奈良のお水取りが終われば、近畿地方は春……のはずなんですが、今年の冬はしつこかったですね。でも、桜が咲いてしまえばもうこっちのものです。さすがに冬も、もうぶり返してはこないでしょう。やったね!

ところで、桜といえば、いまではソメイヨシノが"定番"ですね。これは人間が品種改良した、実を結ばない桜です。花を愛でるために作り上げられた桜、ということは、ソメイヨシノが咲いている間、我々人間は必ずそれを見て、愛でる「責任」があるわけです。花見の季節になると、皆さん早くから青いシートを敷いて、「責任」を果たすべくがんばってはりますよね。筆者も一生懸命、お花見にいそしみました。

薬師寺のすぐそばを走る近鉄橿原線の電車

……なんてもっともらしい理屈を並べつつ、3月末のある日、阪神なんば線・近鉄奈良線で奈良方面へ。春の桜を求める旅に出ました。

薬師寺の桜と近鉄の電車、夙川の桜と東海道本線の電車など

満開には少し早い時期だったものの、そこはさすが奈良、国のまほろば。薬師寺境内の桜は八分咲きで、春の装いで迎えてくれました。この日、「修二会」(花会式)と呼ばれる行事が行われていて、質素ながらも味わい深い食事もいただきました。信心も新たに鉄道写真の撮影に取り組むのでありました。

その後、場所を移動して、もっと咲いているところを探します。あちこち動き回った後、線路沿いに桜が少し咲いている場所を発見、列車がやって来るのを待ちます。さすがは近鉄、わりと頻繁に電車が行き来するのでありがたいです。以前、余部鉄橋で山陰本線の列車が来るのを待っていたときとはえらい違いです。ここは大阪市内から約50kmくらいの距離。我々アーバンな都会人(?)には、やはり人里離れた大自然よりも、こういうちょっとだけ離れた「中自然」くらいがフレンドリーでいいのかもしれませんね。

特急をはじめ、近鉄のさまざまな電車が行き交う

その翌日、ちょっとした家族旅行で広島県尾道市へ。ここでは、坂の街のあちこちに白く桜がちらほら咲いていました。そんな中、山陽本線を通過していく貨物列車が、なんともいえない雰囲気を醸し出していたような気がします。

桜咲く尾道市内を走る貨物列車

あいにく鉄道好きでもなんでもない一行の旅行だったので、ガチで撮影に張り付くわけにもいかず、あまりいろいろと撮れなかったのですが。

さて、今年は去年よりも桜の咲くのが遅く、当連載に間に合わせられるのかと、正直やきもきしていました。奈良方面へ行ってきたのは、3月末のまさに咲き始めの頃でしたが、その後、一気に桜が満開に。「いま撮らないのはもったいない! 春の神様に申し訳が立たない。もしかしたら一生春が来ないバチとか当てられるかもしれない」との思いに駆られ、ふと思い立って桜の写真を撮りに出かけました。

行ってきたのは、地元では超有名、知ってる人ならみんな知ってる夙川の桜。なんといっても、JRの駅名がもう「さくら夙川駅」ですからね。全面的に「さくらフィーチャー」しまくりですよね(笑)。

筆者はJRではなく、阪神電車に乗って香櫨園駅で降り、夙川沿いを北へ歩いて桜の景色を眺めました。筆者にとっては近場です。ありがたいことです。

桜に囲まれた夙川を渡るJR東海道本線の電車

関西で桜のある鉄道風景といえば、京都の嵐電も忘れてはいけません。この時期、夜になると沿線の桜がライトアップされ、電車も徐行運転するというサービスも行われます。

今回はあいにく夜に時間が取れず、昼間の時間帯に撮影に行ってきました。3月末頃の情報では、ちらほら咲く程度だと聞いていたのですが、4月になって間もない日に見に行ったところ、ほぼ満開を過ぎた様子でした。その日は風が強く、桜吹雪も乱れ舞っておりました。翌日は雨だったらしいので、早々と散ってしまったかもしれませんね。

桜の中を走る嵐電

今年、関西で咲いた桜は、例年に増してはかないように見えて、なんとなくもう寂しい気分になってしまいました。これから咲く地域の皆さんが少しうらやましいです。桜前線とともに、北上したい今日この頃です……(でも寒いのは嫌)。