「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは、「資産額と物欲は反比例の関係にある?」です。

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資産額と消費傾向の変化

「とめどなく物欲が溢れ出る人」もいれば、「ほしいものがほしい」というくらい物欲のない人もいます。私はほしいものも特段ほしくはないですが、どちらかと言えば後者です。

資産額が増えると消費行動に広がりが出てくるのは、極めて一般的な現象です。初期の消費傾向は「社会的地位を示すもの」、つまり承認欲求を満たすための消費行動が多いのでしょう。例えば、ハイブランド品や高級車などの買い物です。これらの消費は、資産背景を示し、所有者のステータスを表すことができます。

あくまでも個人的な視点ですが、資産を増やし人生を豊かに生きている人は、体験に投資する人が多いと感じます。例えば旅行や、絵画・映画・音楽などの鑑賞、スポーツ、慈善活動などのコト消費です。これは、精神的な充足感を求める傾向の表れでしょう。

高所得層の購買行動と価値観

高所得層の購買行動をみると、一般的な消費者とは異なる特徴がわかります。単に高額な商品や有名ブランドを求めるのではなく、より「意味のある消費」や「体験」に価値を置く傾向が強まります。これは、高所得層が「所有」よりも「なにを得られるか」「どのような影響を生むか」を重視するようになるからかもしれません。

また、高所得層の消費行動には「情報」に対する投資も含まれます。知識やスキルを高めるための教育や研修、独自性のあるアート作品の収集など、個人の成長や知的好奇心を満たすためにお金や時間を使う傾向が強いでしょう。単なるモノ消費では得られない満足感を得られ、人生の豊かさにつながります。

「満足感」と「充足感」の違い

「満足感」と「充足感」は、似ているようで異なります。満足感は、具体的な欲求が満たされたときに得られる一時的な感覚です。例えば、新しいスマートフォンを購入したときや、おいしい食事を楽しんだときに感じる喜びがこれに当たります。満足感は、時間の経過とともに薄れていく性質を持ち、再び同じような消費をくり返したくなるという側面もあります。

一方で充足感は、より持続的で深い感覚です。物質的な所有だけではなく、自己の価値観や目的に合致した行動によって得られるものです。例えば、自己成長を感じられる体験、社会貢献を通じて得られる達成感、他者とのつながりから得られる心の安らぎなどが充足感を生み出します。

資産が増加し、ほしいものをいつでも買えるようになると、満足感を追求する消費から、充足感を得るための行動へシフトする人が増えると言えるでしょう。「お金を貯めてほしいものを買えたとき」の喜びも大切で、貯める期間も含めたその体験自体は充足感ですね。

この違いを理解することは、消費行動を見直し、より豊かな人生を送るためのヒントにもなるでしょう。自分にとって本当に意味のある充足感を追求することで、心の安定と幸福感が得られます。

お金を使わない自由

資産が増えることで得られる自由の一つに、「お金を使わない選択ができる自由」があります。多くの人は、周囲の期待や社会的なプレッシャーによって消費を強いられる場面が少なくありません。「みんな持っているから」「大人になったら良いものを持たないと」という気持ちからなにかを買うケースが、その一例です。

十分な資産を持つ人は、こうしたプレッシャーから距離を置き、自分自身の価値観に基づいて選択する余裕を持てます。「自分に必要ないものには、お金も時間も使わない」という選択を堂々と行うことで、精神的な解放感を得られるのかもしれません。物質的な豊かさだけでなく、心の自由を得ることが、最終的には人生の質を大きく高めてくれます。