独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。
第27回は、仙台市で2つの会社の代表取締役をしながら、美容室「HAIR ALICEWORLD」を経営、更にはデザインスクール、ダイエットオンラインサロン、速読インストラクター、フォトグラファー、AIアーティストと、6つの顔を持つミッキー石田さんにお話を伺いました。
髪を切る楽しさを知り、建築家志望から美容師志望へ
――お友達の髪を切りまくっておられたと伺いました。
石田さん:はい、小さい頃からデザインやものづくりが好きで、母親の影響もあり美容師という職業に憧れてはいました。それで中学の頃からはヘアスタイルに関係する雑誌の切り抜きや、資料などをたくさん集めまして。高校に進学した時には全寮制でしたので、同級生の髪を3年間でたくさん切らせてもらって、こんなにも喜ばれる仕事があるんだ!とその仕事の楽しさを知りました。
実は当時、建築家になりたくて勉強していたのですが、高校3年の8月に担任の先生から「今の学力では大学には行けないという」一言があり、すぐに受験を諦めました。そして在学中の3年間、友達の髪を切り続けたことでその楽しさを知っている僕は、迷わず美容専門学校に行く決意をしたのです。それが僕の運命の選択でしたね。
――その楽しさを目指して美容師の道を選ばれたわけですが、大変な思いなどはされなかったのでしょうか。
石田さん:実は美容師と理容師、両方の技術を身につければ先々の強みになると思いまして、2つの免許を取得するためにまず美容室で2年働き、その後もう一度理容専門学校に入り ました。そして横浜の理容室で5年働き、仙台に戻ってきていよいよ美容室を開業!と思いましたが、顧客ゼロ・貯金ゼロ・信頼ゼロの自分には厚すぎる壁が立ちはだかりました。横浜から帰ってきた時に自分のお客様が誰もいないということに気づかなかったんですね。
そして銀行に行ってもお金を貸してもらうことができず、親戚から借金をしてようやく1店舗目を持つことができたんです。犬や猫しか通らないぐらいの人通りの少ない場所でどうやったらお客様は来てくれるのかだけを毎日考えましたよ。暇な時には他の美容室を車で見に行って、空いていると安心していた自分が当時はありましたね。
スタッフの本音と向き合って危機を脱出
――なるほど、独立と同時に大きくエリアも変わると、開業そのものも困難になるのですね。その後は順調に進んだのでしょうか。
石田さん:いえいえ! 開業して5年目の時にはスタッフ5人体制で営業していたのですが、忘れもしない今から17年前の12月31日、スタッフから「ちょっと話があるんです」と言われまして。行ってみるとそこには、笑顔の消えたスタッフ3人がいました。そして「この店でもっと頑張りたいんです、だからもっと私たちのことを見てください」と。僕は経営者としてスタッフのことを全く見ていなかったんですね。当時の自分は「やってあげている」「教えてあげている」と思っていて、スタッフとのすれ違いが起きていることにも気づいてなかったのです。
それで僕はスタッフにこう伝えました。「またみんなと一緒に頑張りたいので、僕の経営者として足りないところ、ダメなところを教えて欲しい」と。その後、みんなからもらった手紙は、僕のダメダメ経営が変わった原点となっています。あの時のスタッフからのメッセージがなかったら今の僕はいません。お店を解散しようかと思うぐらいとても辛い経験でしたが、今となっては宝物になっています。
――スタッフさんも、石田さんも、勇気を出して本音で向き合われたのですね。その後、今にたどり着くまでの思いや、やりがいをお聞かせください。
石田さん:自分が美容師として働かせて頂いている時は、開業する事を目標にしていましたが、経営者になってからは経験値が増えるたびに目標もどんどん変わっていきました。スタッフが増えればスタッフの成長を願い、お客様が増えればどうやったらお客様にもっと喜んでいただけるんだろう、という事を日々考えるようになりました。失敗を恐れるのではなく挑戦した人にしか訪れないこの失敗を、どうバネにして自分を成長させられるのか。嬉しい、楽しい、だけではなく、厳しいお言葉をいただいたりする中で、トライ&エラーの繰り返しでしたね。
僕たち美容師は目の前のお客様の困りごとをどのようにしたら解決できるのかを考え、そしてお客様が笑顔になった瞬間「この仕事をやっててよかった!」とやりがい感じています。
次のステージは「チーム創り」
――常にお客様のことを、そしてスタッフさん、ご自身、お店の成長のことも考えておられるのですね。今後の展望はいかがですか?
石田さん:チーム創りですね。美容の仕事だけでなく6つの仕事をもっと人に任せられるようなビジネスモデルを構築していきます。また全ての仕事が紐付けされるように繋がりを展開していくことで、これから起業を考えてる方への支援もしていきたいと思っています。また8月に 『2度と太らない習慣ダイエット本』の初出版が決定していますので、クラウドファンディングや全国での出版記念講演会を開催していきたいと思っています。
――それは楽しみですね。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
石田さん:起業するよりももっと大切なことは、続けるということです。みなさん開業する時や起業する時の初日のエネルギーを忘れないでください。そして、起業する日の前日の夜の自分の気持ちはどんな気持ちでしたか?どんな思いで起業しようと決めましたか? これから楽しいことだけでなくいろんな壁がやってきます。でもその壁は越えられる人にしかやってこないのです。経営者の先輩方も皆この壁を乗り越えて起業しています。 僕は、「人生を最高に面白がれる人だけが成功をつかむ」と思っています。目の前で起きたことを、「これは良くなるために起きているんだ」と言い聞かせ、一緒に前に進んでいきましょう! 後ろ向きで歩いてる人なんていないんです。たった1歩足を前に出すだけで1ミリでもチャレンジして進んだ自分にマルを付けてください。最高! 最幸! さあ行こう!