投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。今回は投資はコツコツした方がいいのか、過去40年を振り返り検証してみます。

  • 投資はコツコツ? 40年、月1万円を日経平均に投資していれば

    投資はコツコツ? 40年、月1万円を日経平均に投資していれば

最近、インターネットで投資関連のサイトやニュースを検索することが多いせいか、やたらと投資商材の広告が飛び込んできます。いわく、「これだけで初心者の私が1カ月で○万円儲けた!」「これを教えてもらって負けなくなった! 」など、刺激的な言葉が並びます。詳細は不明なので全部がウソとは言い切れませんが、かなり怪しいですね。

投資の基本は「長期でコツコツと」

さて、資金に余裕があって、興味本位やドキドキ感を楽しみたいと言うのであれば話は別ですが、資産形成のための投資は「長期でコツコツと」が基本ではないでしょうか。

ちょっと検証してみましょう。若い世代の方が老後資金を作るというイメージで、毎月1万円で株式投資を行った場合、40年後にいくらになっているか。残念ながら将来の株価がどうなるか分からないので、過去40年間の株価のデータを使います。

40年前から毎月1万円ずつ日経平均に投資していれば……

具体的には、「40年前から毎月1万円で日経平均を買って持ち続けた場合、現在保有している日経平均はいくらになっているか」。2019年9月30日を「現在」とすれば、答えは773万円です。これに期間中に受け取った配当が加わるのですが、データの制約もあり、配当は再投資せずにお小遣いとして使ったことにします(その他、手数料や税金なども考慮していません)。

毎月1万円をタンス預金していれば、40年間の合計は480万円ですので、日経平均への投資結果はそれを約60%上回りました。なお、毎月1万円の積み立てで平均の運用リターンが年率2%であれば、複利運用で40年後には734万円になります(※)。したがって、日経平均への投資はそれと同等か、配当を考えればそれを上回ったことになります。

(※)こうした積立投資のシミュレーションは金融庁のHPなどで簡単に行うことができます。

2%のリターンは結果として悪くない

株式投資で損失が出るリスクを考えれば、2%のリターンで十分なのかという疑問は残ります。ただ、この40年間に日経平均が平成バブルの崩壊やその後の「失われた20年」を経験し、またこの20年間に金利がほぼなくなったことを考えると、年平均2%というリターンは結果からみれば悪くなかったのではないでしょうか。

定額投資の場合、価格が低い時ほど多くの株を買えるという「ドルコスト平均法」の効果が長期投資で発揮されたようです。

米国株に投資した場合は驚きの結果

日本株(日経平均)ではなく米国株(NYダウ)に投資した場合はどうでしょうか。これは毎月1万円を米ドルに交換し、それでNYダウを買うケースです。40年前に開始した投資で現在の米国株保有額は2,572万円です。タンス預金の実に5倍になりました。NYダウは過去40年間ほぼ右肩上がりで、最近も最高値を更新しているので、驚きではないかもしれません。ただ、米ドルがこの40年間で円に対して半分以下の価値になっていることを考慮すれば、やはりすごい結果といえそうです。

分析の「落とし穴」

ところで、上の分析にも「落とし穴」があります。そもそも過去の「結果」に過ぎず、過去40年間のデータから今後40年間のヒントを得ようとすることに何の意味があるのか。また、投資期間を通して資産は株の形で保有されていました。現在の保有額は累積して取得した株数に現在の株価をかけて算出しています。仮に何らかの理由で株価が足もとで20%下落すれば、その瞬間に保有額も20%減少します。米国株の場合は、米ドルの対円レートにも同様の影響を受けます。タイミング次第で結果は大きく異なると言えるでしょう。

攻めの投資は投資経験を積んでから

もっとも、それらの「落とし穴」があるとしても、「投資は長期でコツコツと」を否定するものではありません。まだ社会に出たばかりで、投資の経験の浅い方ほど、「長期でコツコツと」を実践していただきたいものです。年齢を重ねて所得が増え、投資経験を積んだ段階で、いくらでも攻めの投資を行う機会はあると思います。

なお、ご参考までに過去10年間、20年間、30年間のデータも掲載しておきます。