豚みそってご存じですか? 炒めた豚ミンチ肉をみそに混ぜた味付けみその一種で、白いごはんに乗せて食べるととっても美味しい。鹿児島では昔からの家庭料理ですが、缶詰でも商品化されていて、それを造っているのはなんと高校生だとか。 

今回博士が紹介するのは、そんな豚みそ缶詰の中でも「プレミアム」なバージョン。果たしてどんな味なのでしょうか。

  • 鶴翔高校の豚みそ缶。左が既存品で右がプレミアム

何もかもみな懐かしい

深夜の学園物アニメを見て、ふと自分の高校時代はどうだったろうと考えた。ひたすら部活に明け暮れ、勉強はおろそかにしていた気がする。恋愛などというイベントもあったような気がする。ああ、何もかもみな懐かしい。

自分が通ったのは普通科だが、農業や水産に特化した高校も各地にある。その中には食品科というカテゴリーがあって、実習で缶詰を造っていたりする。

今日紹介するのは、鹿児島県阿久根市の県立鶴翔高校生が造った「豚みそ」缶詰。1991年に「3年A組の(R)」というブランドで販売し、今では年間数万缶を造るほどの人気缶詰なのだ。昨年1月にはブランド誕生25周年を記念して「プレミアム豚みそ」も開発。これが、実に美味しいんであります。

  • プレミアム豚みその原材料表記

生真面目?

箱に書いてある原材料名を見ると、鹿児島県産の豚肉(黒豚)、麦みそ、三温糖、しょうがなど天然原料が並んでいて、着色料などの添加物は使われていない。そんな部分からも、いかにも生真面目な高校生が造った印象を受ける(いや、関係ないですが)。

  • サイズはこの程度。90グラム入りだ

極小サイズでも充分

豚みそは味が濃いから少量でもごはんが進む。それゆえ、缶詰のサイズもこんなに小さいのだ。日本の缶界でも一番小さい「小型2号缶」というやつだと思う。

  • 開缶。麦みそ感あり

白ごはんしか考えられない

フタを開けると一面が茶色い世界。つまり美味しい世界です。みそがもろもろしていて、いかにも麦みそっぽい。そこから甘じょっぱい匂いがずーんと立ち昇ってくる。ほのかに豚の香ばしい匂いもする。

こんな様子を目の当たりにしたらもう、あれです。白いごはんを炊くしかないじゃないですか。

  • 炊きたて!

新米でお迎え

折しも今は新米の時期。我が家も福島県産の「ならは米」を仕入れたところだ。ざざっと洗って、たっぷり浸漬させて、鍋で固めに炊いた。

午前10時からこんなことをしている男(僕です)の将来は果たして大丈夫か。

  • 塩むすび&豚みその組み合わせ

簡素にして究極

1合の米で塩むすびが3つ出来た。その頂点に豚みそを乗せて、いよいよかぶりつく。甘じょっぱい味が口いっぱいに広がって、もろもろを噛むと豚肉の脂がふわっと溶けた。鼻から抜けるのはしょうがと、かすかににんにくの匂い。どこも尖っている部分がなく、味付けのバランスがいい。

この豚みそを造っているのが高校生だと思うと、余計な事まで連想してしまう。しょうがをていねいに刻んでいる女子に胸をときめかせる男子もいることだろう。あるいは、汗をかきかき豚肉を炒めている精悍な男子に恋心を寄せる女子もいるかもしれない。自分がすでに忘れて久しい感覚、青春の幻影であります。

このプレミアム豚みそ缶が買えるのは、クルーズトレイン「ななつ星」が止まる阿久根駅の売店「阿久根屋」。もしくは毎年11月に開催される鶴翔高校の学園祭だ。過ぎ去りし青春を味わいたい方は、ぜひ行ってみてください。

缶詰情報
鹿児島県立鶴翔高等学校/プレミアム豚みそ(90グラム)
参考価格/400円(税込)

黒川勇人/缶詰博士

昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
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