「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
総務省の統計「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」(※1)によると、2023(令和5)年10月1日時点において、空き家は900万戸であり、2018(平成30)年の849万戸と比べて、51万戸の増加となり、過去最多となりました。
空き家は、人口減少や都心部への人口集中、また、核家族化や単身世帯の増加等、様々な理由により、増加しています。多くの自治体が空き家対策を進めています。その具体的な対策として、今回は、空き家をリフォーム等して、移住を希望する人に「お試し移住」をしてもらう仕組みを1つご紹介します。
※1出典:総務省(報道資料)「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
■茨城県神栖市(かみすし)「お試し住宅事業」
神栖市では、空き家バンクに登録された空き家を所有者から借り上げて、移住などを希望している神栖市以外に在住している人を対象として、「お試し住宅」を運営しています。
<物件情報>
場所:茨城県神栖市波崎9253-1
間取り:6LDK(利用可能部分は5DK)
構造:木造瓦葺2階建て
設備:生活家電一式。例えば、テレビ(1階和室のみ)、エアコン、洗濯機、冷蔵庫、炊飯器、電子ケトル等がある。また、Wi-Fi環境も整っている。
車庫:1台分。ただし、ワンボックスや車幅の大きい自動車は、駐車不可。
<利用者の条件>
以下の【1】~【5】の条件をすべて満たしていること。
【1】神栖市以外に住所があり、神栖市での居住実態がなく、次のいずれかの目的で利用をする人
・移住または二地域居住の検討
・ワーケーションでの利用
・テレワークなどの実現可能性体験
・その他市長が認めるもの
【2】利用者を代表する人が20歳以上であること
【3】申請日から利用開始日までの期間で、神栖市で体験したい内容や確認したい事項について、神栖市と共有できる人
【4】利用中に神栖市内での居住体験を行い、体験報告や神栖市の広報事業への協力など、神栖市の移住施策へ協力できること
【5】暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員でないこと
<利用料>
・無料で利用できる。ただし、交通費や飲食費、洗面道具や衛生用品などの日常消耗品は、利用者負担となる。
・布団を備え付けていないので、利用者が用意する。ただし、レンタルを希望する人は、神栖市から、神栖市内の事業者を紹介してもらえる。
<利用期間等>
利用期間:2025年3月31日まで
利用可能日数:7泊8日以内
入居時間:利用初日の午後1時から5時までに入居(時間指定)
退去時間:利用最終日の午前8時30分から11時までの退去(時間指定)
利用上限:年度内2回まで
<禁止事項>
・利用許可を受けた人以外の人に利用させること
・物品の販売、寄附の要請その他これに類する行為を行うこと
・興行、展示会その他これらに類する行為を行うこと
・犬、猫、爬虫類、鳥類その他動物を飼育すること
・住宅地であるため、バーベキューなどは禁止
・その他市長がお試し住宅の利用にふさわしくないと認めることなど
■茨城県神栖市の「お試し住宅事業」の内容を踏まえての注意点
<利用者の条件>にも記載されていますが、あくまでも移住などを希望する人が対象です。無料で宿泊することができるからといって「旅行」として利用することはやめましょう。ただし、移住する予定はないが、ワーケーションやテレワークといった、短期的、中長期期的に、神栖市内の住宅に住みながら仕事をしてみたいという人は、利用対象者となります。また、単純に1週間滞在するということだけでなく、神栖市が行う移住に関する広報活動にも協力する必要があります。ただし、個人で勝手に住宅内外を動画撮影してSNS投稿する等を行うことは避けましょう。近隣の方々のご理解やご協力があってこそ、「お試し移住」という取組みが実現されています。SNSで「お試し移住」について投稿したい場合は、神栖市に事前に相談しておきましょう。
なお、神栖市のホームページ上での利用期間は、「2025年3月31日」までとなっていますが、2025年度(2025年4月1日以降)も事業として継続されるのか、興味のある方は、神栖市都市整備部住宅政策課に確認するとよいでしょう。
お試し移住に関しては、自治体によって、利用者の条件、利用期間、利用料金、備え付けの備品など内容が異なりますので、お試し移住を希望する場合は、要件等の詳細を確認しましょう。お試し移住の本来の目的を理解した上で、「自分がその地域で長期にわたって暮らすイメージ」をもって、体験してみてはいかがでしょうか。