ドイツの魅力を知るなら鉄道の旅が一番

こんにちは。今回よりドイツでの鉄道旅行を書かせていただきます諌山です。よろしくお願いします。

さて堅実なイメージのあるドイツは対日感情も良く、旅をしていて不愉快な思いをする事はほとんどありません。しかし、何故かヨーロッパというとフランスやイタリアへの旅行をイメージする人も多いのではないでしょうか? そう言う意味では、ドイツは意外と知られていない国とも言えます。一言でドイツの魅力を表すのは不可能ですが、とにかく治安が良く、親切な人が多い国でもあり、また、ビール、ワイン、スピリッツ類などのお酒をはじめ、ソーゼージやハムなど、非常に食べ物も美味しい国でもあります。

そんなドイツを回る時に、皆さんならどういう手段を選びますか? 本当にはじめての旅行ならパッケージツアーを利用するのも良いでしょう。海外でのクルマの運転に自信があるならレンタカーを借りるのも悪くありません。しかし、もっとも魅力的な旅の仕方は、発達した鉄道を利用することです。ヨーロッパは大陸がつながっていることから、鉄道が発達していますが、中でもドイツの鉄道網は、日本並みに発達しており、大都市は勿論のこと、地方都市や田舎まで、大抵の所は鉄道に乗って行くことができるのです。この連載では、ドイツで快適な鉄道旅行ができるようにアドバイスやプランの提案をしていきたいと思っています。

日本より多い!? ドイツの鉄道の種類

ドイツの鉄道は主に「Die Bahn」というドイツの旧国鉄が網の目のように張り巡らされており、主要な移動はそれに頼ることになります。ドイツも日本と同じように新幹線や特急、急行等が存在しており、それらは全て同じ線路を走っています。

これらの地図は特急列車(左)、急行列車(右)の路線図。これに加え、ローカル線が細かく張り巡らされており、目的地まで列車の旅を楽しむことができる

ICE(Inter City Express)と呼ばれる新幹線は、ドイツの主要都市のみならず、ヨーロッパの他国へも行くことが可能な列車で人気も高く、予約席をリザーブしておかないと座れないことも多々あります。特にドイツ鉄道の指定席は指定席専用の車両があるわけではなく、座席の上に予約された区間が書かれた紙、もしくは電光表示されているところが予約席になります。そのため、その区間以外は自由席として扱われますので、座っていても構いません。これはICEだけではなく、他の列車でも同じです。

次に地方都市やヨーロッパを結ぶEC(Euro City)やIC(Inter City)と呼ばれる特急列車があります。ICEでターミナル駅に向かった後、これらの列車に乗って目的地やその付近まで行くことが出来るのです。この他にも急行列車のIRE(Inter Regio Express)や快速のRE(Regional Express)、普通列車のRB(Regional Bahn)等が存在し、ドイツの隅々まで行くことが可能です。

ドイツの主な列車の種類

略称 名称  種類
ICE (Inter City Express)  インターシティ・エクスプレス 最高速特急列車
EC (Euro City) オイロー・シティ 特急列車(ヨーロッパ都市間)
IC (Inter City)  インター・シティ 特急列車(国内都市間)
IRE (Inter Regio Express)   インターレギオ・エクスプレス 急行列車
RE (Regional Express)  レギオナル・エクスプレス 快速列車
RB (Regional Bahn)  レギオナル・バーン 普通列車

鉄道での旅の魅力は、なんと言っても人々とのふれあいにあります。日本人が旅行カバンを提げて乗ってくるのが珍しいと見えて、大抵の場合、声をかけられます。このとき、ドイツ語がわからなくても英語で話しかけてくれる人もいます。また、特急以上の列車に備わっている運行表を見ながら、「あなた達はここでおりて、この列車に乗るのよ」などと親切に教えてくれます。

長距離を走るICEの場合、ドイツ以外の国の人と一緒になることも珍しくありません。国際色も豊かな旅が出来るのもドイツ鉄道の旅の魅力といえます。なお、乗車券を買う時に、駅名と到着出発時間、番線の書かれた旅程表がもらえますので、それを見ながら移動すれば、確実に目的地に着くことができます。

