前回の復習

まいど、"相場の福の神"こと藤本です。前回は、『「NISA」で誰が一番得をするの?』と題して、「NISA(少額投資非課税制度)」で得する方をご説明しました。

そのポイントを再掲載すると以下の通りです。

ポイント

  • 100万円の投資資金を持つ投資家が、今回のNISA口座で最も得をする投資家とも言えそうです

  • 「100万円貯めてから」ではなく、「100万円にするために」NISA口座を上手く活用しよう

  • 全体の3分の1以上の銘柄が、10万円で投資可能

NISAは、少額しか投資資金を持ってない方が最も得をするんです。

今回は、「NISAのデメリット(欠点)」に関して、ご説明しましょう。

「NISAのバカヤロー」

某週刊誌に、上記のような刺激的な「見出し記事」が掲載されていました。あまりNISAのことを知らずに、NISA口座を開設、株式投資を行って、買った株が値下がりしてしまった投資家の声です。

NISAは基本的には、是非皆さまに使っていただきたい良い制度なのですが、残念ながら欠点、デメリットもあります。そのデメリットを解説しましょう。

第1回でも説明しましたが、NISAは、年間100万円までの投資金額について、5年間まったく非課税になる制度です。税務的には、NISA口座では、損益が発生しないことになっているのです。損益が発生しないので、非課税になるという仕組みなのです。

この点が最大の問題点なのです。益が発生しなかったことにしてくれるのは、ありがたいのですが、損も無かったことにされてしまうのです。

「単に損をしただけなので、問題ない」と思われるかも知れませんが、実は問題が大有りなのです。

NISA口座以外の口座の税金は?

ここで、NISA以外の一般口座での株式投資の税金を解説しましょう。

基本的には、売却益や配当などの収益に対して、20.315%の税金が掛かります。

例えば、A株式で10万円儲かって、次に、B株式を10万円損をした場合、A株式・B株式を合計すると

  • 10万円-10万円=0

となります。

このように、1年間(暦年 : 1月から12月まで)のすべての売買での損益と、配当金などの受取額を合計して、トータルの1年間の損益を出して、それに20.315%の税金が掛かることになります。

すべての損益を通算するので、これを「損益通算」と言います。

1年間のすべての取引履歴や配当金などの入金額などの取引報告書から、自分で税額を計算して、税務署に確定申告に行くことになります。これが、通常口座での株式の納税です。

これが、面倒な方については、証券会社が代わりに税金を税務署に自動的に支払ってくれる「源泉徴収ありの特定口座」というものがあります。これだと、証券会社が自動的に税金を計算して、支払ってくれるので、大変便利です。

複数の証券会社を利用すると、証券会社ごとに別々に納税されることになり、損益通算するには、確定申告をする必要があります。

だから、確定申告など面倒なことをしたくない場合は、利用する証券会社を1社だけに絞って、「源泉徴収ありの特定口座」を作るのが最も便利です。

3年間の繰越控除

もうひとつ、ややこしいことに、損失に限り3年間の繰越控除が出来るという仕組みがあります。

これは、ある年に株式投資で損失を出した場合、その損失を確定申告すると、3年間はその損失が繰り越し控除される制度です。「源泉徴収ありの特定口座」でも、1年間を通じて損失になった場合は、この3年間の繰越控除をするためには、確定申告する必要があるのです。

NISAでは損益通算が出来ません。

NISAでは、損も益もなかったことになるので、たとえNISA口座で損失を出しても、NISA以外の一般口座との損益通算は出来ません。

また、5年間の非課税期間が終了した場合は、引き続きその年の100万円の枠までの、ロールオーバー(繰越し)をしなければ、一般口座に引継ぐことになります。

ココがNISAの最大の欠点です。一般口座に移る株価は、そのときの時価になってしまうのです。

例えば、C株式を100万円で買っていて、5年後に50万円に値下がりしていた場合、NISA口座から一般口座に移るときには、50万円が一般口座での買値になってしまうのです。その後60万円になって売却した場合、当初の100万円から考えると40万円の損失ですが、一般口座での買値は50万円なので、逆に10万円の利益になってしまい、この10万円に税金が掛かってしまうのです。

通常口座での損失は、その年の損益通算で益を少なくしたり、1年間トータルで損失だと、3年間にわたって繰越控除が出来ます。しかし、NISA口座での損失は、損自体が無かったことにされてしまうのです。

今回のまとめ

  • NISAでは、利益も損失も無かったことになってしまう

  • 損益通算も、3年間の繰越控除も使えません

  • 最大の欠点は、損を抱えて一般口座に移した場合、損失なのに税金を払わなければならない場合があります

確かに、NISAには、すべてよいことだけではありません。上記のようなデメリット・欠点もあります。その欠点を防ぐ最大の方法は、NISA口座で損をしないことです。また、多くの場合は、非課税制度の恩恵があるはずです。

このコラムでは、NISAの上手な活用法を解説してまいりますので、「NISAのバカヤロー」とならないように、よく理解のうえ、NISAを活用しての株式を始めましょう。

執筆者プロフィール : 藤本 誠之

SBI証券投資調査部 シニアマーケットアナリスト。日本証券アナリスト協会検定会員。自称、「相場の福の神」。関西大学工学部電子工学科卒。日興證券(現SMBC日興証券)入社、個人営業を経て、機関投資家向けのバスケットトレーディング業務に従事。1999年、日興ビーンズ証券設立時より、設立メンバーとして転籍(その後、日興ビーンズ証券はマネックス証券と合併)。2008年7月、マネックス証券から、カブドットコム証券に移籍。2010年12月、トレイダーズ証券に移籍。2011年3月、同社を退職。のちに独立、マーケットアナリストとして活躍。2012年からマネーパートナーズのスタッフとして活動。2013年7月1日より現職。著書に 『ニュースを"半歩"先読みして、儲かる株を見つける方法 』(アスペクト)、『株で儲けるニュースの読み方 相場のプロが教える「先読み&裏読み」の極意』(ソフトバンククリエイティブ)、 『儲けに直結!株価チャートドリル』(成美堂出版)がある。
※ 本コラムで紹介する意見や予測は、筆者個人のものであり、所属する証券会社の意見や予測を表わすものではありません。また、紹介する個別銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。