今年もまた、結婚できないまま年が暮れてゆく……。みなさんいかがお過ごしでしょうか。私は一度も結婚しないまま2012年を終えようとしています。人生何が起こるかわからないので、年内に一発逆転のチャンスがあるかもしれないというわずかな希望は捨てずになんとか生きていこうと思っておりますが、その希望も極薄……。寒さが身にしみる季節です。

さて、この連載を始めてからというもの、私はこう質問される機会が増えました。
「雨宮さんって、本当に結婚したいと思ってるの?」

もちろん、結婚したいからこんな連載を書いているわけですが、外から見ると「こんな連載を男が読めば『こいつは結婚を焦ってる女なんだ』と腰が引けるに決まってるじゃないか。そんな自分の首を絞めるようなこと、普通はやらないだろう。本当は『結婚できなくてもいいや』って思ってるんじゃないのか?」という感じに見えるらしいのです。

周りに「悲しい女」と思われたくない

ええ、わかってます。そんなことは重々承知です。でも、別に連載を始めるまではいかなくとも、聞かれてもいないのに「独身自虐ネタ」を披露してしまう独身女性は、けっこう多いのではないでしょうか。

女はトシを取れば取るほど「ツッコミづらい生き物」になっていきます。「雨宮さんって結婚してるんですか?」「彼氏いるんですか?」。そういう質問をされるたび、場の空気がまぁ、凍り付くまではいかなくともシャーベット状になることが増えてきました。「独身です」「彼氏いません」という答えに対して「フォローせねば……!」という緊張が走るのです。

そして、その空気こそが、独身女にはしみじみつらいのです。そして「いや~、今どき結婚なんてみんな遅いですから」「高嶺の花って感じで口説きづらいんですよ~」なんていうフォローを入れられようものなら「お気遣いいただいてすみません!」と土下座したい気持ちになります。

独身というだけで「周りに気を遣わせてしまう」こと、その気遣いがだんだん重くなって、周りが「結婚します」「結婚してます」「今度子供が生まれます」などの幸せな話を「なんかしにくい」雰囲気になってしまうこと、「雨宮さんのいるところで恋愛話はしにくい」と思われてしまうこと、それを実感すると、自分の存在がイヤ~な方向にどんどん重くなっていくのを感じるのです。

その重さを回避するために、聞かれてもいないのにどんどん「独身自虐ネタ」を自分からブチまけては、モテにくい雰囲気を作ってしまう……。そんな女性は私だけでなく、たくさんいると思います。でも、それは決して「モテなくてもいいから」やっているわけではなくて、周りに「ツッコんでもいい」空気を作るための、独身女ならではの気遣いであり、優しさなのだということを、少しだけ理解してほしいのです。

誰にもツッコまれない、もはや「触れてはならない」ような、怖い存在になってしまうことが、独身女にとっては一番怖いことなのです。だって、ただでさえ独身なのに、そんな心の距離置かれたら人生寂しすぎるじゃないですか……。忘年会などで激しい自虐ネタを繰り出す独身女性を見かけたら、どうか、そっとしておいてくださいね。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