「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第225回のテーマは「傾聴してればいいってもんじゃない」です。

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小学生も年齢が進むと同時に、今までなかったことが起こります。私の周りでも、子どもに「宿題やったの? 」と聞くと「やったよ」と言ったのに、実はやってないみたいなことをよく聞くようになりました。幼児期は素直で、親にをついたりしなかった子たちが徐々に自分の都合のいいように話をし始めます。小学生ってそういう時期なんですね……!

前々から「あれ? それって自分の都合がいいように話してない? 」と思うことはありました。でも、事実とすごく違うわけでもなくそんなに気にしていませんでした。なのでついつい、親の「うちの子はいい子」フィルターもあって「息子は嘘とかつかない」と思いこんでいたのです。

自宅でやっているワークの丸付けはずっと私がやっていました。以前から息子は算数の文章題で「式をかきましょう」という問いに「=○(答え)」を書きませんでした。式以外に「ひっ算」と「答え」を書く問いなのですが、そこには答えが書いてあります。

でも式って、「○+○」だけじゃなく「=○(答え)」までセットで式だよね……? なんで最後まで書かないの? と疑問に思っていました。もちろん解答集にも必ず答えは書いてあるし、息子に「=と答えも書いて」と促していたのですが「いや、学校ではこう書くの」と強めに言われて「え……そうなの? 」とそのままにしてしまいました。なぜなら、そんな変な書き方をする理由が全くわからなかったからです。

私は「子どもの話はなるべく受け入れる」という方針で、丁寧に話を聞くようにしています。目を見て、はっきりと「学校ではこれでいいってことになっている」と言われたら、子どもを疑うのはよくないし、私の知らないルールがあるのかもと思い、そのままにして数カ月。

お父さんに丸付けを頼むと、やっぱり同じところで「式に=と答えがない」という話になりました。「息子に学校はそれでいいって言われた」と話すと「そんなことあるわけないから、ちゃんと確認したの? 」と私が問い詰められ……。学校のテストを全部見直すと、基本的にはテストでは式にも「=と答え」を書いていました。ですが「式の中に答えがなくても、ひっ算と答えが合ってたら○をもらっている」ということが発覚。

つまり「○はもらえた」ということが彼の中では「学校ではそう書くの」という主張になっていたんですね。先生がよかれとしてくれた「おまけ」が、彼の中で「書かなくてもいいんだ! 」というお墨付きになってしまっていたのです。

そこで、改めて息子に「どうして=と答えを書かないの? 」と聞くと「何度も同じ答えを書くのが嫌だ」ということでした。つまり「=と答え」を書くのが正しいのはわかっているけど、何度も同じ答えを書くなんて面倒だし、おかしい。というのが息子の主張だったんですね。

そこまで正直に言われていればよかったのかもしれないけど、「学校ではこう書くの」と押し切られていたことに、かなりショックを受けました。「これでいいの! 」と迷わず息子に言われて「そうなのかな」と思いつつも、子どもの必死さに「そこまで言うならそういうこともあるのかな……」と譲ってしまったところ、あの真剣な訴えがまさか「めんどくさいからやりたくない! 」ということだったなんて!

傾聴して受け入れて、子どもを疑わない。という方針だったけど、結果的にそれで子どもの「これはやりたくない」という気持ちに流されて、正しい解答でなくなってしまっていたのです。かなり凹みました。

息子のこだわりは「めんどくさいから」というよりは、「どうして同じ答えを何度も書く必要があるのか」という疑問で、そういうところに疑問を持つこと自体は私はいいことだと思っています。「そういうものだから」と何も感じないよりは、自分の意見や感覚は大事にするところだと思うからです。なので、そういう気持ちを理解するという意味では傾聴は大事だとは思っています。

でも、本当の気持ちを言わないでごまかして主張を通すのはよくない。騙すつもりがなかったとしても、こちらは騙されたように思うし、こういうことをされたら、これからあなたの言うことが本当なのかどうか、疑ってかからないといけないし、私はとっても悲しいし傷ついた。という話を息子にしました。

いつもはなんでも「まあいいよ」と許してくれるタイプの母親が、ショックで感情的になっていたので、息子も「ヤバい」という気配を察したらしく神妙な面持ちで「これからはしない」と約束して、謝ってくれました。

親子で揉めたけど、こういうごまかすような行動はダメだということが今回ことでわかってもらえたらいいなと思いました。

子どもが純粋で、自分の都合のいい話だけするなんてことはしないだろう……というのも、親の思い上がりだなあと思い、子どもに対してこちらが期待している「子ども像」の設定をちょっと変更しました。

子どもが成長するにつれて、こういう設定の変更をどんどんしていかないといけないんだな~と実感しました。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。