今回のテーマは「節水」である。無職になって以来、極力金は使わないように生きているのだが、水は必要であり、当然水もタダではない。

公園から汲んだり、そこで全身洗っても良いのだが、それでは今の団地に住みづらくなる。水道代をケチって住居を失っては本末転倒だ。

こう考えると、大量虐殺施設「会社」も、給料を払うだけでなく、色んな物を負担していてくれたのだとわかる。

会社にいる間、家の電気代はかからないし、水も会社の金で飲み放題、ウンコも流し放題である。

だが今は自腹でウンコを流している、もちろん公園のトイレとかでしても良いのだが、もうそうなったら公園に住んだ方が早い気がする。都会には実際そういう節約生活をしている人も多い。代々木あたりがアツいようだ。

いつか代々木も視野にいれた方が良い日が来るとは思うが、とりあえず今は出来るだけ屋根があって、素材が紙やビニールじゃない家に住むために、節約はしていかなければならない。

しかし、節水しているかというと、意識してはしていない。 そもそもこの「節約」というのは、多少の小金と引き換えに、人生を大損する事態を引き起こしていたりするのだ。

うちで一番水を使っているのは、おそらく風呂だろう。その次は洗濯だが、洗濯には風呂の水を利用している、節水としてはこれぐらいで十分だと思う。

それ以上の高みを目指して「風呂と洗濯は週一」さらに「雨が降った時のみ」というストロングスタイルになってしまったら、もはや外で金を稼げる姿ではなくなると思う。

節約しすぎて、あまりにもみすぼらしくなってしまったら、逆にマイナスの方が大きくなるのだ。私のように人様の前に姿を現さない無職以外はやめた方がいい。

ウンコだって節水のために「2回に1回だけしか流さない」としてしまったが、何か意識高いツイートをしてご満悦の後に「でも俺ウンコ流してないんだよな」とテンションが下がってしまうかもしれない。

たかが数円の節約のために人生の質まで落としてしまっては意味がない。

また私は水を良く飲むのである。
「好きな飲み物は?」と聞かれたら「水道水をロックで」と足を組みながら答える。

ここを節水すると、水道代など問題ではない「医療費」がかかる事態になり得るし、金では買えない寿命を節約してしまう。

確かに、寿命を時短するのが一番の節約術なのは確かだが、死んでしまって金だけ残っても意味がない。

特に今年の夏は「節水」とか「節電」はあまり考えない方がいいと思う、水とエアコンの節約が即人生の節約につながる気温である。

やはり、今と昔では暑さのレベルが違うと思う。
私の実家には、昔エアコン(エアコンという名前ですら呼ばれず冷房と言われていた)が一部屋にしかなく、それもよほどの時しか起動されなかった。

当時エアコンは「贅沢」であり「スペシャル」なことだったのである。
だがそれは、当時の我々が我慢強かったからではなく、暑さが我慢できるレベルだったからだ。

しかし、その「エアコン=贅沢脳」「暑さは根性で乗り切れるもの論」が今も残ってしまっているせいか、学校などへのエアコン導入がなかなか実現しないところも多いようだ。

だが、この暑さは既に災害レベルと言われているのだから、根性で何とかするというのは「気合でハリケーンを跳ね返す」と言っているようなものである。

生身でハリケーンにツッコんだらどうなるかは知れている。この夏、冷房抜きで十分な水分補給をさせない、というのは、それと同じことをさせているのである。

それに、エアコンが贅沢というのは、電気代に関しては「そうでもない」気がする。

私の仕事部屋はエアコンがなく、密室に扇風機のみという過酷な環境を5年間耐え抜いてきた。

しかし、このたび無職になり、ほぼ1日中ここにいることになったので、夫が見かねてエアコンをつけてくれた。そして、寝ているとき以外はエアコンをつけているのだが、電気代は1,000円強ぐらいしか変わっていない。

私的には節約のため扇風機で乗り切っていたのだが、明らかに「暑さに耐えた5年」の方が徒労でありマイナスであったことが判明した。

このように、節約しているつもりで損をこく、というのは良くあるので、過度な節約思考は考えものである。

ちなみに、うちの便所は用を足すと自動で水が流れるようになっているので、ウンコを流す水はわざわざその機能を切らないと節水できない。

そこまで神経を使う生活よりは、1回1回ウンコと綺麗にお別れする生活の方が、得のように思える。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。