前回は融資の金利の相場について情報を整理しました。今回は融資の金利を低くするための手段について、融資商品の観点と交渉の観点から説明します。

商品の観点

融資の諸条件(金額、期間、担保、保証、返済方法)が同じ場合、変動金利を選択するケースと固定金利を選択するケースでは、金利水準に差が生じます。2018年10月時点では、変動金利の方が固定金利よりも低い状態です。2018年の夏に、変動金利なら0.56%、固定金利なら1.3%という事例を拝見しました。金利変動リスクを受容して金利水準を下げる手法で、常に先述の幅が保証されているわけではありませんが、ひとつの目安になると思います。

変動金利のリスクは取りたくないので固定金利を選ぶ、でも金利水準を低くしたいという場合、返済方法について譲歩する方法があります。某金融機関に「中長期固定」と呼ばれる融資商品があり、繰り上げ返済をしないという条件を付加することで、通常の固定金利の融資契約よりも低利にすることができます。

厳密には、繰り上げ返済すると違約金が発生する内容の契約なので、損をするものの繰り上げ返済自体は可能です。長期にわたって手元に資金を持っておきたい場合に有利な設計となっています。金融機関側から見れば、預金を集めて貸す通常の融資と、金融市場から資金調達をして金融デリバティブ(金利スワップ)を付加して貸す融資との差異が、両者の金利差として現れます。

脱線しますが、類似した商品としてデリバティブ内包型(内在型と呼ぶ金融機関もあります)の融資契約があります。例えば、融資期間の前半を変動金利、後半を固定金利とすることが可能です。前半を固定金利、後半を変動金利のパターンも選択できます。当商品を提供している金融機関からは、目安として3年以上の契約期間と数千万円単位の資金ニーズがあれば検討できると聞いています。金利の動向に詳しい財務担当者なら、自らの予測に合わせて最適なプランを選ぶことができるのです。

金利の動向がわからないケースでは、大もうけも大損もしないように、固定金利と変動金利の割合が半々になるよう融資残高を管理するのが定石です。

交渉の観点

最もわかりやすい方法は、複数の金融機関から相見積もりを取ることです。融資の期間、返済方法、担保の有無、保証の有無といった条件をできるだけそろえて依頼した方が、比較が容易になります。

取引先の金融機関がひとつしかない場合は相見積もりを取ることが不可能なので(もちろん新規開拓しても構いませんが)、融資契約の諸条件を調整して金利水準を下げるか、融資契約以外の契約と組み合わせて交渉します。商品を大量一括購入して購入単価を下げる要領で、融資金額を大きくして金利水準を下げるパターンや、金融機関の手数料収入が増えるように従業員の給与支払口座や経費支払口座を設定して振込手数料の払い込みを約束するパターンが考えられます。双方が納得しやすい合意点を探ることが重要です。

融資金利を低くするために取り得る手段に関する説明は以上です。 次回は、デットファイナンスを活用した黒字倒産の回避法について解説します。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。