iDeCoとは【Individual(type) Defined Contribution】の略で、個人型確定拠出年金のことを指します。自営業や会社員といった働き方を問わず、仕事に就き一定の年数を迎える30代の方にとって月々1万円程度を老後のために積み立てることはそれほど難しくないと思います。

そしてiDeCoは、その老後に向けた資金準備の枠組みという位置付けで、国もその活用を推奨しています。下図のように、会社員や自営業等で上限額の定めに違いがありますが、原則、公的年金制度に加入している人は、その上乗せとして一定額加入することができます。

  • iDeCoの加入資格等 出典:iDeCo公式サイト(写真:マイナビニュース)

    iDeCoの加入資格等 出典:iDeCo公式サイト

iDeCoのいろは

iDeCoで老後準備をすると、一般的に掛金が所得税等を計算する際に全額所得控除になるほか、受取時が退職所得になるといった税制メリットを受けることができる点がよく取り上げられていますが、今回は「iDeCoのいろは」ということで、それよりもさらに基本的なことを3つ確認しておきたいと思います。

1.「確定」しているのは「給付額」ではなく「拠出額」であること

従前の退職金や企業年金制度では「確定給付」という制度もあります。こういった制度では、「給付額が確定」しているため、例えば30年勤続した場合、60歳時に2,000万円もらえるというように将来受け取る金額が確定しているのです。

一方、iDeCoは「確定拠出型年金」であるため、給付ではなく毎月(毎年)拠出する金額が確定しているのです。つまり、将来幾らもらえるのか分かりません。

2.自ら積立方法や運用方法を選ぶ必要がある

拠出額をどのように運用するか、幾ら拠出するか、そしてどこで見直しをするか、全て加入者次第です。安全性を追求し、定期預金などの元本確保型商品で運用することも可能ですし、株式投資信託を中心に選びリスクを取り、積極的にリターンを追求することも可能です。

よって投資の知識があり、投資商品を見極めることができ、景気や相場を予測する力があると有利です。少なくともiDeCoを始める前にリスクとリタ―ンの関係や株式と債券の違いといった投資の基礎知識は確認しておきたいところです。

3.60歳以降、一括または分割で受け取ることができる

最も気を付けなければならないのが60歳というゴールがあることです。60歳までコツコツ積み立てることができ、60歳になると一時金または分割で受け取ることができます。ただ、すぐに必要なければ最大70歳まで置いておくことも可能です。

言い換えれば、60歳までは原則引き出すことができません。これは最大の注意点です。例えば自営業で第1号被保険者の人は月額6.8万円(上図参照)まで加入できますが、無理して拠出していると生活費や教育費、場合によっては事業資金などが不足する事態に陥るかもしれません。その際にiDeCoに幾ら積立額があっても使うことができないため、老後の資金と目先の資金のバランスを意識して拠出額を決めてください。

なお、拠出額は5,000円以上1,000円単位で年に1回見直しをすることができます。よって余裕がある時と、ない時で拠出額を増減させるのも1つの方法です。

iDeCoのよくある疑問

Q.iDeCoをはじめたいけど何をどのようにすれば良いか分かりません

よくある質問の1つです。iDeCo自体の仕組みはおおよそ理解できたけれども、いざ始めようと思うと、どこで何をしていいか分からないという人も。

iDeCoという商品があるのか、制度のことを指すのか? 分かったようで、いまいちよく分からないという人が多いので、社会的に幅広く認知されているものを例に説明します。

iDeCoをレンタカーに置き換えてみる

みなさんは「レンタカー」をご存知ですよね。レンタカーというと「旅先などで車を借りる行為」として誰もが知っている言葉で、また多くの人が利用したことがあると思います。ただ、レンタカーというサービスを提供している会社はたくさんありますよね。空港近くでは、様々なレンタカー会社の看板が出ています。

そして皆さんが旅先で「このレンタカー会社が良い」と選んで利用することになりますが、その後、さらに「どのタイプの車に乗るか?」ということを決めなければなりません。乗車人数や予算は? こういった条件を考慮して最適な1台を選ぶことになります。

一般的なレンタカーを借りる時の流れであるため、皆さんはイメージしやすいと思います。この例えは以下のような関係になります。

iDeCo⇒レンタカー(サービス全体を指す)
金融機関⇒レンタカー会社(サービスの提供先)
投資信託など金融商品⇒車(具体的に利用する商品)

「レンタカーが必要になった。幾つかレンタカー会社を調べると、空港に近い〇〇レンタカーが便利だ。よし、問い合わせをしてみよう。使用料がリーズナブルで燃費も良さそうな普通車の△△を選ぼう」

これをiDeCoに置き換えると

「老後のためにiDeCoを始めたいので、幾つか銀行など金融機関を調べてみよう。最寄りの〇〇銀行が説明も丁寧で分かりやすかった。〇〇銀行でiDeCoを始めて、担当者と相談し、△△ファンドを毎月1万円ずつ積み立てていこう」

こういう運びになります。よって、皆さんがまずやるべきことはiDeCo対応可能な金融機関の中から、コストやサービスなどを比較し、1社を選び、その後に、どのように運用するか、金融機関が取り扱っている商品の中から選ぶことになります。

iDeCoは超長期投資

30代の人にとって60歳という1つの区切りまでまだ30年程度あります。一般的に10年ほどの期間がある場合を「長期投資」といいますので、皆さんにとってのiDeCoは「超長期投資」ということになります。長期になればなるほど、リスクを抑えることができ、一定のリターンを得ることができるというのが投資のセオリーです。

休暇で旅行に行く際、インターネットや旅行パンフレットを使い、少しでも安いレンタカー会社を探し、より条件の良い1台を選ぼうと躍起になった経験はありませんか? ぜひiDeCoにおいても、まずは金融機関選び、そして金融機関を選ぶ際にはどんな投資対象商品を用意しているのか? ということも判断材料になります。

旅行に行くときのように楽しく、皆さんにとっての最適なiDeCo加入先を見つけるところから始めてください。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。