「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。 お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

東京都心部の不動産価格が上昇し、マンションの販売価格は、私たちが「購入できる範囲」を大幅に超えている物件も多数存在し、「東京のオフィスに通勤する必要がないのであれば地方に引っ越したい」と思っている方々も多いのではないでしょうか。

「旅行」ということであればお好きな観光地を思い浮かべると思いますが、ご自身が決めるのではなく、「鉄道会社のキャンペーン」を使って、予想外のところへ行ってみるのもよいかもしれません。そこで、今回は、2つの鉄道会社のキャンペーンをお伝えします。

JR東日本の「どこかにビューーン!

このキャンペーンの最大の特徴は、JRE POINTの6,000ポイントを使って、新幹線で行く「どこか」への往復チケットが手に入るという点です。なお、仙台駅、盛岡駅、新潟駅、長野駅の4駅を出発する場合は5,000ポイントで利用できます。

例えば、東京駅⇔秋田駅の場合、通常のJRE POINT特典チケット(往復)は24,220ポイントですが、どこかにビューーン!(往復)だと6,000ポイントです。

使い方は、行き先の候補としてランダムに提示される4つの駅の中から、最終的に1つの行き先がシステムによって決定されます。自分では選ばないような場所が選ばれるワクワク感を感じることができます。

移住を検討する際、私たちはどうしても「有名な移住先」や「利便性の高い場所」に目が向きがちです。しかし、この「どこかにビューーン!」が連れて行ってくれる場所は、全くノーマークだった地域となるかもしれません。新幹線を降りた瞬間の空気の匂いや駅前の静けさを感じ、地元の人たちの何気ない会話を聞いて、計画された旅行では味わえない「偶然の出会い」が、実は理想の暮らしを見つける一番の近道になるかもしれないですね。

JR西日本「サイコロが導く! 北九州VS富山 大阪発すし決戦きっぷ」(販売終了)

残念ながら現在は販売終了していますが、「サイコロが導く! 北九州VS富山 大阪発すし決戦きっぷ」という非常に面白いキャンペーンがありました。

これはスマホのアプリ上でデジタルサイコロを振り、出た目によって「北九州(小倉)」か「富山」のどちらかへの往復きっぷが格安で購入できるというものです。さらに面白いのは、それぞれの土地の「お寿司」をテーマにした対決構造になっていたことです。

このキャンペーンが教えてくれるのは、「食が合うかどうか」が移住の満足度を左右する大きな要因になるということです。現在は終了していますが、JR西日本では定期的に「サイコロきっぷ」シリーズを展開しています。「次回のサイコロで出た場所が、もし自分の住む場所だったら?」と想像しながらサイコロを振る。そんなゲームのような感覚で、移住の候補地を探してみるのも、肩の力が抜けて良いのではないでしょうか。

終わりに

2つのキャンペーンを見てきましたが、これらに共通しているのは「自分の意志だけで行き先を決めない」という点です。

移住を考え始めると、どうしても「失敗したくない」という心理が働き、スペック比較ばかりに没頭してしまいがちです。交通の便はどうか、スーパーや病院は近くにあるかなど。もちろん、これらは住む環境として大事な要素ですが、実際にその土地で暮らしていく上で最も重要なのは、スペック以上に「その土地との相性(フィーリング)」ではないでしょうか。

鉄道会社のキャンペーンという「偶然」を使って、意図せず降り立った駅で、何気ない景色に心が動かされたとしたら、それこそが「縁」です。まずは観光客としてその土地を訪れ、美味しいものを食べ、少し長めに散歩をしてみてください。そして、もしその場所が気に入ったなら、次は「もしここで朝起きて、仕事をして、夕飯を食べるなら?」という視点で、もう一度歩いてみてください。

今の仕事のスタイルを崩さずに地方で暮らす「ワーケーション」や、週末だけ地方で過ごす「二拠点生活」など、移住の形は1つではありません。今回ご紹介した鉄道の旅は、その大きな一歩を踏み出すための、気軽で楽しい「あしがかり」になります。

切符を買うという小さなアクションが、数年後のあなたの大きな人生の変化につながっているかもしれません。2026年、「偶然」の鉄道の旅をしていたら、将来の移住先が見つかったということもあるかもしれませんね。