漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「SDGs」である。

久しぶりにさっぱりわからないテーマが来てしまったため、その意味を調べるべく、我々はアマゾンに飛び、小一時間アマプラを堪能してから、グーグルに飛ぶべきだったと気付いた。

「SDGs」とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、国連の加盟国が2016年から2030年の間に達成するために掲げた目標、だそうだ。

このテーマを寄越した担当に「逆にお前はこれに興味があるのか」と問いたい。もはや「質問を質問で返すな」と吉良吉影に爆殺されても一向に構わんレベルだ。

「SDGs」自体は、貧困問題、格差問題、環境問題など無関心でいてはならないものばかりだが「キーボードにゴミが詰まりすぎて押したら戻ってこなくなった」など、目の前の環境問題が深刻すぎるため、なかなか世界の環境に思いが至らないのも事実である。

「SDGs」は17個の大きな目標と、それを実現するための具体的なターゲット169個のターゲットで構成されているという。

どのように決められたかは知らないが、私がその場にいたら確実に「やることが、やることが多い…!」と言ってしまっただろう。

誰一人とてそれを言わずに、合計186個が通ってしまったという時点で「SDGs」がいかに真面目なものかがわかる。

もちろん真面目は良いのだが、この場においては「ふざけづらい」という致命的問題なのである。

まず17個の大きな目標だが、貧困や飢餓、国や性別による差別をなくし、皆が平等に水準の高い、福祉、教育、ライフラインを享受できるようにする、という「おっしゃる通りです」としか言いようがないものばかりだ。

むしろそれ以外の下手なことを言ったら爆発炎上するというニトログリセリンバケツリレーに参加させられている気分である。

しかし、この17個の目標も最初は「貧困をなくす」などわかりやすいのだが、進むごとにぼんやりしていく。

学園七不思議を作ろうとしたら、4個ぐらいで尽きてしまい、6個目が二宮金次郎が夜中走る、7個目が首のない二宮金次郎が走るになってしまった感じだ。

ちなみに我が母校の二宮金次郎は台風で物理的に首がなくなった。

「SDGs」も14個目が海の豊かさを守ろうで、15個目が陸の豊かさを守ろうである、そりゃ海を守るなら陸もねという話だ。

そして最後の17個目は「パートナーシップで目標を達成しよう」であり、目標を達成することが目標になってしまっており、説明も「接続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバルパートナーシップを強化する」という、最初に比べて空を掴んでいる感がすごい。

さらに17個の目標を達成するための具体的なターゲットが169個ある。

「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」など確かに具体的なのだが、終わらせるための方法が書かれていないので、ターゲットを達成するための目標があと1690個ぐらい必要なのではないか。

しかし、人が何かをしようとしていることに対し、外野からケチをつけることほど簡単かつ害悪なことはないので、理想でも掲げて行動する人の方が偉いに決まっている。

しかし2016年から始まっているということは既に5年経過しているのだが、全く知らない奴がここにいるという時点で進捗はあまり芳しくないのかもしれない。

しかし、それは私が特別無知なせいだと思うので、猛省し、せめて「SDGs」がスマホのプラン名でないことぐらいは覚えておこうと思う。

ちなみに目標の時点で既によくわからない「パートナーシップで目標を達成しよう」だが、それに向けて具体的に何をしたら良いかと言うと「先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する」だそうだ。

尺を稼ぐために一番長い奴を選んだというのもあるが一番短いのでも「持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する」なので、短くすればわかるというものでもない。

もしこの「SDGs」が、国連加盟国民全員で取り組まなければいけないことなら、まず全員に何をしたらいいかわかるようにした方がいいと思うので、ターゲットを達成するために結局何をしたら良いか「お前が息を止めることで二酸化炭素が削減され、地域の民度がちょっと上がる」など、17000個ほど提示していただいた方がいいかもしれない。

もちろん、どの目標も難題すぎて「これをやれば解決する」と言えるものがあればとっくにやっていると思うので、若干空を掴んだりやたらアルファベットが多かったりする目標が掲げられてしまうのもある意味仕方がない。

ともかく、そういう取り組みがあると知れただけでも、このテーマで良かったと言えなくもない。

ただ、今度同じようなのが来たら本気で概要をコピペしただけのものを送るのでそれは覚悟しておいて欲しい。