九州大学(九大)は5月28日、2016年の熊本地震および2019年の米国リッジクレスト地震を対象に、小規模地震の発生様式を詳細に解析した結果、地震のすべり方のばらつきを統合した指標である「地震モーメント効率(Mstk/M0)」が高い状態では、断層が大きな地震を引き起こしやすい状態にある可能性があることが明らかになり、日本国内の複数の地震についても解析を行ったところ、同様の傾向を確認したと発表した。

同成果は、九大大学院 理学研究院の松本聡教授、同・松島健特任教授、同・相澤広記准教授の研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系のオンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

日本は、4つのプレートがひしめく地域に存在するため、地震や火山活動が多い。そうした中、現在、東海地方から九州地方まで太平洋に面する広い地域において地震と津波による大きな被害が警戒されているのが南海トラフ地震だ。文部科学省の地震調査研究推進本部によれば、今後30年以内にマグニチュード(M)8~9クラスの大型地震が発生する確率は、「すべり量依存BPTモデル」で60~90%以上、「BPTモデル」で20~50%以上とされる。

このように、地震の予測は長期的な確率でしか推定できず、具体的な発生時期を特定することなどは現在の科学では極めて困難だ。そこで現在、地震活動が活発な領域では、その活動特性を基に大地震に至る指標を求める研究がなされている。しかし、地震の発生後に地下の断層がどのような状態にあるのか、つまりさらに大きな地震が起こりやすい状態にあるのかどうかを評価することは困難だった。そのため、地震発生直後における断層の状態変化を解明する手段が強く望まれていた。

九大では2000年から独自の地震観測を実施しており、2016年熊本地震の震源域においても、地元の自治体や住民の協力を得ながらそのデータの解析を行うことにしたとする。それと同時に、同様の発生パターンを持つ2019年7月に米国カリフォルニア州のモハーベ砂漠で発生したリッジクレスト地震も詳しく調べることにし、両地震を詳細に解析したという。

今回の研究では、複数の地震の「すべり方」をまとめて評価し、地下の変形がどの程度一方向にそろっているのかを示す指標である「地震モーメント効率(Mstk/M0)」が用いられた。この値が高いと、地下の変形が1つの方向にそろっており、大きな地震を起こしやすい(臨界度が高い)状態にある可能性が示される。分析の結果、M6クラス地震の後にM7クラス地震が起こった熊本地震および米国リッジクレスト地震では、M6クラス地震の後もこの指標が高い状態が維持され、その後にM7クラスの本震が発生していたことが確認された。

さらに、日本全国の内陸地震のデータを解析した結果、すべてではないものの、同様の傾向が他の事例でも見られることが確認された。一方、大きな地震が起こらなかった場合は、地震モーメント効率(Mstk/M0)が低下することが判明した。

  • 臨界度を通して見たM6クラス地震とその後の状況

    臨界度を通して見たM6クラス地震とその後の状況。詳細な地震観測によってモニタリングすると、M6クラス地震が起こった後も、臨界度が高いとM7クラス地震が起こる可能性があることが明らかにされた。(出所:九大プレスリリースPDF)

今回の成果は、地震後の短期間における地下状態の評価に新しい視点を与えるものと位置づけられるとする。今後は、さまざまな地域の内陸地震に適用し、より多くのデータに基づいた検証を進めることで、地震発生の理解や防災への応用が期待されるとしている。