連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
社会人になり、2年目です。今のところ計画的に貯蓄をしてお金を貯めるということをしていません。しかし、欲しい車を見つけてしまい、今車を買うかどうか悩んでいます。具体的な予定はまったくありませんが、今後結婚をしたり、家を買ったりするなど大きな出費もあるかと思います。大きな出費に向けて、どのような貯蓄に励めばいいのか、アドバイスをお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 社会人になり2年目ということで、お金の知識があまりないことは仕方がないことかと思います。そこで、今後のライフイベントを見据えて、いつどんなイベントがあり、どのようにそのお金を用意するべきか考えてみましょう。

  • 2年以内に車の購入を考えているとのことですが、本当に必要でしょうか? 東京にお住まいであれば公共交通機関も発達していますし、レンタカーも手軽に活用できます。車はお金がかかるもの。200万円で車を購入して終わりではありません。実はその後が大変なのです。

(※詳細は以下をご覧ください)


今後のライフイベント

ライフイベント表とは、自分自身と家族の将来のライフイベントを一覧表形式で時系列にまとめたものです。ライフイベント表を作る目的は、自分自身のライフプランを明確にすることにあります。頭の中で、漠然とした夢や目標を掲げていても、なかなか具体化しません。ライフイベント表は、漠然とした夢や目標を具体させる1つのツールとして活用します。村山様の場合、診断シートにイベントが3つ書かれていましたので、これをもとに下記のライフイベント表を作成してみました。

村山様のライフイベント表

ライフイベント表には、この他にはお子様の誕生、海外旅行や資格取得など、さまざまなイベントを盛り込み、必要資金を記載します。そうすることによって、○年後にいくらお金が必要なのかが明確になり、具体的に方策を立てることができます。

車の購入はよく考えて

2年以内に車の購入を考えているとのことですが、本当に必要でしょうか? 東京にお住まいであれば公共交通機関も発達していますし、レンタカーも手軽に活用できます。車はお金がかかるもの。200万円で車を購入して終わりではありません。実はその後が大変なのです。

まず、自動車税が毎年かかります。そして、ぜひ考えてほしいのが、毎月の車の維持費です。駐車場代にガソリン代、さらに任意で加入する自動車保険。特に自動車保険は、若い人の事故率が高いので保険料も高額になっています。今の家計をみる限り、この維持費の支払いは無理のように思われます。さらに今すぐ車をローンで買うと、ローンの支払いも重くのしかかってきます。

先ほどのライフイベント表を見てみると、今後結婚や住宅購入という高額のお金が必要なイベントが控えています。それなのに車の購入でお金を使ってしまったら「他のイベントが実行できない=好きな人ができても結婚できない」などという状況に陥る可能性が高くなります。もし本当に車が欲しいのなら、結婚して夫婦でよく考えてから結論を出したらいかがでしょうか? 案外今より安くてもっといい車が出ていたりするかもしれません。

家計の見直しの第一歩は、貯蓄額を決める

村山様の支出をみてみますと、貯蓄は

  • 給与 - 支出 = 貯蓄(残り)

という図式になります。これではお金は貯まりません。なぜなら、お金がなくなるまで使うことができるからです。

お金を貯めるためには、

  • 給与 - 貯蓄 = 支出

というように毎月の家計に対する考え方を変えてみましょう。毎月決めた金額を貯蓄することにより、確実に増えていきます。

毎月の貯蓄は、目標があるので給与の20%はほしいところですが、東京で住居費が高いことを鑑みて、20万円×15%=3万円は最低貯蓄に回して下さい。

そこで15,000円を捻出するために家計を見直す必要があります。食費は、外食が多いとのことですが、仕事とのからみもあり、疲れて毎日の自炊は大変かもしれませんが、ここは5万円に収まるように工夫をお願いします。また、レジャー費は、ボーナスからも支出されているので、毎月の分は半額の5千円とします。これで浮いた15,000円と支出の残り15,000円で毎月3万円の貯蓄ができるかと思います。

会社員であれば財形での運用がお勧め

毎月の貯蓄3万円ですが、何で運用するかは悩むところです。会社員ならば、財産形成貯蓄(財形)の利用がお勧めです。勤めている会社に財形制度があれば、給与からの天引きで無理なく貯めることができます。できれば、最初は一般財形で結婚費用を貯めて、その後はマイホーム用に住宅財形という2つのコースを活用する方法もあります。

会社に財形制度がなければ、3万円のうち2万円を銀行の積立で運用し、少しでも利回りをよくするために残りの1万円を株式累積投資や投資信託で運用します。配当金や分配金は、持っている割合分だけもらうことができます。ただし、銘柄選びが難しいし、投資なのでリスクもあります。損を絶対にしたくないのであれば、全てを積立預金にすべきでしょう。

ボーナスは、個人向け国債の10年変動金利で運用してはいかがでしょうか? 銀行はすでに毎月利用していますし、個人向け国債の金利は定期預金より高く、なにより国が元本を保証しています。このように毎月3万円とボーナスで50万円を貯金していけば、金利を別にしても5年後には430万円となります。住宅資金は結婚をしてから、夫婦で貯めてもいいでしょう。結婚は、披露宴を会費制などで行えば5年後どころか3年後も夢ではなくなります。目先の車にとらわれるのではなく、将来を見据えて自分の人生を充実させることを考えるといいでしょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士 菅田芳恵

大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社に勤務。49歳から2年間で7つの資格を取得し独立。様々な資格を活かして多面的に話をすることが得意。資産運用、家計管理、ライフプラン、キャリア形成、年金、心の健康についてアドバイス、執筆、セミナー講師として活躍中。