独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

連載2回目となる今回は、東京2020オリンピックでサーフィンの競技が行われた千葉県一宮町に在住、茂原市でサーフショップ「LUCK SURF」を経営する和田路子(わだ・ろこ)さんにお話を伺いました。

  • 千葉県茂原市でサーフショップを経営する和田路子さん

アメリカでの出会いがショップ開業の決断に

――ご夫婦で経営されていると聞きましたが、初めからサーフショップ開業を目指されていたのですか? それとも何かきっかけがあったのでしょうか。

和田路子さん(以下、和田さん):いえ、初めからじゃないですね。もともと会社員だった旦那さんが、不況のあおりで不当解雇にあいそうになりまして、結果的には和解したのですが、結局その会社で勤めることに疑問を感じて退職しちゃったんです。その後、再就職してもやりがいが持てずにいて……。

そんな折、2018年12月に、私が一般社団法人日本パラサーフィン協会の理事として、アメリカで行われる世界選手権に帯同したのですが、そのスタッフとして旦那さんにも同行してもらいました。

そのとき、アメリカに住みながら大好きなサーフィンを仕事にして生きている日本人と出会ったんです。それですっかり感化されちゃって、自分も大好きなことを仕事にしようと開業を決意しました。決意してから開業まで3カ月でした。

  • 決意してから3カ月でサーフショップの開業にこぎつけた

――スピーディな決断と行動に驚かされます。ところでパラサーフィンという言葉も気になったのですが、お差し支えなければ少し教えていただけますか?

和田さん:私は、もともと看護師でパラサーフィン協会の理事としても活動をしていて、障がいを持つサーフィン経験者はもちろん、これから始められる方へもサーフィンを楽しんでもらえるようなお手伝いをさせていただいています。

普段のサーフィンスクールとは違って、人的サポートがより必要な場合もあります。そのときは、ショップのメンバーにも手伝ってもらっています。一緒にサーフィンをする楽しさをシェアし合うことはもちろんですが、普段から障がいのあるなしを気にせずに、当たり前にサポートができるようになるための良い経験になっているのではと思います。

  • パラサーフィン協会の理事としても活動している和田さん。誰もがサーフィンを楽しめるための環境づくりにも尽力している

――なるほど、素敵な取り組みをされているのですね! ありがとうございます。ちなみに開業後、ショップやスクールはサーフィンのようにうまく波に乗られたのでしょうか。

和田さん:いえいえ! 完全にノリと勢いでのスタートでしたので、お金の管理が素人でしたね。『経費とは?』というところからスタートして、手探りで会計ソフトと戦っていました。開業資金を決めて計画的にやりくりした方が良かったと思っていますが、私たち夫婦の性格上、必要な金額がわかっていたら開業していなかったかもしれません。それでもなんとかいままでやってこられたので、結果オーライでしょうか……。

いつの間にかお客様のコミュニティが

――結果的には波に乗れちゃったということですね(笑)。とは言え何か工夫やこだわりがあったのでは?

和田さん:はい、グッズ販売以外に、サーフィンスクールも開催していますし、実は店内にスケートボードが楽しめるランページを設置していて、これも人気があります。

  • スケートボードが楽しめるランページも人気

そもそも地元にお店を持ちたいという思いもあって、ショップは海沿いではないのですが、それでも口コミとインスタグラムから来てくださる新規のお客様が絶えないのはありがたいです。

また、夏はBBQ、冬はクリスマスパーティや忘年会など、みんなで集まれるコミュニティがいつの間にか出来上がっていまして、ただただサーフィンが好きなオーナーについてきてくれるショップメンバーさんたちに本当に感謝です。

  • コミュニティに支えられている

コロナ後は国内外のサーフトリップも

――なるほど、お話を聞いているだけでも楽しくなってきますね。お客様を大切にされているからこそのファンコミュニティだと感じます。ところでショップの今後の展望などあればお聞かせいただけますか?

和田さん:そうですね、よりサーフィンライフを楽しんでもらえるような関わりができて、お店に来てくれた人が喜んでいただけたらうれしいなと思っています。コロナ後を見据えたサーフトリップツアーも計画していて、国内外にショップメンバーさんと行きたいと考えています。ショップだけではなく、メンバー制のクラブハウスなどコミュニティを楽しめるような場所も作れたらいいなと思っています

――ありがとうございます、では最後に読者さんへメッセージをお願い致します。

和田さん:好きなことを仕事にすると、好きなことが嫌いになると聞いたことがあります。でも本当に好きなことなら、仕事でも好きなことができるので、私たちにとっては楽しいことの方が多いです。たまに大変なこともありますが、いまは開業していない私たちを想像することができないし、開業前に戻りたいとも思いません。まずは『やってみよう! ダメだったらやめよう!』でやってみて、本当に良かったなと思います。ぜひ、やりたいことに、まずはチャレンジしてみてもらいたいです