ゴールデンウィーク、私は青森へ個人旅行に出掛けたのだが、ETCの土・日・祝日1,000円パワーは全くあなどれないようで、街中で見かける車は関東圏ナンバーが多かった。1,000円札一枚で高速道路乗り放題は、ドライブ好きな方には本当に朗報なのだろう。でも、車がない自分にはメリットがない分だけ実感もないんだよね、などとぼやいていたら、「豚インフルエンザ」正式名称「H1N1のA型インフルエンザ」のフェーズがあっと言う間に段階的に引き上げられパンデミックの兆し。これは実感せざるを得ない。

パンデミックとは、ある感染症や伝染病が世界的に大流行することを表す用語だそうだが、「金融・経済危機」になぞらえてしまうのは、何かが発端で世界的に拡大(流行)してしまうことが似通っているからだと思う。経済もインフルエンザもグローバルでお金や人の流れはボーダーレス。規制が掛けられにくい世の中になってしまい、いうなれば今や世界はパンデミック・ワールドなのかもしれない。為替市場も豚インフルの影響を受ける場面もあったが、すぐに落ち着きを取り戻した。為替市場においては、豚インフルパンデミックよりも金融パンデミックのマグニチュードの方が依然として大きいようだ。

安いか高いかよりも「トレンド」

為替市場でも流行を意味する「トレンド」という言葉が頻繁に使われる。相場的には方向性とか動向と言った方がぴったりする。為替市場は特にトレンドが発生しやすく継続しやすいからトレンドに乗ってトレードしようとよく言われる。トレンドが発生しやすいのはどうしてですか、とエキスパートに訊いても、諸説・ご意見色々あるようで明確な答えは得られていない。しかし、いかなるマーケットでも、これだけトレンドが重要だと言われていて、皆がそう信じて行動しているのならば、相場はその通りに動くはず、だからトレンドが発生するそして継続するという考え方もできる。皆がそう思っているから、皆が見ているから、皆が利用しているからということが相場におけるチャートなどのテクニカル指標の重要性を表している。だから、チャートは単なるグラフではなく、そこには人間心理がびっしり詰まっているのである。

FXで一番危険なことは単なる値ごろ感でトレードすることだが、……ついしちゃうんです。告白すると、私も初めの頃、もういい加減下がったからとか以前より安いからといって買いを入れる逆張りパターンをよくやっていた。例えば、1,000円で高速道路乗り放題と聞けば「安い!!」と思うでしょ、以前の料金と比べて。しかし、為替ではそういう見方は危険。そんな風にやっていて負けが続いたある日、偶然見たギャンのルール第5条に「トレンドに逆らわないこと。自分のチャートとルールに従って、トレンドに確信が持てない時は売買しないこと」と書いてあった。そこから私は改めてトレンドを意識した。「円安」とか「円高」は、その値段の絶対値に大きな意味があるわけではない。安いとか高いという感覚も以前よりは安い、以前よりは高いということだけで、見る人のスタンスによって全く異なってくる。問題は現在の値段が高いか安いかではなく、今後、為替相場がどちらのトレンドへ向かうかがトレードの基準になる。

サーファーのように良い波を捉えるために

トレンドに乗る - 自分の頭の中で良い波が来るまでじっと待ち受けているサーファーの姿をイメージする。反対に、トレンドに逆らうとは、単純に言えば、ドル安円高トレンドの時はドル円を買ってはいけないし、逆にドル高円安の時にはドル円を売ってはいけないということだ。買うのであれば、上昇トレンドに乗った通貨ペアをお友達にした方が良い、これが「Trend is friend」と表現される所以。なぜかというと、その通貨ペアは既に上昇し始めているから(上昇トレンドと)分かりやすいし、先に述べたように、皆がそう思って買っていくので上がりやすいということになる。

為替レートは毎日ランダム(不規則)に上下動を繰り返しているように見えても、実はある程度一定期間においては大きな方向性を持って動いている。この方向性が「トレンド」である。トレンドには「上げ相場」、「下げ相場」そして「保ちあい相場」の3種類があって、前者二つが市場参加者の意思が一定の方向に向かう状況であり、後者がレンジまたはボックス相場とも呼ばれていて、市場参加者が売ろうか買おうかどうしようかと、迷いが生じている状況である。

こういった相場の状態をうまく把握することによって、どんなポジションを持つべきなのか、もしくは様子見すべきか、あるいは決済すべきなのかなどを判断することができる。そのトレンドを把握する方法の一つがテクニカル分析だ。テクニカル分析、「たくさんあって。どっから手をつけたら良いのよ」とお悩みのあなた、まずトレンドラインを引いてみましょう。次回は具体的なトレンドラインの引き方もお教えしたい。以外に簡単に引けますからね。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。