一見普通の白シャツが、ハイブランドでは10万円で販売される理由……あなたは説明できますか? この連載では、ハイブランドと呼ばれるアパレルブランドが「ハイブランドたる所以」をわかりやすく解説していると話題の書籍『教養としてのハイブランド フツーの白シャツが10万円もする理由』(とあるショップのてんちょう 著/彩図社 刊)から一部を抜粋して紹介していきます。
今回は同書の中から、現代でも幅広い世代から人気を得ているBALENCIAGAについて解説。斬新なデザインによって、現在幅広い世代から人気を得ているBALENCIAGAですが、実は100年以上の歴史と伝統があるブランドなのです。
バレンシアガ。
現代の服好きであれば誰もが注目する最重要ブランドのひとつであることは、もはや言うまでもないでしょう。
皆さんのなかではバチバチに尖った最先端ブランドという認識が強いかもしれませんが、実はバレンシアガって、かなり歴史のあるブランドなんですよね。創業は1917年、クリストバル・バレンシアガによるフランスのブランドです。
バレンシアガ自身はスペイン人で、一度目の創業もスペインです。しかし1936年に起きたスペイン内戦の最中に破産し、翌年にフランス・パリで店を再開した、という経緯があります。
バレンシアガは「ファッション界のミケランジェロ」や「クチュール界の建築家」などと称されるほど、シンプルかつ構築的な服作りを得意とするデザイナーでした。
ちなみにこの「構築的」という言葉、ファッションの解説でたまに見かける単語ですが、正直よく意味が分かりませんよね。要するに、人間本来の身体のシルエットに反した、変わった形の服ということです。
「あって価値が下がるくらいなら、なくしてしまうほうが良い」「エレガンスとは排除することだ」
という価値観を持つバレンシアガは、間違いなくオートクチュールの黄金期を築いたひとりだと言えます。
戦後、モードの先頭を走っていたのは、この後に登場するクリスチャン・ディオールでした。彼は分かりやすいラグジュアリーな服を作った人ですが、一方のバレンシアガは技術力の高さとそれに伴うバランス感覚が評価された人です。
華やかなディオールと、技術力のバレンシアガ。どちらも素晴らしいデザイナーであることには変わりないのですが、タイプの違うすごさを持っていたというわけです。