AIがらみの流行もあり、数学がちょっとブームになってますなー。ということで、今回は、数学とお近づきになるためのネタをいくつかご紹介いたします。ちなみに、数学はほぼでてきません? ので、心配するな! オレも数学はダメだ!!

世の中には2種類の人がいます。数学と付き合える人と、付き合えない人です。泳げる人と泳げない人みたいに、結構明確な違いがあるわけです。そして水泳は泳げるのが主流派ですが、数学は見渡す限り「付き合えないのが主流」でございますなー。私も理系出身のくせにそれに安住し、微分積分なにそれおいしいの? な人でございます。はい。

ところで日本は、世界にも稀有な人々が数学を楽しむ大国でございます。世界中で流行っている数独(SUDOKU)は、日本からヒットしたパズルで、世界王者は日本人の森西亨太さんですし、お風呂で1から100まで数えるので少なくとも2桁の読み方を知らない人はいないし、九九は叩き込まれて暗算できるし、本来ワープロで書くべき文書を、表計算ツールのエクセルを神のように使っ(違

まあ、これは今に始まったことではないです。江戸時代のベストセラーはソロバンのマニュアルから数学パズルまで網羅した塵劫記(じんこうき)です。数字を操り、楽しむというのは日本の文化に深く根を張っているのですなー。推理小説も一種の数学的な論理パズルなのですが、これがヒットするのも日本でございますなー。名探偵コナン見てきました。面白うございました。

さて、だからと言って、すべての日本人が数学や算数が得意でないのは、n=1の事例の私一人をとっても明らかでございます。

では、数学を楽しめないのか? といえばそんなことはありません。運動音痴でも、プロ野球やJリーグは楽しめますし、羽生弓弦くんのスケートや大坂なおみ選手のテニスに手に汗を握れます。

サイエンスなら、ノーベル賞受賞となれば、そりゃスゲーとなり、はやぶさ2のタッチダウンやブラックホールの撮影成功の科学者はスターでございます。数学にも、自分が数学しなくても、楽しめるのがないのかしら。はい、もちろんあるんですね。最近手にとったもの、見たものからいくつかあげてみます。

なお、数学そのものを楽しむ、正当な数学ネタについては、「我、京大生ぞ」というWebサイトとか、「プレジデントオンライン」のタカタ先生の話があります。書籍は何と言っても結城浩さんの数学ガールが人気ですね。読みやすく楽しい、3人に2人は楽しめそうないい本ですが、私は残りの1人で、くじけました。

1:数学界の「ニュートン」「アインシュタイン」を知っておく

物理学の世界では、力学を作ったニュートンと、相対性理論を作ったアインシュタイン、それにガリレオなどが有名人でございます。

じゃあ、数学では誰か、とりあえず名前知っておくといいのはこんな人ですね。

ピタゴラス

2500年前の古代ギリシアの人で、三平方(ピタゴラス)の定理で有名。「万物は数なり」と何でも数学にしちゃおうと発言した人

ユークリッド

2200年前の古代ギリシアの人。図形を扱う幾何学の祖。ユークリッドが考えていなかった幾何学を非ユークリッド幾何学というほど、美味しいところ持ってっちゃった人。

オイラー

300年前のロシアなどの人。微分積分、級数展開など、この人が産んだ数学で高校でドロップアウトする人多数。y=f(x)という表記はこの人。7つの橋のある街を一筆書きで巡れるか? というケーニヒスベルグの橋問題でも有名。盲目になっても口述筆記で論文書いたという飛び抜けた天才。でも天才が考えてること、凡人の高校生がやってるのよね。今は。

ガウス

200年前のドイツの人。機械学習の基礎の基礎である回帰関数(最小二乗法)を10代で考案した天才。複素数を世の中に広め、数学者がやたら好きな素数や、統計の正規分布の研究でも有名。天文学や地球物理でも活躍した万能の天才で、磁力の単位ガウスは彼にちなむ。

