損失のイメージ力

巷では、未だFXは簡単に儲かるというイメージが横行しているようだ。10万円が1億円になるなんて思っている人も少なからずいらっしゃるのではないだろうか。簡単に儲かるということは、裏を返せば、簡単に損することでもある。

FXをスタートする時、ほとんどの人が、「いくら儲けよう」という発想はあっても、「いくらまでなら損をしても構わない」という自分が損するイメージを持っていないようだ。例えば、「1,000万円勝って、負けは数十万円程度に抑えたい」などと考えている人がいるとしたら、そんなことはまずありえないだろう。1,000万円勝つということは「2,000万円損失を出して、3,000万円の利益を出し、その差額が1,000万円だった」というのが相場の世界ではないだろうか。

大きく勝つチャンスがあるということは、それと同時に大きく負ける危険性もある。FXでは、場合によっては数百万円の損切りをしなければならない局面が訪れる。それができなかったら、1,000万円なんていう利益が得られるわけはない。

FXはレバレッジ取引であるため、場合によっては非常に大きな損失を被りやすい。自分の予想が外れて、いっぺんで大きな損失を出せば、即刻退場となる可能性も高い。ゆえに、資金管理の重要性が常に説かれている。利益を生み出すためには、売買テクニックが必要となるが、それよりもまずは資金管理を徹底して、FXを続けられるように、資金を手元に残すこと、つまり元手を減らさないことを心がけたい。

そのためには主にレバレッジをあまり高くしない、ストップ注文をいれる、この最低2点を前提にすることが重要である。少なくともこの2点をちゃんと実行することによって、損失を少なく抑えることができる。

メンタル、資金規模から考慮

資金管理を考える際、大事なのは、自分がどのくらいのリスク(損失)を負えるのか確定することだ。FXをやっていく上で、損失を出すのは避けられない事実だ。だからこそ、なるべく早めに自分が耐えられる損失の範囲を見極める必要がある。

仮に、自分が耐えられる損失を3万円としよう。だが、10万円の証拠金でレバレッジ10倍の100万円で運用して、3円自分の予想と逆方向に行ったら、10万円-3万円=証拠金は7万円、つまり元本に対してすでにもう約3分の1の損失になってしまう。証拠金に対して損失の割合が大きければ、トレードを続けることは難しくなる。だから、メンタル、資金規模の両方の点から考慮しなくてはならない。

究極のリスク管理?

FXの資金管理方法は人それぞれで色々とあると思うが、最終的な資金管理はFXを止めることだ。それによって、間違いなく、それ以上の損失を出すことは防げるのである。世の中にはFXが向いていない人だっている。

元手、つまりFXに投資できる金額は、FXを始めようと考えたときに決めておく。しかも、それは必ず余裕資金に限定する。そしてこの資金が底をついたらスパッとFXを止めてしまう方が賢明だと思う。借金をしてまでFXをやってもうまく行くはずなど絶対といってない。

ここまで行くと、究極のリスク管理だが、その前に、出金でコントロールするという方法もある。利益はサッサと引き出してしまう。私が、FXをスタートしたばかりの頃は、お金は口座に預けっぱなしで、大体出金するという発想がなかった。というよりも、FX開始後に円高の洗礼を受けて、追証が発生し入金しか考えていなかったくらいだったが、同時期に、株投資で、放置している間に上昇している株価が下落に転じて大きな損失を被ったことから「(投資は)放置はダメ!」ということを学んだ。

また、勝っていて、資金が増えていると、気が大きくなって、ポジションサイズを大きくしたり、いくつものポジションを取ってしまったりして、ズサンな取引も結構していた。その結果として、トレードが失敗して損失が嵩むというケースが多くなったことが、利益が出た場合は、きちんと出金するというルールを課すようになったのである。

逆に損失となった場合は、ポジションサイズを小さくしたりしてトレードを慎重に行うようにすれば、資金管理の役割を果たしてくれる。

資金が少ないうちは、利益が出たら、それを利用して次のトレードの資金にしていく人が多いかもしれないが、口座にある時点では、利益は単なる数字にしか過ぎず、出金して銀行口座に入金されてからようやく、「お金だ!」という実感が湧いてくる。それを、銀行口座から引き出して、実際に使用する時に、さらに実感が湧いてきて、FXで儲けられたことに感謝してありがたく使わせてもらう。

他にも、こんな方法はどうだろう。例えば、年初に証拠金を決めた金額にリセットしてみる。前年に儲かっていれば、その差額を引き出し、プラス分を繰り越して、再投資はせずに、マイナスに限り、足りない額を継ぎ足して、新たな気持ちで臨んでもよいかもしれない。もしくは、上半期・下半期で区切る方法もある。

以上をご参考にして、特にこれからFXを始める方は、他の誰でもなく、自分なりの資金管理の仕方を思い描いてルール化し、そしてしっかりと実行すれば生き残り度は高くなるはずだ。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。