2019年春。日本の宇宙探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウへ、そして米国の宇宙探査機オサイリス・レックスが小惑星ベンヌへ、それぞれ到着。探査をしております。期せずして両方ともC型の小惑星です。ところでC型ってなんじゃらホイということで、今回は小惑星のイロイロをおさらいしておきましょー。

2019年春。日本の小惑星探査機、はやぶさ2が活躍しておりますなー。

2018年夏に小惑星リュウグウ付近に到着後、周囲を巡りながらの探査 → 超接近 → 子探査機の投下 → 着陸・離陸成功でサンプル取得 → 衝突装置によるクレーター掘削成功 と着々と成果をあげています。

詳しくはマイナビニュースの「はやぶさ2タグ」を見るのが吉ですよん。ただ、順調すぎてドラマにならんとか言う向きもありますな。というのは、「初代」のはやぶさが散々だったからです。安定装置の故障、子探査機の投下失敗、着陸時に損傷、行方不明・通信途絶、奇跡的な通信再開、エンジンの全損と稼働パーツの組み合わせ代替による帰還成功、ただし予定していた地球周回軌道入りはできず燃え尽きながらサンプルは地球に届ける。ドラマチックといえばそうですし、映画が3本に全天映画が1本作られましたが、まあ、その「初代」の失敗(技術試験ともいえる)が糧になってのはやぶさ2の活躍ということでございますなー。

さて、この初代はやぶさと、はやぶさ2。両方とも小惑星探査機です。また、現在米国版はやぶさともいえる、オサイリス・レックスも小惑星ベンヌを探査しています。で、これら小惑星は、地球とおなじく太陽系の天体です。えーっと、位置づけを描くと図のような感じです。

  • 太陽系天体
    • →{核融合反応をしている}
      • YES→ 恒星(太陽)
      • NO →{太陽を巡る}
        • NO → 衛星
        • YES→{重力の作用で球形}
          • YES→ 惑星・準惑星
          • NO →{地球から個別の天体として捉えられる}
            • NO → 流星物質・宇宙塵・ガスなど
            • YES→{天体がくっきり見え、ガスをまとっていない}
              • YES→小惑星・(太陽系外縁天体)
              • NO →彗星

ひとつながりの言葉でいえば「太陽を巡る、不定形な天体のうち、彗星のようにガスを噴き出してないもので、氷の固まりと見られる太陽系外縁天体と区別したもの」という感じになりますかね。長いなー。

さらに、小惑星が地球や火星に衝突すると、隕石といわれます。で、宇宙塵のように数えようもないものはおいておいて、天体として最も多く見つかっているのが小惑星でございます。えーっと天文学者の権威ある国際組織である国際天文学連合(IAU)の小惑星センターを見ると2019年4月初旬時点で80万個近くの小惑星が確認されていますな。ちなみに最初に発見されたのは1801年1月1日ですから200年あまりでここまで見つけてきたってわけです。写真は撮られたものの正確なデータがないものもありますので100万個はゆうに超える小惑星が発見されているのでございます。これはみんな太陽のまわりをまわっているのでございますよ。太陽系って意外と足場が多いのねって感じです。

また、発見されている小惑星は直径数100mから1000㎞弱までいろいろです。中には直径10m程度のものも見つかっています。まあ隕石は指の先くらいのものもありますし、実際砂粒サイズのものもあるのですけど、地球から見て宇宙空間でとらえるのには限界があるってところですな。

さてこれだけ小惑星がたくさんあると、分けたくなるのが科学者ですな。大きさで分けるのはあまり積極的ではなく、まずは太陽を巡る軌道で分類されます。

  • 軌道による分類

このうちNEAsは地球に寄ってくるので小さい小惑星でも発見されます。また、場合によっては月より近くにくるくらいなので探査機は飛ばしやすくなっています。はやぶさ、はやぶさ2ともNEAsを目指しました。あまり遠い小惑星だと、そこに到達するパワーが必要で帰ってくるのも地球のスピードにあわせないといけず、大変なんでございます。

ただ、上の表でもわかるのですが、NEAsと太陽系外縁天体では岩石か氷かという違いがあるのですな。これは遠方ほど寒いため氷が溶解せず、大量に存在するからです。地球のあたりだと氷は太陽熱で蒸発し宇宙空間では水蒸気となってまさしく雲散霧消してしまいます。氷なのに地球付近まで接近する天体は彗星として蒸発してガスが飛び散り太陽の光圧で尾を引いている様子が観測されます。まあ、小惑星の中にも突如、尾を引くものがこれまでに2例あるんですな。自転速度がじょじょにあがって、崩壊するまで高速になったためのようです。

ところで遠方にあるのが氷でとか、近くのが岩でどうやってわかるんかい? といえば光の反射の仕方でわかります。ほれ、みなさんも石か氷かは見た目の色などでわかるでしょ? 同じようなことをやるんですな。で、そうした結果、氷か岩かだけでなく、さらに細かく分類がされています。

まずフツーの岩っぽい石っぽいのがS型です。ストーンのSでございます。NEAsでは一番ありふれています。またM型は、メタル、金属が主成分ですな。地球の中心にも大量の金属が集まっていて、地磁気の原因になっていますが、小惑星ができるときにいったん集まって中心に金属が集まり、それが衝突などでバラバラになったためと考えられています。

それからC型はカーボン、炭素です。えらい黒っぽい小惑星があるのです、NEAsにはほとんどなく、メインベルト小惑星でも太陽から離れたところほど多いのです。NEAsのC型は何かのはずみでたまたま迷い込んできたやつなんですな。さらに、太陽から離れると、水がしみ込んでいるとみられるP型(ややこしんですが、疑似を意味するpseudoからきています。一見M型っぽいのですが違うことから来ています)やD型(暗い、ダーク)が見られるようになります。P型やD型はC型よりさらに太陽から遠いところに発見されています。

  • 小惑星リュウグウの模型

    小惑星リュウグウの模型。C型ということでかなり黒い。はやぶさ2から送られてくる画像の多くは灰色っぽい色をしているものが多いが、あれは画像を見やすいように編集した後のもの (撮影:大塚実)

これ、つまり太陽の影響が強いのがS、M型で弱いのがC型、P型、D型といってよさそうなんですね。太陽系ができ、小惑星も大量にできたと考えられているのですが、そのころのままを調べるなら、C型、P型、D型がよいわけです。

で、はやぶさはS型を調べました。まあ、そこらにあるからね。ところがはやぶさ2は、NEAsのなかで例外的にあるC型のリュウグウ、オサイレスレックスはベンヌを調べることで、太陽系の初期の情報を調べようとしているんですな。

でも、どうせならP型やD型のほうが面白いんじゃない? と思いますよね。それを調べるには、木星軌道くらいまで探査機を飛ばさないといけないのですが、その技術、アメリカしか持っていないのです。日本もはやぶさの技術に、太陽光帆船で実験成功をしているイカロスの技術をくみあわせて、探査したらどう? という話があるのですが、さて予算がつくかどうか。でも、できればこれまた画期的なチャレンジとなるんですな。

小惑星探査については、やっぱり小惑星のことをちょっと知っておくと味わいぶかいということでまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。