火災や災害などが起きると、建物だけでなく、その中にある「家財」も被害を受けることがあります。そのような時の損害を補償してくれるのが、「家財保険」です。一方、建物や家財の損害を補償してくれる保険として、「火災保険」があります。では、火災保険と家財保険は、何が違うのでしょうか。火災保険と家財保険の違いや、家財保険の必要性について解説します。

  • 火災保険と家財保険の違いとは?

■火災保険と家財保険の違い

火災保険とは、火災をはじめ、落雷や爆発・破裂、風災、雪災、盗難などによる損害を補償してくれる保険のことです。火災保険では、「建物」と「家財(家具や衣類など日常生活を送るのに必要な動産)」が補償の対象となり、補償の対象ごとに契約をします。たとえば、建物のみに保険をかけた場合、家財が被害に遭っても、補償を受けることはできません。

一方、家財保険とは、独立した保険商品ではなく、火災保険の一種です。「家財への補償に特化した火災保険」と考えれば、わかりやすいでしょう。家財保険は、火災や災害等による家財の損害のみならず、自分自身が誤って家財を破損・汚損してしまった時にも、補償が適用される場合があります。

また、火災保険の補償対象と主な加入者の例を挙げると、以下のようになります。

・建物のみ…賃貸物件の所有者
・家財のみ…賃貸物件の賃借人
・建物と家財の両方…戸建て物件の所有者

このうち、家財のみを補償対象とする保険が「家財保険」です。たとえば、賃貸マンションに住んでいる場合、基本的に、賃借人(居住者)は家財のみを補償の対象として火災保険に加入します。建物の火災保険には、賃貸物件の所有者であるオーナー(大家さん)が加入するためです。つまり、賃貸物件に住む場合は、家財保険のみに加入すればいいことになります。

■火災保険と家財保険の補償範囲

家財保険は火災保険の一種ということですが、それでは、補償の範囲はどのようになっているのでしょうか。火災保険において、「建物」と「家財」は、以下のように決められています。

<建物>

・建物本体
・玄関ドア、窓
・畳、備え付けの収納など建具
・建物に直接備え付けた電気、ガス
・建物に直接備え付けた浴槽、流し、ガス台、調理台
・冷暖房設備
・門、塀、垣
・車庫、カーポート、物置
・設置済みのアンテナ

<家財>

・建物内の家具、家電
・衣服
・家庭用の食器、日用品
・自転車、125cc以下の原動機付き自転車
・1点または1組の評価額が30万円を超える貴金属、美術品(契約時に申告が必要)

火災保険は、これらの建物または家財、もしくはその両方の損害を補償してくれる保険であり、家財保険は、家財の損害のみを補償してくれる保険です。建物が火災などで被害を受けた時、家財保険にしか加入していなければ、補償を受けることができません。その反対もまた同じです。火災保険に加入する際は、その保険の補償対象は何かをしっかり確認しておきましょう。

■家財保険は必要?

家財の損害を補償してくれる家財保険には、以下のようなメリットがあります。

・火災などで家財が損壊した時、補償が受けられる
・建物の損害を補償する火災保険と比べて保険料が安い
・建物のオーナーなど第三者への賠償責任が補償される(※1)
・引っ越し時にもそのまま保険を引き継ぐことができる(※1)
・戸建て、分譲マンション、賃貸物件いずれでも加入できる

しかし、「実際にはあまり家財保険の必要性を感じていない」という人もいるかもしれません。特に、賃貸で一人暮らしをしているなら、家具や家電はさほど多くないでしょう。ただし、賃貸物件の場合、家財の保険とセットになっている「借家人賠償責任補償」の方が重要な役割を担っています。

借家人賠償責任補償とは、オーナーへの賠償責任を補償してくれるものです。賃借人は、賃貸借契約終了後、物件を元の状態(原状)に戻して返さなければならないという「原状回復義務」があります。

たとえば、水漏れの事故を起こし自室内に損害を与えてしまうと、賃借人はオーナーに対して賠償責任を負います。事故の程度によっては、多額の損害を被ることもあるでしょう。そうした費用を補償してくれるのが、借家人賠償責任補償です。つまり、賃貸に一人暮らしをしていて家具・家電があまりないとしても、家財保険は重要なのです。

一方、持ち家の場合、「建物の補償だけでいい」と考える人がいますが、家財の補償も同様に大切です。家の中を見回すと、数多くの家具や家電があるでしょう。これらを火災などで失ったとすると、貯金でその損害をカバーするのは大変なことです。賃貸、持ち家、いずれの方も、家財保険の重要性を改めて確認しておきましょう。

ちなみに、家財保険の補償の対象とならないものもあります。

・パソコンやUSBなどのデータ、プログラムなど
・クレジットカード、プリペイドカード、乗車券など(※2)
・通貨、小切手、有価証券、預貯金証書、切手、印紙など(※2)
・業務用の商品・製品、業務用の設備・什器
・動物、植物

このほか、自動車や125cc以上の原動機付き自転車なども、家財保険の補償の対象とはなりません。これらの盗難による被害は、自動車保険やバイク保険の車両保険などで補償が受けられます。

※1一部、例外の商品もある
※2通貨や預貯金証書、乗車券などは、盗難による損害の場合に限り補償の対象となる

■家財の補償も再確認を

火災保険というと、建物の補償ばかりに目が行きがちですが、家財に対する補償も見逃すことはできません。いざという時、補償があると大変心強いでしょう。今年もすでに大雨などによる災害が発生しています。いま一度、家財への備えを見直しましょう。