「人生100年時代」と言われる今、20代からの資産形成は待ったなし。とはいえ「投資の目利き力、どうやって磨く?」と悩む人も多いはず。本連載では、20代から仮想通貨や海外不動産に挑戦し、いまはバリ島でデベロッパー事業、日本では経営戦略アドバイザーも務める中島宏明氏が、投資・資産運用の知識や体験談、そして業界の注目トピックを紹介します。
今回のテーマは、ビットコインの半減期サイクルとその行方です。
FTX事件から始まった疑念の冬
2020年のビットコイン半減期到来後、象徴的だった出来事が、2022年に発生したFTXの破綻です。世界有数で将来有望な暗号資産取引所と見なされていたFTXが、ガバナンス不全と顧客資産の不正流用によって崩壊した事実は、暗号資産業界全体に再び深刻な不信感をもたらしました。
この事件は、単なる一企業の倒産ではなく、「暗号資産は本当に金融インフラとして成立するのか」という問いを市場に突きつけた出来事だったのかもしれません。その結果、レバレッジを過度にかけていた事業者の淘汰、ベンチャーキャピタル投資の急減、個人投資家の市場離脱が連鎖的に起こり、2022年から2023年にかけては静かなベアマーケットが続きました。
一方で、この期間は業界にとって「調整と再編の時間」でもありました。短期的な熱狂やストーリー性に依存していたプロジェクトが姿を消し、技術力、財務健全性、コンプライアンスを重視する事業体が残る土壌が、静かに形成されていったのです。
2024年の半減期到来とETF承認が示した「プロ市場への転換」
2024年4月、ビットコインは4度目の半減期を迎えました。この半減期は、2016年や2020年の半減期サイクルとは性質が異なっていたと感じます。過去に見られたICOブームや、Web3・NFTブームといった大衆型・BtoC型の熱狂はほとんど起こらなかったと言えるからです。
代わりに市場を動かしたのが、ビットコイン現物ETFの承認でした。これは個人投資家の投機心を刺激するイベントというよりも、運用会社などの機関投資家に対し、「ビットコインが制度的に投資対象として認められた」というメッセージを送るものでした。
実際、価格は半減期を迎える前の段階ですでに高値圏に達しており、「半減期が価格を押し上げる」という単純な構図は、すでに市場に織り込まれていました。この点から見ても、ビットコイン半減期による4年サイクルの周期性は崩れつつあると言えます。半減期が“材料”ではなく、“前提条件”として扱われ始めたこと自体が、市場成熟の証左と考えられます。
最高値更新の裏側にある静かな構造変化
2024年から2025年にかけて、ビットコインは史上最高値を更新しました。しかし、その価格形成のプロセスは、過去のバブル局面とは異なっていたのではないでしょうか。SNSを中心とした個人投資家の過熱や、いわゆる「億り人」的な言説は限定的で、むしろ静かで持続的な資金流入が特徴的でした。
背景にあるのは、ビットコインの位置づけが「ハイリスク資産」から「代替的な価値保存手段」へと変化しつつある点です。インフレ、地政学リスク、法定通貨の信認低下といったマクロ環境の中で、ビットコインはゴールドに近い文脈で語られる場面が増えています。
この変化は、短期的な価格急騰を煽るものではありませんが、一方で下値を支える構造的な需要を生み出しています。価格の動きがボラティリティの高かった過去と比較して穏やかになっていること自体が、市場の成熟を示しているとも言えるでしょう。
2026年に「何も起こらない」ことの意味
市場関係者や一部の投資家の間では、「次に大きな業界トラブルはいつ起こるのか」という議論が常に存在しています。仮に2026年前後に、FTX級の破綻事件や大規模ハッキング、横領といったネガティブな出来事が起こらなかった場合、それは市場が停滞していることを意味するわけではありません。
むしろ、大きな不祥事が起こらないこと自体が、暗号資産業界が成熟段階に入りつつある証拠と捉えることができます。内部統制、カストディ、監査体制が整備され、過度なリスクを取るプレイヤーが減少している可能性が高いためです。
ただし、「何も起こらない状態」が永続的に続くとは限りません。2026年にはなにも起こらなかったとしても、2030年もなにも起こらないとは限らないからです。金融市場は常に緊張と緩和をくり返してきました。その次の大きな節目として意識されるのが、2028年の半減期です。
2028年半減期と日本の制度転換
2025年12月19日に決定した2026年度税制改正大綱によると、2028年以降、日本国内では暗号資産に関する規制の根拠法が、資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行する可能性が高まっています。これに伴い、暗号資産の分離課税化や、投資商品としての法的位置づけが明確化されることが想定されています。
この制度転換は、日本市場にとっては大きな意味を持ちます。これまで暗号資産は、「決済手段なのか投資商品なのかわかりにくい存在」として扱われてきましたが、金商法の枠組みに入ることで、投資家保護、情報開示、内部統制といったルールが整備され、法人や機関投資家が参入しやすい環境が整うでしょう。
2028年の半減期においても、何らかのネガティブな出来事が起こる可能性を完全に否定することはできません。しかし仮に起きたとしても、それは市場崩壊を意味するものではなく、「制度化された市場における調整局面」として処理される可能性が高いと考えられます。過去にもあったように、ストレステストのようなものと捉えて良いでしょう。
ビットコインの4年サイクルは、もはや単純な価格予測モデルではありません。成熟した市場が、どのようにリスクと成長をくり返していくのかを読み解くための時間軸へと変化しつつあるのです。ビットコイン半減期は、おおよそではありますが、あらかじめカレンダーに書き込めるイベントくらいに捉えておきましょう。長期保有のスタンスを貫けば、日々の値動きを気にする必要もなく、ビットコインや暗号資産業界全体の成長と未来を見守り続ければ良いだけです。
