悪の組織を倒すスーパー

「ヒーロー」といえば、神話、歴史上の人物、戦場のエースまで色々でございます。スーパーアイドルな検察官もおましたね。

が、まあ、なんというか、ヒーローと言われて、パッと思い浮かべるものといえば"スーパーヒーロー"でございます。

ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊でございますな。

いずれも誕生して、人気になり、シリーズ化されて、かれこれ半世紀。当時10歳の子供も、まもなく還暦。スーパーヒーローは、日本社会に完全に定着した文化となっておりますね。

デパートやショッピングモールなどで行われるショーには、今も昔も、子供たちが目をキラキラさせながら夢中になっているわけでございます。ええ、私もそんな一人でございました。

あ、心配しないでください。

まちがいなく「どこでもサイエンス」でございますよー。

ただ、スーパーヒーローが子供たちのところに来るのは、めったにありませんし、すぐに遠いどこかに行ってしまいます。さまざまな「大人の事情」もあったりします。悲しいけどこれ、現実なのよね。

そこで登場したのが、いつでも会いに行けるご当地(ローカル)ヒーローでございます。いつも地域にいて、しばしば子供たちの前に、ときどきは大きな子供たちの前に現れる。それがご当地ヒーローなのでございます。

ご当地であっても、悪を倒し、正義を守る、のは基本でございます。ただ、その悪というのは「自転車の並べ方がグチャグチャになっている」とか「飲酒運転」とか「火の用心」とか「ゴミのポイすて退治」とか身近な問題が…いや、テレビのスーパーヒーローでもしばしばあったか…主流でございます。

あとは、地域に観光客を増やすとか、地域を明るくするとか、地域の特産品のアピールとか、そういうミッションを持っていることも多いですな。ご当地ヒーローは、ショーやポスターでの活躍が中心ながら、グッズ展開や最近では動画での展開も出ているようでございます。

あ、「どこでもサイエンス」です。

さて、そんなご当地ヒーローの中に、「科学戦隊サイエンジャー」というのを見つけました。 なんと、札幌市青少年科学館で活躍しているようなんですな。

みてみると、実験教室の冠になっていたり、企画展で活躍したり、行事の案内をしていて、プラネタリウムにも出演しているようでございます。

サイエンスを楽しむのに、ご当地ヒーローをからめ、さらに「ブラックサイエンジャー」という敵役まで登場させているのですな。子供たちの目はさらにキラキラしているんでしょうか。

さて、札幌はキャラでしたが、実態がある、さいレンジャーもあります。さいは、サイエンスで、さいたま! さすが埼玉(褒め言葉)わかりやすいですな。ちゃんと紹介があって(札幌もほしいですな)。「科学好きな子どもを増やすため、さいたま市青少年宇宙科学館で秘密裏に組織された科学戦隊である。(決して館の職員ではない…?)」。さいたま市青少年宇宙科学館(浦和レッズの本拠地の1つ浦和駒場スタジアムの隣)に、年に4回の特別サイエンスショーに登場するようです。かなーりおもしろそうですなー。いいなあ、さいたま。

一方、科学の街つくばにも、Dr.ナダレンジャーが活躍しています。ただ、こちらは、戦隊ではないのですな。国立の防災科学技術研究所の研究者の納口恭明さん(本物の理学の博士Dr.)が、雪崩や液状化などの災害のメカニズムを紹介するときの、世を忍ぶ仮の姿なのでございますな。自ら開発した小型の実験器具で、自然が起こす不思議な現象を再現するというわけです。ちなみに助手のナダレンコさんもいるのでございます。各地の科学館や防災イベントにも登場しているようなので、近くに来たらぜひ会いに行ってくれよな!。

ところで、なんで、世を忍ぶ仮のすがたで、ナダレンジャーなのかについては、インタビューがありました。反応しなかった大阪の子が、仮面をつけただけで同じ話なのにバカウケしたからだそうです。大阪の子が話に食いつく!それは、重要ですなー。

さて、最後に、天文・宇宙業界では、まあ、知らない人はいないというのが、兵庫県で活躍する、軌道星隊シゴセンジャーでございます。シゴセンは、子午線で、東経135度、日本の標準時の基準になる子午線にある、明石市立天文科学館を拠点とするご当地ヒーローなんですな。なんでも、子午線という言葉を、明石の子供が「ねうしせん」と呼んでショックを受けた、同館の職員が考案したとかしないとか。

敵役に「ブラック星博士」。さらに、戦隊モノに欠かせない巨大ロボットまでCGで製作するファン(ただし本職のCG屋さん)も現れるなど、明石市に根付いているようでございます。

Wikipediaなどを見ると、ゆるキャラ、ご当地ヒーロー、ご当地アイドルなどなど、全国各地で、楽しくあれこれやっている人たちが大勢いることがわかります。サイエンスご当地ヒーローについては、研究所や科学館のような拠点を触媒にした活動が中心ですが、そのうち、独立系の人たちも現れるかもしれませんな…チョイと検索…あ、あれ、これはまあそうなのかな。20年も活動をしているという、ナゾナゾマンと実験ジャーでございます。東京の千代田区にある科学技術館と共同でとありますが、あ、これは知らなかった。へぇぇ、ほう。

ちょっと衝撃で、落ちが思いつかないので、これにて。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。