新幹線のICE(右)とRE(左)が同じホームで待機している図は日本では考えられないこと。このように乗り継ぎがうまく考えられているのも、ドイツ鉄道の便利な点だ

ヨーロッパの街々を結ぶ特急のIC。白をベースとしたきれいな電車だ。ちょっとした都市間の移動ならICEよりも本数があるので便利だ

気になる安全性ですが、元々ドイツ自体が治安の良い国ということもあり、危険なことはほとんどありません。しかし、中には悪い人もいますので、最低限、荷物や貴重品の管理だけは怠らないようにしましょう。

街から街へ - 地下鉄やトラムを使って移動する

ドイツの主要都市のほとんどに「Sバーン」「Uバーン」と呼ばれる地下鉄が走っています。これが日本の地下鉄並みに整備されている都市もあり、ちょっと隣町に出かけるという時やホテルからの移動時に非常に役に立ちます。海外の地下鉄というと、危険というイメージがありますが、ドイツの地下鉄は日本の地下鉄並みに安全で快適です。

都市部で良く見かける看板。「U」はUバーン、SがSバーン、「DB」がドイツ鉄道だ。ターミナル駅から郊外への移動はこれらの地下鉄を利用して移動するのが便利だ

例えば、この連載でも後ほど紹介しますが、フランクフルト近郊には沢山の地方都市があり、これらの中には保養地なども含まれています。このような場所に移動する際に、上記の地下鉄を利用します。

そしてもう一つの市民の足が路面電車の「トラム」です。日本でも広島でトラムが走っていますが、バスと併用して利用すれば、街の中を自由に移動することができます。大抵の街では1日乗車券が用意されており、これを利用すれば、安価に移動することができます。ただし、大都市になればなるほど、トラムやバスの経路が増えますので、最初は混乱するかもしれませんが、ツーリスト・インフォメーションで路線図をもらっておけばむずかしいことはありません。

トラムも重要な移動手段。最近は床が低いタイプが主流になっており、荷物を持っていても乗り降りがしやすい

鉄道の旅の秘訣はベースを決めて移動する

鉄道の旅で、一番気になるのがやはり手荷物。9日くらいの旅行ともなると、大きなスーツケースを持ち歩かなければなりません。しかし、毎回全ての荷物を持って移動していてはさすがに疲れてしまいます。そこで、お勧めしたいのが、ベースを決めて移動する方法です。

例えば前半はブレーメンやハーメルンに行きたいとします。この場合、ほぼ中間点に位置するのがハノーファ。まずはここに宿を取ります。そして、必要な荷物だけもって、不要な荷物はハノーファのホテルに預け、小さなカバンに荷物を移し替え、数日かけて二つの街を見て回ります。その後、もう一度ハノーファに戻り、一泊して次の目的地に移動すれば、全ての荷物を持って回る必要はありません。女性でも一泊用のボストンバッグぐらいなら手荷物で苦労することもないかと思います。このように、ルートを明確にし、回りかたを決めておけば、鉄道の旅も快適なものになります。

さて、次回からは、実際の列車に乗ってドイツの魅力ある街へと行ってみましょう。

ローカル線での駅での一コマ。このようなのどかな風景の中で電車を待つのも楽しい一時。ちなみにドイツ鉄道の時刻は意外と(!?)正確に運行されている

地方都市や小さな街でも色々見所があるのがドイツの魅力。写真はヴェルニゲローデのクリスマス市の模様

プロフィール:諫山研一(イサヤマケンイチ)

カメラマン兼クリエイティブディレクター。広告代理店時代より現在に 至るまで、ライカ社を始めとするドイツの光学機器メーカー、自動車 メーカー等の広告、広報に従事する。ドイツの某有名鉄道模型メーカー の社長に「お前は平均的なドイツ人よりもドイツ国内各地を旅行してい る」といわれたほどのドイツ好き。すでに大都市、中規模都市は全て訪 れており、今は小規模な街や田舎を散策するのが趣味。小学館からドイ ツ製品紹介のMookを出版したこともある。