前回に引き続きご紹介するのは、家庭的な預かりで最上級の保育を目指す「環優舎」(東京都・南麻布)。洗濯やお弁当作りなどもする親代わりのきめ細やかさで、仕事が忙しい保護者からの信頼が厚い。
子どもの口に入る食材は妥協しない
環優舎代表、吉川まりえさんのもう一つのこだわりは、「食」だ。環優舎ではほぼ全員の子が夕食まで済ませていくが、この夕食は毎日専任の調理師がキッチンで手作りしている。利用料金の多くは食材にかけているというほどこだわっており、子どもの口に入るものは米から調味料に至るまですべて厳選。現在は西日本が産地の食材と産地が明確な輸入食材を取り寄せ、飲用はもちろん調理にもすべてハワイから輸入したミネラルウォーターを使用している。
子どもの口に入るものは素材から吟味。保護者にいつでも見せられるように、使う食材も調味料もすべてファイリングしている |
子ども用の食器セット。漆の椀、子どもの手にちょうどよいサイズの箸など細部にもこだわる |
食器も妥協しない。便宜性重視でプラスチックの食器を使ったりはしない。磁器の茶碗、漆塗りの椀、天然木を使った箸はどれも子どもの手に合ったサイズを揃えている。カトラリーも銀製を使い、重さを体感させるなど"本物"を教える。また食事中のマナーが自然に身につくよう、大人も同じテーブルについて一緒に食べる。家庭での風景そのものだ。
子どもにとって居心地のよいコミュニティを
環優舎の子ども達は一人っ子が多いというが、長時間一緒にいる中で子ども同士の摩擦はないのだろうか。吉川さんによると、子どもにとって居心地のよいコミュニティであり続けるために、スタッフを忙しくさせ過ぎないよう非常に気を配っているのだという。保育スタッフは吉川さん以外に2名。さらに専任の調理スタッフと英語を教えてくれる外国人の先生がおり、大人の手が十分にあるので子ども一人一人にゆったりと対応できる。このゆとりがよい影響を与えているのか、異年齢の子が複数いるのに部屋の中はとても穏やかで落ち着いた空気に満たされていた。
18時には調理スタッフも一緒に夕食。作り手も一緒に食べるので自然と食材についての会話がはずむ |
季節の行事も大切にしている。熊本県の契約農家から取り寄せた七草は、それぞれの名前を確認してからおかゆにした |
細かいところにも配慮が行き届いている同施設だが、実際の利用者に環優舎を選んだ決め手を聞いてみた。小学2年生の女の子を通わせている保護者は、「夫はコンサルタントとして顧客先に勤務、私も海外とのやり取りが夜になるため早い時間の退社はできません。そんな中、娘にはできるだけ自宅にいるのと同じような環境で放課後を過ごさせたかった。環優舎は読書をしたり、工作をしたり、ごっこ遊びをしたり、子どもが子どもらしく過ごせる時間を大切にしてくれます。また誕生日、ハロウィン、クリスマスといったイベントにも楽しい時間を作ってくれる。おかげで育児が制約事項になることなく責任ある仕事を引き受けられ、親にとっても本当にありがたいことです」。
子育ての時間というのは案外短い。子どもか、キャリアか、といった2択ではなく、子育て期に自分たちの働き方に合った保育サービスを見つけて上手に利用することで、子どもの育ちも仕事のキャリアもあきらめないという第3の選択肢が生まれればよいと感じた取材だった。