対立すると人間関係が悪化するのではないか」
●戦略的問題としての捉え方
「意見の違いを建設的に解決するために、どのようなコミュニケーション方法をとればよいか? 自分の考えをどう伝えれば、相手の意見を尊重しつつ合意に至るか?」
問題を、心理的な側面から戦略的な側面にシフトすることで、具体的な行動計画を立てやすくなり、感情に振り回されずに効果的な解決策を見いだすことができます。
◼︎心の「ザワザワ」を解消する方法
そうはいっても、心理的問題にとらわれて落ち着かないこともあるでしょう。「ザワザワ」と不安や焦りを感じるとき、それは、「やるべきことがあるのに手を付けていない状態」であると考えられます。
「ザワザワ」を放置すると、「うまくいくだろうか?」といった心理的な不安が大きくなります。
「ザワザワ」を解消するためには、「今できることは何か?」を考え、実行に移すことが重要です。多くの場合、私たちは「これくらいでは変わらない」と行動の成果を低く見積もり、行動を先延ばしにしがちです。しかし、小さな一歩でも行動を起こすことです。
負の感情が湧き上がったときには、「何が、こんな気持ちにさせているのか?」を内観し、原因を特定します。その上で、原因を取り除くための具体的な行動計画を考えると、心理的問題を戦略的問題に置き換えることができます。
問題に直面した際には、感情的な反応にとどまらず、戦略的な視点で具体的な行動計画を立てるようにしましょう。
書籍『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)
同書では、本稿で紹介した以外にもチームを活性化させるマインドや、部下のリソースを引き出すリーダーシップについて紹介している。できるリーダーが持つスキルについて知りたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
イラスト: 村林タカノブ