「え、まさかの記憶喪失!? しかも死んだはずのあの人が……?」

韓国語で「ありえない」は「マルドアンデ!」ですが、時々「マルドアンデッ!」と叫びたくなる展開の韓国ドラマを見かけますよね。最近は世界を意識した配信ドラマが増え、随分と洗練されてきました。ドラマのジャンルも多様で、社会派をしっかり描ける胆力も素晴らしい。それでも、いやだからこそ、突然の急激な展開に「はっ!?」とさせられてしまうのは、まさに韓ドラのお約束。あるあるあるある、昔はもっとあった。そのDNAが、時々顔を覗かせては驚かせてくれるんでしょうね。

  • イラスト/みつほし

ありえない系のドラマを韓国では「マクチャンドラマ」と呼びます。「非現実的で無理なストーリー展開のドラマ」と定義され、ひとつのジャンルになっているのです。出生の秘密、嫁と姑の争い、悪女、不倫、復讐、記憶喪失、死んだはずの人が生き返る……なんでもあり! 最近ではドロドロの復讐劇とサスペンスが入り混じる『ペントハウス』シリーズが代表的でしょうか。とはいえ、マクチャンを引き継いではいるものの、映像的にも内容的にも洗練されている作品です。

そもそもマクチャンドラマがひとつのジャンルとして確立したのは、2008年の『妻の誘惑』だとされています。あらすじを覗いて見ると「貞淑な妻が夫と親友に裏切られた上に殺害されそうになり、整形した悪女に変身し復讐する」。これこれ。この濃厚さと怒濤さと無理くりな展開と。とにかく刺激的。

で、韓国の人たちはこれをどのように見ているかというと、商店街の一角で、または入院中のおばさまたちが、ワイワイ悪態をつきながらドラマを楽しんでいる姿をドラマの中で見たことがありませんか? あれが正しい視聴法です。誰もが無理すぎな展開にあきれてもいる。でもやめられない刺激がある。

もうひとつの傾向として、正統派マクチャンドラマは100話以上あるのがざらです。基本的に平日毎日放送されているので長いのです。だからこそ、飽きられないように工夫した結果が「マルドアンデ!」。

恋愛ワードを入力してください~Search WWW』では劇中劇としてマクチャンドラマのパロディが描かれています。『還魂』で一気に人気となったイ・ジェウクがわかめビンタされる姿が拝めるのでおすすめですよ。

本物の濃厚マクチャンドラマが観たい人は、日本のBSチャンネルをチェックするとすぐに見つかると思います。100話越えの強者がたんまりと放送されているので、さらなる沼を求める方は覗いてみてください。

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