「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第118回のテーマは「ずっとラブラブではありませんが…」です。

これまでのお話はこちら

世の中にはいろんな夫婦がいると思うのですが、みなさん付き合い始めのころと関係は変わりましたか?正直言うとパートナーに対して「昔はもっと私のこと好きだったような気がするんだけどな~」と思っています。

我が家はバツイチ同士です。私は離婚後、挫折感はありましたが、3年半の結婚生活で子どももおらず……そんなに喪失感はなかったと思います。一方パートナーは10年以上の結婚生活で、子どもが2人いました。家族4人だった生活から一人暮らしになった喪失感は大きく、メンタル面で大きく落ち込んでいました。

すでに自分のマンガでも何度か描いているのですが、我々の関係のスタートは「溺れているパートナーの前に、丸太(私)が流れてきた」という感じです。「溺れるものは藁をも掴む」と言いますが、私は丸太だった……みたいな感じです。とある媒体に夫婦でインタビューを受けたときに「結婚の決め手」みたいなことを聞かれて、パートナーが「離婚後、一人暮らしの部屋で目覚めたときに、このままでは死ぬと思ったから」みたいなことを書いており、「正直過ぎる!! 」と思ったものです。

思い出せば、付き合い始めから同居(事実婚で再婚)して出産するまでの間、パートナーの私への依存度はかなり高かったです。私が遊びに行くときに、付いて行けそうなところにはかなりの頻度で付いてきていました。当初は共通の知り合いも多いし、私の知り合いや友だちにたくさん紹介していたのであまり気にしていなかったのですが、友だちに「いつもパートナー連れている人だと思われてるよ」と苦言を呈されてしまいました。それで、いざ私だけで出かけようとすると、「今日は1人で行く」と話をする必要があったことに気が付いた……みたいなこともありました。

そんな関係でしたが、子どもが生まれると私の価値は暴落……。パートナーは息子大好き人間と化しました。それどころか、子どもができたことで安心したのか、一時期は私にキレちらかすことが増えて離婚の危機さえありました。第110回「甘え方にはスパルタ指導」でも書きましたが、私は「怒って自分の要望を言うのはネガティブな甘え」だと思っています。この「ネガティブな甘え」を、子どもができてから“安心して”私にやっていた……と私は感じていました。

しかし我々はお互いの離婚の経験を踏まえて、家も買わず共有財産も持っていません。信頼関係が損なわれたら我慢せず、すぐに別れられるという状況を作っています。「ネガティブな甘えをしている限り、別れます」と離婚も前提の話し合いが行われた結果、彼は自分を省みて、今はだいぶ改善しています。

息子は、物心がついてコミュニケーションが取れるようになってからは、とにかく「お母さん大好き」です。パートナーの関心は私から息子に移っているので、パートナーの嫉妬の対象は私に……。

私から息子へ関心が移り、私の価値は暴落したものの、息子は常に私といたがるので結局パートナーは私と息子と常に一緒にいたがるという状況に。息子にとっては、「お母さんのほうがお父さんより価値がある」状態。しかしパートナーにとっては「妻より息子のほうが価値がある」状態。私はどっちも同じくらい大事だったのですが、結構めんどくさい状況になりました。

パートナーは「お母さんばっかり好かれてる! 」と、なぜか私へ息子の文句を言うようになり……これに関しては「自分が息子と向かいあえ」と突き放し、2人の間になるべく介入しないようにしたら少しはマシになりました。

と羅列すると、結局パートナーが私から「家族」への執着に変化しただけなので、根本的に状況はあまり変わってないのかもしれないですね……。

じゃあ私はそんなパートナーのどこが良かったのか? というと、私は私で「困っている人が好き」みたいなところがあるんです。「おっ、なにかお困りですか? 一緒にちょっと考えてみましょうか」という感じで、気が付いたらどっぷりハマっているという。なので、離婚して喪失感の強かったパートナーとは相性バッチリだったと思います。 と考えると、付き合い始めも我々は別にラブラブだったわけではないような気がしてきました……。

最初のころにパートナーにあった「パートナー(さるころ)への焦燥感と不安感」みたいなものはだいぶ失われています。それで「前はもっと私のこと好きじゃなかったかな~この人」と私は思っています。でも本人も「離婚による消失感と焦燥感は全部さるころが埋めた」と言っているので、それはたぶん良いことなんでしょうね。

一方私がパートナーについて価値の変動があるかというと、実はないのです。私の問題「人に甘えず、抱え込む」というのを、パートナーが一緒に解決してくれているというのが大きいです。私が大好きな古墳にも連れて行ってくれるし。

もちろんケンカしたり、問題が起こったりしたときに暴落することはありますし、「もう別れるしかないか? 」と思ったこともありますが、今のところ信頼を回復させてくれるので「前より好きじゃない」「価値がない」みたいな感じはありません。あと、何を原稿で書かれてもOKなところもすごいですね……!

長く一緒にいれば、関係性は変わると思います。パートナーはいつまでも「離婚の喪失感」は持ってないし、私は「甘えるのが苦手」でもなくなっています。子どもが育って、自分たちは年を取る。

状況や関係が変わっても「この人といてよかった」ってお互い思っていられるようにしたいです。

新刊『骨髄ドナーやりました!』

(少年画報社刊/税別950円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ

著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/税込1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。