他には簡単そうで超絶難問を残したフェルマー、ポアンカレ、リーマン。応用でよく名前を効くフーリエ、マクローリン、ラグランジュ、ラプラス、ポアソン。数学の一分野、群論を作って誰にも(ガウスにも)理解されず、決闘で死んだガロアあたりはよく出てくる名前ですなー。

2:マンガ「アルキメデスの大戦」とドラマ「NUMBERS」、小説「博士の愛した数式」

数学の中身は全く理解できないし、説明もされていなくても、数学を使っているなとわかるのが「数学の天才」が海軍で戦争を止めるために活躍するマンガ「アルキメデスの大戦」ですね。ドラマの展開のキーとなるところに、数学と物理学が登場します。間もなく映画が公開されるようでございますね。医学ドラマで医学の中身がよくわからなくても、その気になっちゃうのに似ているようなところがございますよ。

ドラマで数学というと、どこでもサイエンスの初期の頃に紹介した、アメリカのTVドラマNUMBERSがあります。こちらはFBI捜査官の弟で天才数学者チャーリー・エプスが色々な犯罪を、数学を駆使して操作するという話でございます。

そして小説では「博士の愛した数式」ですね。友愛数とかそんな言葉が色々出てきますが、上2作のドラマとサスペンスではない、穏やかな感じの内容ならこっちでございます。

3:数学ではなく数学者を楽しむ「世にも美しき数学者たちの日常」

この原稿を書くキッカケは、「『数学者は変人ばかり』って本当? 天才数学者・千葉逸人先生に聞いてきた」という、売れっ子ネットライター・ヨッピーさんの記事でございます。面白い記事でございますよ。で、数学も面白いけど、ガロアの生涯のような数学者そのものも面白いことを思い出したからでございますね。

実際、私の数少ない数学者の知り合いも数「数学の国」に行っちゃうような人ばかり(えー、重度のオタクと思えば近い)なので、数学者と付き合うのはなかなかですが、まあ眺めるには面白いのですよ。

と思っていたら、書店でうってつけの本が出ていました。二宮敦人さんの数学者の連続インタビューを纏めた「世にも美しき数学者たちの日常」でございます。

この本には、上の千葉先生も含め、究極の変人も出てくれば、数学を楽しむ中学生や数学の塾やイベントをしている人も含め「数学」者が紹介されています。最初は、目次を眺めて、大学の先生に混じって実業家も入っていて、何でだろうと思っていたのですが、これが全部綺麗につながっているのですね。その辺が、小説家が行なった連続インタビューなのですね。ストーリーがあるんでございます。というか、色々な敵に次々の遭遇するRPGのような面白さがある。次はどんなイベントがあるのかというワクワク感があり、一気に読めてしまいました。

ということで、とってもオススメでございます。

4:そのほか数学をめぐっては

数学のノーベル賞に当たると言われるフィールズ賞(ただし4年に1度、40歳以下でないと受賞できない)とか、ミレニアム問題とか(ポアンカレ予想など7つの未解決超難問に懸賞がかけられたもの)、ABC予想を解いた天才望月教授とか、色々なワードを知っていると、時々引っかかって楽しめるかと思います。

あ、何とか予想ってのは「多分こうなると思うけど、証明できてないからね」っていう定理でございます。有名なのは「xn + yn = zn となるnが3以上の自然数の組(x, y, z)は存在しない」というフェルマー予想(または最終定理)ですね。ピタゴラスの定理をちょっと拡張すると成り立たないよというだけなのですが、このフェルマーの予想(っていうか当人は解いたと言っていたんですが)から360年経ってワイルズが証明しました、これを解くまでの歴史を取り上げた本「フェルマーの最終定理」もおすすめ。)

数学、できなくても、わかんなくても、楽しめるものでございます。また面白そうなものがあれば、ご紹介いたしますねー。では。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。