「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは、「4つの豊かさ考察」です。

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流動性の価値「キャッシュリッチ」

私たちは、だれしもが豊かさや幸せを求めて生きています。しかし、一口に豊かさや幸せといっても、その定義は人それぞれ異なるでしょう。金銭的な豊かさを最優先する人もいれば、時間の余裕を求める人、心の平穏を重視する人もいます。

では、どの豊かさを優先すべきなのか? 今日のコラムでは、「キャッシュリッチ(またはマネーリッチ)」「アセットリッチ」「タイムリッチ」「メンタルリッチ」という4つの豊かさについて整理し、それぞれの特徴や優先順位の考え方についてお伝えします。

まずキャッシュリッチとは、現金や流動性の高い資産を持つことによる豊かさです。流動性の高い株式や債券、板の厚いメジャーな暗号資産、不動産収益なども含まれますが、基本的には「すぐに現金化できる資産」が中心です。

この豊かさの強みは、市場の暴落時に強いことです。「資産家は恐慌時に生まれる」と言われるように、金融危機や不況時に資産を買い増せる余裕があるのは、キャッシュリッチの人々です。ただし、単に預貯金を増やすだけでは資産は増えず、インフレにも弱くなります。キャッシュリッチを維持しつつ、適切な運用をすることが重要でしょう。

資産はあるが自由はない?「アセットリッチ」

アセットリッチとは、不動産(地べた)や評価の高いアート作品、配当のない株、板の薄いマイナーな暗号資産など、流動性の低い資産を多く持つ状態を指します。これらの資産は長期的には価値を生む可能性がありますが、短期的には「使えない資産」となることも多いです。このようなアセットを多く持っていても、「今」が豊かになるとは限りません。

また、スキルや経験といった無形資産もアセットリッチに含まれるでしょう。特定の分野で高度なスキルを持っていれば、それを活かして収益を生むこともできますが、活かし方は本人次第です。アセットを活かせるかどうかは、マネーリテラシーと行動力にかかっています。

時間があっても幸せとは限らない「タイムリッチ」

タイムリッチとは、時間的な余裕がある状態のことです。特に、不動産収益や仕組み化されたビジネスを持つオーナーは、比較的タイムリッチになりやすいと言えます。時間の自由は、精神的なゆとりにつながることも多いでしょう。

しかし、ここで問題になるのが「暇に耐えられるか?」という点です。仕事を辞めてリタイアしたものの、なにをすれば良いかわからず、再び仕事を始める人も少なくありません。暇に耐えるのも才能なのです。実際は、リタイア生活をリタイアする人たちも多いのです(特に起業家に多いです)。つまり、「タイムリッチ=幸福」というわけではありません。時間を持て余してしまうと、逆に精神的に不安定になってしまうこともあります。時間の豊かさを人生にどう活かすかが大切でしょう。

最も難しく、最も価値がある豊かさ「メンタルリッチ」

最後に、メンタルリッチについて考えてみます。これは、お金や資産、時間の有無に関係なく、心の豊かさを持つことを指します。つまり、だれでも今すぐなろうと思えばなれる豊かさです。

キャッシュリッチ、アセットリッチ、タイムリッチを実現していても、メンタルリッチであるとは限りません。例えば、事業を成功させたオーナーでも、社員などの人間関係のストレスや業績などのプレッシャーでメンタルが不安定になることが多くあります。また、いくら財産があっても、未来に対する不安を抱え続ける人は案外多いものです。実際のところ、富裕層の中でも本当にメンタルリッチな人は少ないのです。

この豊かさは、最も曖昧で不確実で変動しやすい点も特徴的です。どれだけ環境が整っていても、心の状態は簡単に崩れるからです。メンタルリッチを保つには、自己理解や人間関係の目利き、思索などが欠かせません。

どの豊かさを優先する?

では、これらの豊かさの中で、どれを優先すると良いのでしょうか? 優先順位は人によって異なりますし、答えがないのが答えなのですが、理想的なのはバランスを取ることかもしれません。

1.まずはキャッシュリッチを目指す

生活基盤を安定させるために、ある程度の現金や流動資産を確保する。

2.次にアセットリッチを築く

長期的に価値のある資産(スキルも含めて)を持ち、将来のリスクに備える。

3.タイムリッチを意識する

事業や働き方を工夫し、自由な時間を増やす。

4.最終的にメンタルリッチを目指す

どれだけお金や資産、時間があっても、心が豊かでなければ意味がない。心の安定や幸福を追求する。マネーリッチを目指す前に必要かもしれない。

どの豊かさも一長一短があり、1つだけを追い求めても幸福にはなれないでしょう。重要なのは、自分に合った優先順位を見つけ、「豊かさのバランス」を取ることです。豊かさは、一元的なものではなく、多面的な要素が絡み合っています。短期的な豊かさと長期的な豊かさのバランス、外的な豊かさと内的な豊かさのバランス、この調整が幸せに生きる秘訣とも言えますね。