今の日本株を動かしているのは、外国人

4月10日朝9時7分、日経平均は20,006円をつけた。15年ぶりの2万円回復である。その後、利益確定売りが出て大引けは2万円を割れたが、堅調地合いが続いている。

下がったら買おうと思っていた個人投資家には乗り遅れたと感じる人もいる。大きな押し目なく上がり続ける日本株に、「いったい誰が買っているのか?」とあきれる向きもある。

今の日本株を動かしているのは、外国人だ。外国人投資家は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売る傾向がある。このため、外国人が日本株を買い越した月は日経平均が上昇し、売り越した月は下落という傾向が過去20年以上にわたって続いている。足元、日経平均が2万円をつける上昇を主導したのも外国人である。

外国人と並んで日本株を動かす大きな存在が日本の公的資金「GPIF」や「日銀」

一方、昨年から、外国人と並んで日本株を動かす主体として大きな存在となったのが、日本の公的資金である。約130兆円の運用資産を持つ公的年金GPIFと日本銀行がその中心である。昨年、信託銀行が日本株を2.8兆円買い越しているが、ほとんどが信託勘定を使った公的年金の買いと考えられている。また日本銀行も、年間3兆円のペースでETF(指数連動型上場投資信託)を買っている。

日本株を上昇させているのは外国人投資家と公的資金、と総括できる。ただし、公的資金の買いタイミングは、外国人投資家とはやや異なる。外国人投資家が高値を追って買っていく傾向があるのに対し、公的年金や日本銀行は、日経平均が上昇する時は買いを減らし、下がった時に買いを増やす傾向がある。

外国人の買いで日経平均が上昇する時、公的資金の買いは減少し、外国人が売って日経平均が下がる時に、公的資金の買いが増える傾向がある。3月は、外国人が5,305億円日本株を買い越して日経平均が上昇したので、主に公的資金の動きを表す信託銀行は、1,225億円の売り越しとなっている。

今の日本株を官製相場という人がいる。確かに、下がりそうになるとすかさず公的資金が日本株を買う展開は、官製相場の色彩を帯びている。ただし、最後には外国人投資家が上値を買っている。外国人が自らの投資判断で上値を買っている今は、まだ官製相場とは言えないだろう。

なぜ外国人投資家は今、日本株を積極的に買ってくるのか?

では、なぜ外国人投資家は今、日本株をそんなに積極的に買ってくるのだろうか。それは、NYダウの上値が重くなる中で、日本株の上昇率が高くなっていることが理由である(添付の図を参照)。

日経平均とNYダウの動き比較:2013年1月~2015年4月10日

注:2012年末の値を100として指数化、NYダウは4月9日まで

2013年から2015年にかけて、日経平均の上昇率がNYダウを大幅に上回っている。円安メリットに原油安メリットが加わって、2015年は日本の景気・企業業績が回復に向かうと外国人投資家は、判断している。資源安で景気が軟化するブラジルやロシア株を売って、資源安のメリットを受ける日本株を買う動きが続いていると推定される。

株は、短期は需給、長期はファンダメンタルズ(企業業績)によって動く。果たして外国人や公的資金の買いが企業業績の増加によって正当化されるものか、これから始まる新年度の業績動向が注目される。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。